猫3匹 発見、第一異世界生き物は━━

とある森の中に突如魔方陣が現れ、その中央に白い繭が出現。

そして白い繭は上から徐々に解かれていく。


黒い猫の耳、天使の輪ができた艶やかな黒い髪、目を閉じていても分かる整った顔、健康的な肌色、膨らみのある胸、肩甲骨まである黒い髪、引き締まった身体、男のあれ、尾てい骨から生える黒い猫の尻尾、程よい肉つきなお尻と太もも、裸の猫人が白い繭の中にいた。


白い繭は全て解かれると、今度は獣人の身体にまとわりつき、淡く光輝き下着、服、防具、靴などに次々と変化していった。

もし、これを見た者がいたら、この猫人を神の使いだと思ってしまうだろう。

その現象はそれほどまでに幻想的であった。



□□□□□



意識の浮上で異世界に転移したのだとわかり、俺は目を開けた。

視界には木、木、木と端まで木が見えた。


ここは、森の中だろうか?


木の匂い、草の匂い、土の匂い、複数の獣の匂いといろんな匂いを嗅ぎとれた。

葉や草が揺れ擦れる音もいつも以上に聞こえた。

しかし、不快だとは思わなかった。


温かく感じる木漏れ日、なんだか落ち着いた。

目を閉じて腕を広げ深呼吸をすると清浄な空気を感じた。


これが森林浴というものなのかな?


自然の中にいることに安らぎや癒し、心地よさを感じ、「またここに来よう 

」と思った。

願望、時を忘れ、森自然を感じていた。



十分は経っただろうか?


「本当に落ち着くなぁ……」と思いながら目を開いて改めて周りを見た。


「うん、森の中だな。送り先が森ってどうなんだろう?」と思ってしまった。

凄く落ち着くけど、町の近くとかさ、せめて道路が見えるところに送ってほしかったと内心で愚痴った時「パキッ。」と音が鳴った。


!?


音が鳴ったところに顔を向ける。

木の後ろに何かがいる。


身構える。

何かが木の後ろから出てきた瞬間、獣人の女神様イルドアニーマ様に「愚痴ってすみません!」と内心で心から土下座をし、「ありがとうございます!ありがとうございます!」と感謝を捧げ、喜びに浸る。


「にゃっ。」


そう。

俺が世界一大好きな生き物、猫が木の後ろから出てきたのである。

第一異世界猫を発見である。


オシキャットような猫、毛色は濃いヒョウ柄、体は地球の成猫サイズ。


俺と猫は見つめ合う。

テンションが上がりまくりそうになるのを深呼吸して自分を落ち着かせ、ゆっくりとした動作でその場に座る。

ふと違和感を感じたが猫に集中。


猫は警戒の様子も見せずに座った俺に近づいてきて膝に頭突きをし、顔、首、体、尻尾と擦り付けてきた。


人懐っこい!


おお?

あ!くしゃみが出ないし目が痒くならない!

おおおおおお!猫アレルギーの耐性がちゃんと付いているっぽい!

イルドアニーマ様ありがとうございます!


イルドアニーマ様に感謝の念を送って、猫に警戒されないようゆっくりと手を差し出す。

差し出した手を鼻をひくひくさせ嗅がれた後、また顔から尻尾まで擦り付けられる。


猫は擦り終わると尻尾を上にぴんっと立たせ膝、腿と次々と下半身に流れるよう身体を擦りながら移動していく。


「ひゃあ?!」


猫が後ろに回りお尻辺りを擦り付けられた時、感じたことがない感覚に高い声が出た。


「なんだこれは?」と戸惑いながら背中越しにお尻を見るとあり得ないものだけどついさっき見たことのあるものがあった。


それはこの世界に転生させてくださったイルドアニーマ様にあったものと似たようなものだ。

黒くて長細いものがぴんっと立っている。

恐る恐るそれに触れると先程と似た感覚を感じた。


先より根元の方が気持ち良い……

って違う!


