猫2匹 旅の神様は猫姿
素晴らしく素敵な猫姿の神様、ヴィトラジャート様に内心大興奮していた俺は
少し経って落ち着いたところでここが神界、ヴィトラジャート様の部屋、空間であることを教えられ、謝罪の言葉をいただいた。
俺の勘違いで猫の姿の神様に申し訳なさそうにさせていることに少し申し訳なく思ったのだけど、謝罪の時に耳がぺたんと倒れ、尻尾が下がってゆっくりゆらゆらと、猫耳と尻尾の動きに不敬にも癒されてしまった。
「ヴィトラジャート様は無事だったのですね!ヴィトラジャート様を助けれて元気になられて良かったです!謝られる必要はありません!俺は猫を助けたかっただけですから!」
というわけで全く溺れていなかったということをなかったことにした。
ヴィトラジャート様が俺の意を汲んでくれたのか感謝された。
「助けてもらったお礼じゃ、何か望みはあるか?」
尻尾がピンっと立って先がゆらゆらと揺れる。
揺れる尻尾を見ながら考える。
うーん……
俺の勘違いだったわけだし、望みって言われてもなー。
でも言わないとなかったことにした意味がないからな……
生き返らせることはできるみたいだけどその後が怖い。
モルモットにされそうで……
うーん……
あ!
「家の物を売ったりできますか?貯金してたお金を○○さんや□□団体に渡るようにできますか?」
○○さんや□□団体は野良猫や捨て猫の保護などをしている方々だ。
「……」
ヴィトラジャート様がなぜか黙って数秒じーっと見てきた。
知性溢れる猫顔を目を逸らさず見る。
明るく鮮やかな青眼に見惚れる。
綺麗だ……
「わかった。そう処理しよう。」
「……」
はっ?!
見惚れて返事が遅れてしまった。
「っ!ありがとうございます。」
というかこんなこともできるんだ!
さすが神様!
ヴィトラジャート様凄いな!
「他に何かあるか?」
「他にもですか?」
他に何かと聞かれも、死んでしまっているからなぁとさっきの寄付くらいしか思い残すことがなくて困った。
あ!そうだ!
「えーっと、来世では猫アレルギーじゃないようにしてほしいです。来世というものがあるかわかりませんが、来世の自分には気軽に猫と戯れるようになってほしいですから。」
「……」
俺がそう言ったら、ヴィトラジャート様はまた俺をじっと数秒見た後、今度は横を向いて虚空を見上げた。
尻尾の先が向いた方向に垂れ、耳がぴくぴくと動く。
かわいい……
何もないところをじーっと見ている猫みたいだな。
あ、これって、神様に不敬かな?
ヴィトラジャート様が横を見ながら口を開いた。
「この子をお主の世界に行かせれくれんかの?」
お主の世界?とヴィトラジャート様の言葉に首を傾げる。
一度の瞬きの間に俺とヴィトラジャート様しかいなかった空間に絶世の美女がヴィトラジャート様の横、向いていたところに立っていた。
猫と美女が見つめ合っている。
美しい……
最高だ。
「気付いていたのですね。いいですよ。」
「助かる。」
ヴィトラジャート様と短く会話をした美女が俺の方に身体を向けた。
「初めまして、私はこの地球とは異なる世界の獣人の神イルドアニーマです。イルドでもアニーマでもお好きにお呼び下さい。」
美女、女神様イルドアニーマ様が俺を見て話してきた。
美女と話すなんて緊張した。
緊張していたが、気が付いたことがあった。
なんと!美女の頭に猫耳があることを!
さらに美女のすぐ後ろで猫の尻尾のようなものが左右に揺れていてちらちらと見えた。
あれは猫耳カチューシャ?
でも、動いているな。
尻尾も左右に揺れている。
本物、なのか?
「……」
「私達の世界に来ますか?」
俺は動く猫耳を見て揺れる尻尾を見てまた猫耳を見てまた尻尾を見て、と交互に猫耳と尻尾を目で追っていた。
美女、女神様に猫耳と猫尻尾……
さいっっっこうじゃないか!!
ここは天国か!
「来ますか?」
美女に猫耳と尻尾があることに興奮し過ぎて返事ができなかった。
「あ、お、俺、私は○○ ○です?でした者です。あの、その世界にも猫はいますか?」
猫は最優先事項!
猫がいない世界に行っても意味がない!
「はい、いますよ。」
「行きます!イルドアニーマ様の世界に行かせてください!」
「猫が大好きなんですね。私達の世界には他にも猫の人族や魔獣がいます。」
マジか!
