第5章 因縁
第61話 支配圏カウント
魔王と勇者が去ったのち、俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
転生者、異世界改革、勇者、魔王……
いろんなことが頭をめぐり地面をジっと睨みつけていたが、しかし確固とした
「若ッ、どうしたでやんす?? ヤツらは一体……」
そこにリッキーたちが駆け寄ってくるので、俺はもう考えるのをヤメた。
「……大丈夫。なんでもないよ」
「し、しかし……」
「なんでもねーって言ってんだろ!!」
ざわ、ざわざわ……
ヤバッ、つい声を荒げてしまった。
領民兵たちは動揺し、顔を見合わせてはざわめいている。
「悪い、本当に大丈夫だから」
「領主様……」
「それより早く帰ろうぜ。さすがに腹ったろ?」
「「「は、ははー!」」」
こうして俺は領民兵100を連れて領地ダダリへと引き返すこととする。
そう。
魔境とは言えもうオークはいない。
攻略済みの区域に戦力を残しておく必要もねーからな。
後日。
その代わりに、領地から土木技師(5人)、大工(5人)、
「よし、いいか? まずはマギル族たちの集落の復興を手伝ってやるんだ!」
「「「うーっす!!」」」
マギル族の集落はオークに荒らされ、三つ失われていたからな。
暮らしそのものを建て直せるよう助けてやらねーと。
まあ、もちろん彼らには彼らの建築様式があるから、俺たちはあくまで整地したり、素材を集めて来たり、道路や水路のインフラを作ってやったり……そういうサポートをするだけにとどめておく。
ちなみに、この指示を出している俺は戦闘能力の低い『分身』である。
技能『分身』でコピーされた俺は感覚まで共有・同期されてはいるけれど、戦闘ステータスは10分の1だし魔法は使えない。
だから、もしマギル族たちが心変わりしてまた俺を生贄にしようと言い出したら抵抗するだけの力はないのだけれど……
「sIxy#~!……チュッ、チュッ♡♡」
女族長があいかわらずこんな感じで抱きついてくるので、まあ……乳でも揉んでおけば大丈夫だろう。
それにステータスを見ると、マギル族が”従属状態”になっていることに気付く。
―――――――――
領地:ダダリ
従属:『マギル族』
領主レベル:5
領土:2000コマ(+200)
人口:800(+50)
兵力:90
―――――――――
TOLでは、従属状態の村や領地は自領のコマ数に加算される。
領土や人口に(+)されているのがソレだ。
プレイヤーうちだと「支配圏カウント」とか呼ばれてたっけ。
魔法のコストに消費できるし、労働力を動員したり、資源や農地を開発したりもできるはずだ。
ただし、従属状態の村や領地は裏切る可能性も全然ある。
つまり従属しているからってあんまりいいように支配していると寝首をかかれる恐れもある……ってコト。
せっかく育ててきた領地を背後からの裏切りで全ロスしてしまうプレイヤーも多かったからね。
マジ気を付けんと。
さて、こうして……
やがてマギル族の集落は復興した。
もっとも、オークに殺された村人は返ってこないので、そのぶんは彼ら自身にバンバン子を産んで増やしてもらう他ない。
「よし、それじゃあ魔石を掘る体制を整えよう」
俺はここで連れてきた内政領民たちを集めて行動方針を変えた。
そもそも。
わざわざ山の地下のダンジョンを越えて魔境のこちら側を攻略した理由は、このあたりに『魔石』が採れることを知っていたからである。
魔石は魔力の結晶であり、MPを回復させたり、魔道具を作ったりする原料となる石だ。
コイツがあるのとないのとじゃ集団戦がまったく違うものになる。
ただし魔石はマギル族にとっても大事な存在らしいんだ。
ほら、あの女族長の小麦色の乳房の上でぷるんぷるんと踊っている首飾りがあるだろ?
あの蒼く美しい宝石が魔石である。
つまりマギル族らはこれを魔力の補充としてではなく装飾や神事に使っているというワケ。
さらに、その採掘方法は岩肌に露出した原石を叩き取って、別の石などで磨いて光沢を出すという手法らしいから、掘削技術のある俺たちは岩を掘り進めて地中に眠る魔石を採取することにする。
これならばマギル族が使うであろう魔石は取らないことになるので、彼らの装飾や神事を邪魔せずに済む。
「魔石の採掘はずっと続くものだからな。まずここらに拠点を建てておこう」
「「「かしこまりました!」」」
イチから大工に作らせてもいいけど、オークたちがアジトに使っていた廃城がある。
あれの一部を改修して拠点にするのが手っ取り早いよね。
あとは……こちらで取れた魔石を領地ダダリの方へ運送する手段だけど、今のところは人力でダンジョンを渡って運ぶ他なさそうだ。
山を抜ける長いトンネルを掘ったりトロッコを敷けるようになればもっと効率よく運送できるんだけど、これはまだ技術がたりない。
まずは少量でも新素材である魔石を手に入れて、ジョブ『魔道具師』を解放するのが先決かな。
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