これは、これは!

尻尾!猫の尻尾だ!


こう、根元から握って先の方へ動かすと凄い!

癖になりそう。

凄く気持ち良い!

って違う!


なんで尻尾が生えているんだ?!

作り変えると言ってたけど、なんで尻尾が生やしたんだ?


「まさかっ?!」と思い、頭に手を持っていく。

顔の横には無く、少し上の方に予想したものがあった。


内側根元に近いところを触るとぴくぴくと動いた。

鏡がないからわからないけど、耳に沿って触れてみたが、たぶんイルドアニーマ様のような猫耳が生えているっぽい。


耳は全体的に柔らかくて毛に沿って触るとさらさらつるつるし、少し冷たい。

ずっといじってられる触ってられる。


「にゃあ?」


いつの間にか猫が正面に座って俺を見上げて鳴いた。


「あぁ、猫に好かれやすい身体ってこういうことか?」


独り言をいい「だから俺は猫の人族?になったのか。」と納得して、人懐っこい猫を見ているとまた違和感を感じた。

今、俺は胡座をかいて座っている。

いつもは股が、股間が視界に入るんだけど、今は見えない。


えっ?これって……


頭を下げ邪魔しているものをしっかりと視界に入れ、手を伸ばす。

前世では無かった膨らみがある。

触れたら見た目通り硬い革のような感触だった。


あはは、おっぱいなわけないよな……


「……」

「にゃにゃあ?(なんで防具を揉んでる?)」


現実逃避している俺に真実を言ってるっぽい猫。

今すぐには受け入れられない。


混乱する俺は揉むのを止め革防具っぽいもの、着ている服を脱いで、胸を見て、数秒固まる。

さらに数秒経ち、恐る恐る両手を胸に持っていき、あるものに包まれている両胸を揉む。


柔らかい……


今度はあるものの中に手を入れ胸を揉んだ。


女性の胸のようだった。


あるものの上部を少し引っ張り中を覗き見る。


健康的な肌色に膨らんだ胸、薄い桃色の乳首がある。

少し手に収まらないサイズで、程よい弾力のある胸だ。


どうして?

どうして……女性の胸が?


「ハッ?!」として下半身に手を伸ばしベルトを急ぎ外し、恐る恐るズボンそしてパンツの中を見た。


えっ?!あるううう!

どういうことっ?!


しゅばっと立ち上がりパンツごとズボンを下げようとするが尻尾が引っ掛かっかり上手く下げれなかった。

見てみるとズボンに尻尾が通されていたからだった。


所謂尻尾穴、尻尾を通すためでこのズボンはウエスト部分から尻尾の根元の少し下まで割けていてボタンが数個付いていた。


尻尾の根元の上からウエストまでのボタンを外し、今度こそパンツごとズボンを下げ頭を下げ上半身を曲げさらに股をのぞき見る。


えええ?

こっちもあるううう!?


「……どういうことだ?」


パンツ、ズボンを履き直し座って空を見上げて呟いた。


「にゃあ?(なにが?)」

「どっちもあるんだ。」

「にゃあ?(どっちも?)」

「あぁ、男性器も女性器もあるんだ……」

「にゃお。(だからか。)」

「え?なにが?」

「にゃにゃあ(オスとメスの匂いがした。)」

「そんな匂いするのか?!」

「にゃ。にゃっ。(良い匂い。好き。)」


混乱しながらも誰かと会話していると猫が股の間に来て丸くなった。


めっちゃ人懐っこい猫だな。


手が無意識に丸くなった猫の毛を毛並みにそって撫でる。


「臭いと言われないだけいいか。」


それにしても猫の尻尾と耳は良いとして、胸と女性器もあるって……

もしかして顔も女性?

いやこの身体で男の顔は逆に引くからな。

それなら女性の方がいいけど……


「どういうことだろうか?」と不思議に思った。


あっ!あの質問か!

