EP10.その後を回想し続ける少年

未取回想し続ける少年 郎亜ろあ 視点】



 さっきと違って、お菓子や紅茶をいただく時は横に並んで座った。

 僕の食べたお菓子のカスが流理の髪に落ちると大変だし、紅茶も飲みにくいからね。


 その後、甘いお菓子で気分が好調になったところで、流理るりの私室に行くことにしたん。

 その際に、廊下で再びれいくんと遭遇そうぐうしたんだよね。


 今度こそ話そうと思ったんだけど、彼には野暮用?があるみたいで叶わなかった。

 流理も早く上に行こうとうながしてきたし、残念だけど階段を登り流理の部屋に入った。






 流理の部屋、その内装はまるでサブカルチャーの宝石箱なんだ。なんとか麻呂の真似だけど。


 漫画のカレンダーや、ライトノベルのタペストリーが飾ってある白い壁。

 白樺しらかばの白いフローリングには水色のシンプルなカーペットがいてある。


 こちらも水色のカーテンが掛かる窓の下には、そしてこちらも水色の敷布団が敷いてあるベッドに、サイドテーブル。

 基本的に流理は、水色が好きみたいなんだ。


 そしてこちらから見てベッドの右側には、壁一面にそびえ立つ書架しょか

 ライトノベルや漫画等の書籍、そのフィギュアやぬいぐるみが並んでいる。あと教材。


 あとは、その反対側にクローゼットとタンスがあるくらいかな。

 流石にパーソナルスペースの極みだから、中は見たことがないけどね。

 ただ、クローゼットに白い座卓ちゃぶ台は入ってると思う。一緒に勉強する時に出していたし。


 と、こんな感じ。


 テレビはないから、ゲームをする時はさっきみたいにリビングでするんだ。

 まあ、来人らいとくんや琳音りんねさんがたまに使うからその時以外。家族共有というもの、かな。

 僕は別に家族では無いけどね。でも、流理と一緒に使わせてもらってる。


 僕と流理は部屋に入るなり、まず書架の前に経つ。

 今からするのは読書。ライトノベル、漫画問わずにただ読書して過ごすつもりなんだ。


「えっと、あれの続きは……」


 ちなみに、僕もここから取って読書をする。

 この書架に入ってるのは流理のものだけでなく、僕が買ってきた書籍もあるんだよね。


 数多くあるライトノベルに手をかざして、前に読んだものの続刊を探す。

 如何いかんせん数が多すぎるから、探すのにも一苦労だったりする。


 そんなことを考えていると、横から手がすっと伸びた。流理のだね。


「………?」


 一冊の本を取ると、それを僕に見せて首を傾げている。

 それは僕が探していた続刊だった。


「うん、それだよ。ありがとう、流理」


………こくり


 流理はどれがどこに入ってるか、完全に把握しているみたいだ。

 それを勉強にも活かせたらいいのに……と思うけど、言うと流理がねるので心の内に留めておく。


 流理も自分の読みたい書籍を探す……前に、僕は一つ尋ねた。


「さっき眠たそうにしてたけど、寝る?」


「!」


 おかしを食べている時、流理が眠たそうにしていたのを、僕は見ていた。

 おかしを食べている時もそうだけど、お昼ご飯を食べた後からそんな仕草はしていた気がする。


 今日は流理が苦手なテストで、その上ご飯を食べたのだから眠たいんだろうな、と思う。

 だから、今寝るのかを尋ねた。


 別に、ゲームをする時や、おやつを食べる時にソファ等で寝るかを訊くのも良かったけど、辞めておいた。

 その二つは流理が特に好きなものだし、実際さっきの流理もその二つを強く求めていたからね。


 読書は日課ではあるけど、はっきりいうと残った時間の暇潰し、みたいなもの。

 だから、尋ねてみた。


「………。………こくり


 流理は少し驚いた様子だったけど、頷いた。


 僕は頷き返すと、ベッドの傍に足を伸ばすように太腿ふとももを合わせた。

 流理は僕の傍にすすすっ、と寄り、僕の太腿に頭を乗せる。


 膝枕、ってやつなのかな?

 ライトノベルとかでは女の子側が男の子側にするものだけど、現実の僕達では逆だ。


 流理はよく昼寝をするんだけど、その時に僕の太腿を枕にするのがお気に入り。

 だから、いつも太腿を貸してあげているんだ。


 流理はもぞもぞと体勢を整えるなり、目を瞑った。


「………。……すぅ、すぅ……」


 そして、直ぐに夢の中に入ったみたいだ。


 相変わらず寝入りが早いな、と笑いつつ、流理の髪を一梳きよし二梳きよし


「……あれ、そういえば制服のままだ」


 すると、気づいた。


「……まあ、金曜だし良いか」


 けど、特に気にする必要は無いと頷いた。


 中学時代の時も、時々制服のまま寝てしまった時があったんだけど。

 その時、流理はブレザーを毎週クリーニングに出している、と琳音さんから聞いた。

 どうも流理の父斗羽とわさんのスーツとクリーニングに出す時、時々母さんと遭遇するのだとか。


 まあ、琳音さんに任せることになるから少し申し訳なさはあるけどね。


 流理の髪から手を離して、僕も本を開く。

 それから黒髪家の晩御飯までの間、そのままゆっくりと過ごしたんだ。

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