猫7匹 猫系アクセサリーは基本装備してました。

向かいの野営地に行こうとすると早速アニーに「肩車して!」とお願いされたからヒョウカを頭から降ろしアニーを肩車した。


降ろしたヒョウカが目の前で座って何も言わず見上げ続けていたからどうしたんだろう?と動かず見ていたら、ヒョウカが跳んでアニーの踏まれていない方の足をひょいひょいと登っていき、俺の後頭部とアニーのお腹の間に入り込んだ。


無理矢理入り込んだことで頭が前に出て辛くなるかもと少し思いつつ後頭部にヒョウカの温もりを感じて「猫様のぬくもりぃ、幸せぇ……」とか「温かいなぁ。少しの間だから、まぁいいかぁ。」とか思ったら、アニーがヒョウカを持ち上げ降ろす前と同じく俺の頭にセットした。


昔流行ったSNSのアバターで頭に猫がだらーんと伸びて乗っかっているアクセサリー?装備?パーツ?のような感じになっていると思われる。


正面から自分を見たいな。

そういうスキルないだろうか?

それか写真(動画でもいい)を撮ってもらいたい。

カメラはどこで売っているかな?


猫との思い出、記録(猫と戯れる自分やイル達)を収めるスキルやカメラがないか調べようと思った。


アニーは何か楽しいのか嬉しいのかわからないがアニーの尻尾が左右に振られ背中を擦り、叩いたりしている。

俺の心の中もにゃんにゃんと猫の真似をするくらいテンションが上がっていた。


野営地へ向かう短い時間だったが幸せをすっごく感じていた。



焚き火の前に自由組合員っぽい、いや確実に自由組合員だと思われる大柄な強面の男性が座っている。


前世の自分だったら怖くて絶対話しかけない人物だなと思った。


今の自分はそんな彼を全く怖いと思わなかったが、アニーとイルは違ったようだ。

アニーは彼に近づくにつれて尻尾の動きが静かになっていき、怖がってか身体にぎゅうううと力が入った。

イルは手を繋いできた。


二人が安心するようにイルと繋いでいる手はぎゅっと握り、空いてる手はアニーの太ももを優しく撫で続ける。


「あの、すみません。」

「ん?どうした?」


渋い声で「格好いい声!」と思ってしまった。


「自由組合員の方ですよね?」

「あぁ、そうだ。」

「私、ルドアと言います。アデタロール方面から来ました。途中問題があったので報告に来ました。」


強面の男性がイル、俺、アニーを見てヒョウカを見て一瞬固まった。


「……あぁ。ちょっと待て。」

「わかりました。」


強面の男性が警戒したような様子を見せる。

彼はゆっくり立ち上がり、一つのテントの中に入ろうと入口を開けた。


女性の悲鳴と共に強面の男性が俺達の前までゴロゴロと転がってきた。


「声を掛けて返事を聞いてから入りなさいよ!」


顔を赤く染めた赤髪の女性がテントから出てきた。


うん。女性がいるならそうするのが当たり前だな。


この男が悪いと思った。


「す、すまん。」


強面の男性は何事もなかったかのように立ち上がり、女性に頭を下げる。


ゴロゴロ転がってくるくらい強い攻撃?衝撃を食らったのに何事もないように立ち上がるなんて見た目通り強いんだなと思った。


「はぁ……。で?何?まだ交替の時間じゃないでしょ?」

「全員集合してほしい。」

「……わかったわ。マルルを起こしてくるわ。」


赤髪の女性はテントに戻り、強面の男性は隣のテントの入口を開ける。

チャラそうな男性が出てきて一緒に私達の元に来る。

赤髪の女性は眠そうに目を擦る女の子とテントから出てきた。


「俺はカールドだ。こいつはリースト、赤毛がトルン、眠そうなのがマルルだ。それで何があったんだ?」


強面で銀髪赤目の男性がカールドさん、チャラそうな金髪青目の男性がリースト(チャラ男に敬称なんていらない。)、カールドさんを吹き飛ばした赤髪赤目の女性がトルンさん、眠そうにテントから出てきた帽子を被った濃緑髪緑目の女の子がマルルちゃん。