オスメスって聞くから猫のことだと思ってどっちも好きと答えたけど、人間のことだったのか?

だからどっちも好きだから両性したとか?


ゴロロロ、ゴロロロ、ゴロロロ、ゴロロロ


無意識で撫でていた猫からゴロロロ、ゴロロロと喉を鳴らす音が聞こえてきた。


あぁ、この猫のゴロロロゴロロロの音を聞くと落ち着くんだよな。

なんかどうでも良くなってきたな。


猫に好かれやすい身体ってことでいいか!

というかさっき会話していたのは猫かっ!

猫と会話できている!

なんて、なんて最っっっ高な世界なんだ!


イルドアニーマ様、望んでいたスキルです!ありがとうございます!



※これから先「()」は主人公又は言語理解スキル持ちの者に翻訳されて聞こえる言葉になります。スキル持ちじゃない者にはその動物などの声にしか聞こえません。猫なら「にゃっ!」とか「にゃーにゃー。」とか「にゃあ。」としか聞こえません。



横に脱いである服と防具を見て、身体を少し前に倒し下半身を見る。


股の間でゴロロロゴロロロと音を出して丸まるオシキャット似の猫。

よく見るとヒョウ柄の黒模様の部分が花びらのような模様をしている。


癒される……


腰にウエストポーチ、そのベルト部分に革鞘に納まっている物、膝から足首の上まで膝当て、革靴。

防具の下には脱いだ服と同じ少し濃いめ茶色の尻尾穴があるストレッチパンツ。


尾てい骨辺りから生えているつるさらな毛並みの良い猫のような黒い毛の尻尾。

ちなみに外してある防具は革の胸当てと肘から手首までの腕当て、あと長袖のTシャツ。


とりあえずTシャツを着る。

その時黒髪で長いことに気がつく。

後頭部でゴムか何かで纏めてあり肩甲骨くらいまで伸びている。


革鞘に納まっている物を抜いてみる。

15センチくらいの片刄のナイフ。


ナイフを納めて次はウエストポーチを確認する。

「何が入っているのかな?」と中身を見ると、真っ黒だった。


なに、これ?


手を突っ込もうとして真っ黒な入り口に触れると映画のエンドロールみたいな感じで中に入っているだろう物の名前が頭の中に流れてきた。


硬貨各種十枚、タオル(ハンドサイズ、フェイスタオル、バスタオル、タオルケット)五枚ずつ、テント、レジャーシート、フライパン、鍋、お玉、菜箸、革袋水筒五つ、革袋五袋、木の器(煮干し入)と木の器(削り鰹節入)と木の器(ジャーキー入)がいっぱい(∞と表示してあった)。


あるものを思い浮かべ「どうやって出し入れするんだろう?」と検証してみた。


出したい物を思い浮かべながら手を出すとその物が出てくる。

小さい物は手に持って、大きな物は目の前の地面に置かれて出てくる。

ウエストポーチの入口に物が少しでも触れるか入口に手を触れながらもう片方の手で物を触れて「収納」と思うと中にしゅぽんと入った。


組み立ててあるテントが目の前に出てきた時と入っていく時は驚いた。

思い浮かべたあのロボットが持つポケットのような感じで到底収納できない量、大きさの物が入っているようだ。

さすが魔法がある世界だと思った。


出し入れを確認した後、煮干しと削り鰹節を出して、煮干しを一つ猫の前に持っていくと猫が鼻をひくひくさせ、閉じていた目を見開き、煮干しを凝視した。

器に戻すと猫が素早い動きで股の間から跳び出て器の前に座る。


温もりがなくなり少し悲しくなった。


「(美味しそう!)」

「食べていいよ。」

「(ありがとう!)」


猫が出した煮干しと削り鰹節に夢中になる。

はぐはぐと食べる猫にほっこりする。


あぁ、幸せだ。

こんな近くで猫アレルギーの症状が出ない。

会話ができて、視界がぼやけず猫を見てられるなんて幸せだ。

本当にありがとうございます、イルドアニーマ様。


「(美味しかった!)」

「それは良かった。」


猫が手を舐めて顔を擦る。

食べ終わった後の仕草は地球の猫と同じようだ。


かわええ……


猫と会話ができるから名前を聞いてみた。


「(ない。あなたが付けて。)」

「そうなのか。人に馴れているから飼い主か誰かに名前を付けてもらってると思ったよ。」

「(人は見たことある。こんなに近づいたのは初めて。)」


初めてなのか。

猫に好かれやすい身体だからなのかな?

