EP9.帰宅後の回想をする少年

未取回想をする少年 郎亜ろあ 視点】



 ──今から5時間くらい前のこと。


 今日は中間テストの最終日で、学校が終わったのは午前中だった。

 流理るりと一緒に黒神家へと帰ってきたのは……確か13時になる前だったかな。


 流理の家には、去年から毎日通っている。


 最初は一緒に受験勉強をする、という項目で通っていたんだ。

 けれど、一年間ほぼ毎日行ってたから、高校を入学してからも行くことが日課となった。


 まあ、そのおかげで流理と共に入れる時間が多いから嬉しいけどね。

 流理とは物心がつくからの付き合いで、今も趣味が合う親友として好ましく思ってるんだ。





 流理の家は、学校から徒歩10分のほど近い場所にある。だから、毎日の下校時間は短い。

 帰ってから。お昼ごはんをまだ食べてなためリビングに向かうと、れいくんに会った。


 零くんはとても勉強熱心で、一歳年下ながらもとても尊敬できる子なんだ。

 ただ、そのあまりいつもは部屋にこもってるみたいで。会うのは久しぶりだった。


 だから何かいっぱい話したいな、と思っていたんだけど、それはできなかった。

 怪訝けげんな顔で『付き合っているのか?』とよく分からない質問をするなり、すぐに自分の部屋に戻っていっちゃったんだ。


 ちょっと残念に思ったけど、これから勉強するのかな、と思うと止められなかったんだ。

 次会った時こそ、いっぱい話そう。その時はそう思った。






 琳音さんからは、冷蔵庫の中身や調味料等は自由に使っていいと言われている。

 今あるそれらを流理と吟味ぎんみした結果、昼食はオムライスと簡単なサラダに決まった。


 役割分担で共同して作り、一緒に食べる。

 この時間帯の琳音りんねさんは、出かけてることが多い。だから、午前中に帰ってきた時のお昼ごはんはいつも流理と一緒に作っていた。


 味としては、とても美味しかったよ。

 流理の味付けが最高だった。僕も料理は練習してるけど、流理は別格だ。


 女子力が高い、と言うのかな。彼女も将来は良いお嫁さんになりそうだなと、いつも思う。






 昼食を食べた後、僕と流理は一緒にテレビゲームをする事にした。


 僕達の趣味はサブカルチャー全般で、ライトノベル含む読書、漫画、ゲームを嗜んでいる。

 まあ、幼少期から家で絵本やらゲームやらして育ったから、今でも好きという感じだけど。


 今日するゲームはAアクションRロールPプレイングGゲーム


 独特な世界観のシナリオ。

 しっかり確立されたキャラクターの個性。

 まるで現実じみた美麗びれいなグラフィックに、びっくりするほどの広大なフィールド。


 有名企業との共同制作で作られた、好評なシリーズの第三作目。

 僕と流理も、第一作からプレイしている長年のファンなんだよね。


 ゲームの電源を入れた流理は、ソファに座っている僕の上に座ってコントローラーを握った。

 肩をちょっと揺らしている。よっぽど続きをするのが楽しみなんだろうね。


 僕はくすりと微笑ましくなりながら、流理のお腹に腕を回して、コントローラーを握る。


 ARPGといえば、普通は一人用ゲーム。

 アクションのRPGである以上、複数人プレイだとゲームが上手く進行しなくなるんだ。


 けど、このゲームは最大六人まで、夢の同時プレイが可能となっている。

 流石に1P以外のプレイヤーの行動は制限されるものの、僕と流理はとても燃えた。


 何故なら、前作までは完全一人用プレイだったため片方しか遊べないからなんだ。

 まあ見てるだけでも楽しいけれど、できればプレイした方が楽しいからね。


 というわけで、流理を1Pとしてゲーム開始。

 前回セーブした所から、僕達はゲームを進めた。


 ──ちなみに、僕は長年ゲームをやってるけど、自分でも驚くぐらい下手なんだ。

 ストーリーの進行が遅くなってしまうから、僕は2P。戦闘や一部場面では観戦側。


「確か前は……何話まで進めたっけ」


「……4」


「おっけー」






「──えっ」


「………」


 今はストーリーのムービーを鑑賞してるところ。つまり操作は不能。

 僕達はコントローラーを傍において、ムービーの鑑賞に集中していた。


 まあ、僕は手慰みで流理の髪を梳きながらだけどね。さらさらしてるなあ。


 ストーリー進行度としては、第五話のクライマックスというところ。多分全体の半分くらい。

 戦闘中に僕が死にまくってしまって少し手こずったけど、なんとかここまで来た。


 その内容は核心をつく驚いた事実だった。

 流理も前屈みになってテレビを見ている。


 流理は僕よりもサブカルチャーが大好きだ。

 口数が少なくて表情がとぼしくても、その様子は所々に現れている。

 その姿は見ていてとても微笑ましい。僕もサブカルチャーが好きだから、よっぽどね。


 暫くムービーを見ていたら、第五話は終わってしまった。面白かったな。


 時計を見れば、午後の15時前くらいだった。


「キリもいいし、何かつまむ?」


………こくり


 顔を覗き込みながら尋ねると、流理は頷いて立ち上がった。


 それから、僕に背を向けてキッチンへと歩いていく。


「あっ、僕も手伝うよ」


 それから二人で紅茶とお菓子を出して、僕達はのんびりと過ごした──

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