「私、ルドアと言います。アデタロール方面から来ました。」


イルとアニー、ヒョウカを紹介する。

アニーが手を上げて「アニーです!」と元気に言った。


イルや馭者の反応からしてヒョウカが凄いというのが少しだけわかった。

若干場の空気がアニーのおかげで穏やかになったが、カールドさん達がヒョウカを警戒しているのが見てわかる。


「組合員じゃないのか?」

「はい。組合員じゃありません。」

「そうか。それで問題というのはその頭のハンターキャットのことか?」

「いいえ、違います。」

「「違うの?!」」


リーストとトルンさんが目を見開き驚いたような声を出した。

マルルちゃんは反応せずヒョウカを、いや俺をじぃーっと見ている。


「違うのか。」

「はい。ここからアデタロールの方へ三時間程進んだ所でオークに襲われました。」

「「「オーク(だと)(ですって)?!」」」


今度はマルルちゃん以外が声を出した。


「本当か?」

「はい。」

「本当です。」

「本当だよ!」


アニーが疑われたからか怒ったように大声で言った。


「なんで組合員じゃないお前達が来て、護衛依頼を受けている組合員は報告に来ないんだ?」

「虚偽の報告は罰則があるわよ。」

「報告に来ないのはアイツらがクz、子供を囮にする最低な野郎だからではないでしょうか。アイツらは自分のしたことをバレたくないんでしょう。」

「あなたが組合員を貶める為に、という可能性もあるわよ?」


本気でそう思ってはいないんだろうけど、トルンさんの言葉にカチンときた。


「あんなクズ野郎共を貶める為などと言われるのでしたら……虚偽ではありませんがタロザリンドに着いても誰にでも報告しません。角兎やゴブリンしか出ないと聞いていた森からオークが出たので何か起こっているかもと思い注意警戒するよう報告に来ましたが……あぁ、オークがいた証拠を出しますね。」


ポーチからオークを三体出す。


「「「え?!(うお?!)」」」


「オークは三体いました。一体は証拠として差し上げます。では失礼します。」


棍棒で頭を潰したオークを一体だけ残し他二体をポーチに収納してその場を立ち去る。


「え?ちょ、待って。」


立ち止まり声をかけてきたトルンを振り返って睨む。


「……何でしょうか?」

「あ、あ……」

「ルドアは嘘付いてない。魔力の揺らぎがなかった。」


黙っていたマルルちゃんが口を開いた。


魔力が見えて、揺らぎで本当か嘘かわかるのか。


「……そうか。すまん。こいつも悪気があった訳じゃなかったんだ。話を聞かせてくれないか?」

「ご、ごめんなさい。」

「……」


トルンが頭を下げて言った。


「ルドアお姉ちゃん。」

「お姉ちゃん。」


アニーとイルの声で怒りが少し収まる。


「……すみません。クズ共を庇うようなことを言われ頭に血がのぼってしまいました。」


おかしいな。

こんな、沸点が低くなかったのにな……


アニーが手足、尻尾を動かして興奮しながらカールド達に伝える。

それをイルがアニーの足りないところを説明している。


手足をバタバタ、尻尾は背中をバシバシと叩く。

落ちないよう太股を押さえる。


アニーの可愛い説明に気持ちが和む。

カールドさん達も同じ様に感じているようだ。

同時に常識人だからかイルとアニーの話を聞いてあっちの組合員に怒りを抱いているように見えた。


「何そいつら!?あり得ないわ!?」

「護衛対象を囮にする。除名もの。」

「そうだな。」

「こんな可愛い子を傷つけ囮にするなんて男の風上にもおけないね。ルドアさんの言う通りクズ野郎だね。」

「報告は私達も一緒にするわ!」

「そうだね。それとルドアさん達の護衛、アデタロールへの護衛、オークの調査、どう分けます?俺はルドアさん達の護衛と報告が良いです。」

「私が護衛と報告をする。」

「私が一緒に行くわ!」

「━━」「━━」「━━」

「……」


カールドさんが三人の言い争いにため息をつく。


「トルンは第一印象が駄目、リーストは異性でチャラいから駄目、カールドも異性で駄目。私が適役。」

「「ぐっ……」」


女の子のマルルちゃんが護衛に適役かには疑問に思うが、マルルちゃんの正論に悔しそうな表情を浮かべるトルンとリーストはマルルちゃんの言う通りだと思った。


トルンさんは気まずい、リーストはチャラ男っぽそうだから苦手、俺は強面のカールドさんがいいと思った。


「そうだな。ルドアさん達の護衛兼報告はマルル、アデタロールへの護衛は俺とトルン、オークが出た付近の調査はリーストだ。」

「「ぐぬぬ。」」

「わかった。」

「勝手に決めてしまったが、いいだろうか?」

「組合員の方が一緒にいた方が良いと思うので問題ありませんが、マルルちゃんだけで大丈夫なのでしょうか?」


アニーより少し大きい女の子だよ?


「問題ない。」

「俺達特級パーティーで全員1級組合員だから大丈夫だ。」

「特級!?1級組合員!?」


イルが驚いている。


「すごいの?」

「最高級、一番凄いんだよ!」

「一番!すごい!」


一番なのか。

強いってことだよな?