この身体にしてくれた女神様にまじ感謝だな。


「君は男の子?女の子?」

「(メス。)」


女の子か。

ヒョウ柄の黒模様の部分が花びらのようだから……


「ヒョウカって名前はどうかな?」


猫が耳と尻尾を真上にぴんっと立てる。


「(ヒョーカ。良い!)」

「そうか。良かった良かった。」


頭を擦り付けてくるヒョウカの首を掻く。


ゴロロロ、ゴロロロ。


掻く手にヒョウカが頭や首を押し付けてくるところを掻く。


あぁ、幸せだ、本当に幸せだ、最高に幸せだ。


ゴロロロ、ゴロロロ、ゴロロロ。


「ヒョウカは何処に住んでるんだ?」

「(いろんなところ。でも、これからは一緒にいる。)」

「一緒にいてくれるのっ!?めっっっちゃ嬉しい!」


嬉しくてヒョウカを持ち上げ擦り擦りしてしまった。

ヒョウカは暴れず嫌がらず、ヒョウカも擦り付けてきてテンションが上がる。


ゴロロロ、ゴロロロ、ゴロロロ、ゴロロロ。


ずっとヒョウカとこのまま戯れていたいけど、このまま戯れていたいけど、そろそろ移動しなきゃいけないなと思い、もう一度擦り擦りしてからヒョウカを下ろす。


「ヒョウカ、人がいるところ分かる?」

「(あっち。)」


ヒョウカがそう言い歩き出す。

ヒョウカの後をついていく。

ヒョウカの尻尾が立ってゆったりくねくねと左右に動いている。


猫と会話ができて、会話しながら一緒に歩くことなんて、日本では絶対できない事だったよな……


もう何度目かわからないけど、俺はイルドアニーマ様に大大大感謝の念を送った。



□□□□□



猫大好きな転生者と彼?彼女?が大好きな猫?ヒョウカの旅が始まるのであった。



□□□□□おまけ□□□□□



「お邪魔するにゃ。」

「いらっしゃせ、バステト様。」

「○を見ていたのかにゃ?」

「はい。」

「ん?なぜ胸があるのにゃ?」

「彼の希望通りにしました。」

「○が女になりたかったとは知らなかったのにゃ。」

「?」

「どうしたのにゃ?」

「メスになりたいとは言ってません。」

「??じゃあ、どうして女にしたのにゃ?」

「オスもメスも好きと言いましたからです。」

「……もしかして、男のあれが付いているのかにゃ?」

「はい。」

「……イルドアニーマ。」

「は、はい。」

「○は人だったにゃ。」

「?」

「人はオスを男、メスを女と言うにゃ。」

「!?」

「例外もあるけどにゃ……。オスとメスは人以外の動物だと思うにゃ。」

「!」

「察したようだにゃ。○は猫のことだと思って答えたと思われるにゃ。」

「あ、あぁ、わ、私は」

「まぁ大丈夫そうだにゃ。」

「……」

「見てみよにゃ。」

「?……!」

「もう気にしていないみたいにゃ。イルドアニーマも気にしなくていいにゃ。」

「……しかし、」

「少しでも何かしら思うのなら何かあった時、少し助けてあげるにゃ。」

「……はい!」

「幸せな顔を見たから今日は帰るにゃ。また見に来るにゃ。」

「色々ありがとうございました。いつでもお待ちしています。」

「ばいにゃーお。」

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