最高じゃないか!
猫がいてイルドアニーマ様みたいな人もいるんだろ?
最高じゃないかっ!
「行かせて下さい。お願いします!」
「ふふ、わかりました。」
イルドアニーマ様の微笑みが眩しくて直視できない。
視線を逸らし、少し下を見るとイルドアニーマ様の尻尾が気分が良さそうにゆっくりと左右にゆらゆら振られているのが見えた。
「では私の世界で暮らせるようにあなたの身体を作り変えますので、私の質問に答えてくれますか?」
「は、はい。」
「オスは好きですか?」
猫の事か?
身体を作り変えるのに猫の事を聞くのか?と疑問に思いながらも答える。
「はい。好きです。」
「メスは好きですか?」
「はい。好きです。」
「オスとメス、どっちの方が好きですか?」
「どっちも好きです。性別は気にしません。」
「……なるほど。次は年齢ですが、希望はありますか?」
猫の性別の次は年齢?と不思議に思った。
まぁ、答えるが……
34歳(独身)でしたが、なにか?
年齢=彼女無しではないけどな!
どうでもいい情報だな……
「希望ということは若返ることができるのですか?」
「はい。」
「じゃあ、一番動けていた高校生、17歳くらいでお願いします。」
「わかりました。次は容姿ですが、希望はありますか?」
「えーっと、猫に好かれやすい容姿に、なんて出来ますか?」
できたら最高だよな!
「はい。出来ますよ。他にはありますか?」
凄い!
夢みたいだ!
「それだけでいいんですけど……あ、少し引き締まった体で太りにくい身体にしてほしいです。」
「猫に好かれる引き締まった、太りにくい身体ですね。わかりました。でも、太りにくいだけで食べて寝てと、何もしなければ当然太ります。維持し続ける努力をしなければいけませんよ。」
「はい。」
それは当たり前のことだな。
「次で最後です。私とヴィトラジャート様からスキルを与えます。可能な限り希望のスキルを与えます。どのようなスキルがいいですか?」
「す、スキルとはゲームなどにあるスキルですかっ?!魔法のスキルを持っていたらその魔法が使え、威力などが上がったりするやつですかっ!?」
「その通りです。スキルには適正スキル、耐性スキル、後天スキル、特殊スキルがあります。剣術や魔法などの後天スキルや耐性スキルは一定の経験値を満たすとスキルとして発現し、技術や威力などが向上します。」
おお!
テンションが上がる!
ここはやっぱり念願の能力をお願いしよう!
「じゃあ……」
夢が叶うかもしれない……
「はい。」
「猫と話せるスキルと猫アレルギー耐性を下さい!」
深々と頭を下げて言った。
「……」
「……」
返事がなくて頭を上げるとイルドアニーマ様とヴィトラジャート様が見つめ合いフリーズしていた。
「……」
「……」
な、ないのか?
「「え(は)?」」
二人の神様が俺を見て困惑したような声を上げた。
「……ダメですか?ないのですか?」
「猫とと特定のモノとの意思疏通、耐性ではありませんがあります……いいのですか?」
なんだあるんじゃないか!
やった!猫以外とも意思疏通できるなんてラッキーだな!
「そんなスキルでいいのですか?」
「そんなっ?!俺の念願の夢が叶うスキルです!素晴らしいじゃないですか!!耐性があらば猫が嫌がらない限りずっと触っていたり、遊べるんですよ!くしゃみをしてビックリさせ起こしたり逃げたりさせなくなるんですよっ!」
「本当に猫が大好きなのですね。」
「はい!大好きです!愛しています!なので猫と話せるスキルと猫アレルギー耐性がいいのです!」
またしてもイルドアニーマ様とヴィトラジャート様は見つめ合う。
美女猫人神様と猫姿の神様が見つめ合う……
最高に良い絵だ。
写真を撮りたい、脳内保存しよ……
数秒ヴィトラジャート様と見つめ合っていたイルドアニーマ様が頷き、俺を見る。
「わかりました。希望の猫と話せるスキルと猫アレルギー耐性に合ったスキルを与えます。」
「ありがとうございます!」
やった!
めっちゃ嬉しい!