なら大丈夫か?

でも女の子だから何かあったら守らなきゃな。


「凄いんだね、マルルちゃん。よろしくね。」

「マルルちゃん、よろしくお願いします。」

「マルルお姉ちゃん、よろしく!」

「よろしく。」


トルンさんとリーストが小声で話している。


「ちゃん呼びって勘違いしてるわよね、あれ。」

「まぁマルルがなにも言わないからいいんじゃない?」


勘違いってなんのことだ?


「いつもならキレるのにどうしたのかしら?」

「マルルが年上だって気が付いた時、傍にいたいなぁ。驚いた顔も可愛いんだろうなぁ。」


はっ?

マルルちゃんが、年上?


「あんたねぇ……」


トルンさんが呆れたような声を出した。


えっ?

マルルちゃんが年上?

女の子が年上?


「合法ロリじゃん!」

「うわっ!」

「きゃっ!」

「!」

「にゃっ!」


思ったことを大声で出してしまい、近くにいたイル達を驚かせてしまった。


「あ、ごめん。」

「ど、どうしたの?お姉ちゃん?」

「いきなり大きな声出すから驚いたー。」

「ごうほうろりじゃん?何?」

「(何があった?)」


マルルちゃ、マルルさん?が俺をじぃーっと見てくる。


見た目は子供、年は大人、ライトノベルや漫画あるあるじゃん!

と○るの先生、ネギの先生や物語の吸血鬼と同じじゃん!

さすがファンタジー世界!


あ、もうこの世界にいるんだから空想ではないのか!

さすが魔法がある世界だ!

魔法があるから合法ロリがいるのか!

違う?でも


「ルドア?ごうほうろりじゃん?何?」

「えーっと、マルルさんと呼んだ方がいいのかな?」

「そのままでいい。」

「どういうこと?お姉ちゃん?」

「あー、マルルさ、マルルちゃんが私達より年上みたいなんだ。」

「えっ?!」


驚いたような声をあげたイルの反応から、イルもマルルちゃんが年下だと思っていたのがわかった。


「マルルちゃんはルドアお姉ちゃんよりお姉ちゃんなの?」

「そう。」

「マルルお姉ちゃん?」

「マルルちゃんでいい。」

「わかった!」

「で?ルドア、ごうほうろりじゃん何?」

「えーっと合法ロリは、若々しいとか?可愛いって意味ですよ?」

「……そう。」


またトルンさんとリーストが小声で話している。


「ねぇねぇ、マルルが可愛いって言われてキレてないわよ!」

「俺も初めてです。」

「なんで?なんで?」

「俺もわかりませんよ。」


え?

可愛いって言うとキレるの?


「ごめんね。」

「……別にいい。」


キレてない?

大丈夫?


「ルドアお姉ちゃん、私も合法ロリ?」

「う、うん。アニーもゴウホウロリだ。」

「お姉ちゃん……」


イルに期待したような目で見られる。


「う、うん。イルもゴウホウロリ、うん、可愛いよ。」

「「えへへ。」」


普通に可愛いけど……

やっちゃったよ……

合法ロリ、寝たら忘れてくれ……


□□□□□


合法ロリという言葉が世界中に広がっていくことになるとは忘れてくれと願うルドアには思いもしなかった。


□□□□□


思わず声に出てしまった合法ロリという言葉。

広めたくないのに!

忘れてほしいのに!


ヒョウカも、なぜかトルンさんも「ヒョーカは?(私は?)」と聞いてきた。

渋々(普通に可愛いけど!)渋々「ゴウホウロリだ。」と言ったよ。

えへへと照れ笑いするイルとアニー、髪色と同じく顔が赤くなったトルンさん、ゴロロロゴロロロと鳴らすヒョウカに癒されたけど!


カールドさんが私達の方を見て口許に手を当てごうほうろりと呟いているのを聞いてしまった。


うん!

皆可愛いのはわかるよ!

強面で可愛いもの好きなキャラっているよね、カールドもそうなのかな?


うん!

でもね、合法ロリは忘れて!

普通に可愛いと言ってくれ!

俺が言ったのが悪いんだけど!

お願いだから忘れてくれ!


「忘れてくれえええ」と叫ぶたかった。


なんとなくカールドさん達が大丈夫、まともそうだからオークを討伐したのは自分だと訂正した。

マルルちゃん以外驚いていた。


オーク一体をそのままカールドさん達に預けた。

最高級の自由組合員だからか俺のとは違う形の収納袋を持っていて、それにオークを収納していた。


話が逸れたが伝えたいことを伝え終えた。

今日今から護衛につくマルルちゃんも一緒にタロザリンド行きの野営地に戻ることになった。

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