「それと私達の世界には魔法があります。折角なので魔法の適正スキルも与えますね。」
「そんな、望んでいたスキルをいただいたので大丈夫ですよ。でも、俺も魔法を使えるのですか?」
「はい。使えるように作り変えます。私達の世界には魔臓という臓器があります。魔法を使う為の魔力を作り蓄える臓器です。魔力を使えば使う程、蓄える量が増えます。魔法は魔力と想像力があればスキルがなくても使えますが適正があればもっと簡単に使えます。人それぞれ適正があり、得意不得意があります。」
うん、人それぞれ適正、得意不得意があるのは地球でも一緒だな。
魔力は使えば使う程増えることと魔法は魔力と想像力があれば使えるってことは覚えておこう。
「魔法だけではなく後天スキルの発現、成長の経験値も違いがありますが、皆使えます。」
努力が実を結ぶ世界か。
「そうなのですね。でも魔法も一定の経験値を満たせばスキルとして発現できるのですよね?望んでいたスキルだけで大丈夫です。頑張って覚えます。」
「……適正スキルがあれば簡単に魔法が使えて猫の為に水分補給で水を出したり、火を出して暖かくしたり出来て猫を苦労させないのにのぉ。」
ヴィトラジャート様の言葉にはっとする。
前言撤回!
苦労なんてさせたくない!
「すみません!その魔法の適正スキルをください!」
「ふふ。わかりました。魔法の適正スキルを与えますね。」
「ありがとうございます!」
「これで私からの質問は終わりです。何か質問はありませんか?」
「ありません。」
どんな猫がいるんだろう。
早く猫に会いに行きたい、話したい、遊びたい、撫でたい、吸いたい。
「では、私達の世界に送りましょう。後ろの魔方陣の中央に立ってください。」
イルドアニーマ様が手を向ける方に魔方陣が描かれていた。
「わかりました。」
俺は魔方陣の中央に立つ。
「送ります。」
「はい。」
俺が返事をすると魔方陣が光り出す。
「○よ。もう遠慮しなくていいからの。好きに生きなさい。」
ヴィトラジャート様の不意の言葉でなぜか視界がぼやける。
顔を手の甲で拭う。
「は、はい。新しい人生の機会をくださり、ありがとうございます。お元気で。」
魔方陣がさらに光り輝き、目を閉じる。
俺は浮遊感を感じた途端に意識を失った。
□□□□□
イルドアニーマとヴィトラジャートは魔方陣の上に浮く白い繭を見つめていたが、突如空間の揺らぎを感じ振り返り警戒する。
「にゃぁ。ここにいたにゃー。」
イルドアニーマとヴィトラジャートは現れた大猫を見て警戒を解く。
「バステトか。何しに来たのじゃ?」
「バステト様、どうしたのですか?」
「猫達の恩人が急にいなくなったにゃ。どうしてここにいるのにゃ?」
バステトの圧が増し、尻尾が荒々しく床を何度も叩く。
叩く度に空間が揺れる。
イルドアニーマは膝をつき身体が震える。
「説明するから落ち着くのじゃ。」
「……早くするにゃ。」
バステトの圧は収まり、イルドアニーマはふらふらと立ち上がる。
ヴィトラジャートがバステトに説明した。
「……何をやってるにゃ。この子のお陰で救われた猫がいっぱいいたにゃ。これからも救われる猫がいっぱいいたにゃ。」
「すまなかった。」
「……にゃぁ。」
バステトはため息をつく。
「……もうどうしようもないにゃ。ヴィトラジャート、加護は与えたにゃ?」
「……与えてない。」
「与えるにゃ。にゃの加護も与えるにゃ。」
「わ、私も与えた方がいいでしょうか?」
「ヴィトラジャートは責任があるにゃ。イルドアニーマは巻き込まれただけにゃ。好きにするにゃ。」
「は、はい。」
バステトは白い繭に近付き、白い繭に前足の肉球を優しく押し付ける。
「猫達をいっぱい救ってくれてありがとうにゃ。これはお礼にゃ。」
バステトの肉球から白い繭に力が流れる。
ヴィトラジャートとイルドアニーマも白い繭に触れ力を流す。
流し終え三神が白い繭から離れると魔方陣が点滅し出す。
「イルドアニーマ達の世界でも猫達と仲良くしてくれると嬉しいにゃ。元気でにゃ。」
魔方陣が激しく輝き、数秒経ち収まると白い繭は消えてなくなっていた。
「イルドアニーマは戻っていいにゃ。あの子の事よろしくにゃ。」
「わかりました。ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」
「ヴィトラジャートのせいにゃ。気にするにゃ。」
「はい。それでは失礼します。」
イルドアニーマはバステトに頭を下げ、自身の神界に戻っていった。
バステトの尻尾が大きくバタバタと動いている。
「説教にゃ。そこに座るにゃ。なぜ真冬の川に入るのにゃ?○が勘違いして当たり前にゃ。ーーーー」
バステトのとても、とても長い説教が始まった。
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