猫11匹 猫娘達と風呂

「アニー、お風呂にはシャワーかかけ湯をしてから入るんだよ。」


イルドアニーマ様の言葉「魔力を使えば使う程、蓄える量が増えます。」を伝えたら三人のテンションが上がりまくった。

なんとか三人を落ち着かせ、魔力の感知と魔力を動かすことができたから一旦お風呂に入ろうと言うと真っ先に浴槽に入ろうとしたアニーに注意した。


「しゃわー?かけゆ?なにそれ?」


なにそれ?おいしいの?とはさすがに続かないか。

元ネタ知らないけど……


イルとマルルちゃんもわからないみたいでアニーと同じく首を傾げていた。


銭湯みたいなものもないのかな?

それなら、本当にこの持ち運べる家のアイテムを譲渡していただいたことは本当に最高に幸甚の極み。


ヴィトラジャート様に大感謝の念を送った。


「お風呂に入るときはシャワーかかけ湯をして汚れを落としてから入るのが常識だよ。ここに座って。」


三人ともわからないようなので彼女達を風呂椅子に座らせる。

マルルちゃん、イル、アニーの順に座っている。


俺はアニーの側に行き、シャワーを手に取ってシャワーの使い方や温度調整やらを教え、熱くない温度に調整して耳には入らないよう気を付けながら頭から汚れや汗を流してあげる。

イルとマルルちゃんは自分でシャワーから出るお湯に手を当て温度調整をしている。


「わああ!温かい!温かい雨みたい!」

「しゃわーがあれば寒い日でも浴びれるね。」

「良い魔道具。」

「シャワーはないのか?」

「私は見たことがないよ。こんないっぱいのお湯に入るのも浴びるのも初めてだよ。」

「しゃわーは私も見たことがない。お風呂は高級宿や貴族の家ならある。流しっぱなしなんて贅沢。」


友達の子供と入った時みたいだな。

あの時は友達が子供を洗ってあげているのを見ているだけだったけど……


懐かしさともう会えないことに少し感傷的になりそうになるが、アニーから流れ落ちるお湯が思いもしないほど汚れていて驚いて引っ込んてしまった。


でも会話からシャワーがない風呂の習慣もない生活だとわかり、そんな生活を長年、今まで続けていたら、こんなに汚れていることも納得もした。


「私、こんなに汚れていたんだ……」

「同じ……」


イルとマルルちゃんの沈んだ声が聞こえた。

目を向けると二人から流れるお湯も汚れていた。

イルはアニーと同じくらい、マルルちゃんは二人より少しだけましなくらい。


これでは浴槽が汚れるなと思ったけど、長年の垢を落とすため、浴槽に浸かって潤けさそうと三人に浴槽へ入ってもらう。

今回汚れるのは仕方がない。


イルとマルルちゃんが浴槽が汚れると遠慮して入らなかったため、脇に手を入れ持ち上げ無理やり入れた。

二人に顔を赤くなるほど恥ずかしい思いをさせたのは申し訳ないと思った。


それを見たアニーが「わたしも!やって!」と楽しげに言ったから、高い高いみたいに高く持ち上げてから入れた。


「ルドアお姉ちゃん!もう一回!もう一回!」

「あとでやってあげるから、今は肩まで浸かっていてね。」

「わかった!」


脱衣場にタオルを取りに行く。

嫌われずにすんだあれを隠すために咄嗟に取ったタオル。

脱衣場には巻いたタオル以外にも何種類かのタオルが置いてあった。


使い用途を考えて長目なタオル、顔を覆えるくらい小さめなタオルを七枚ずつ持って戻る。

それぞれ四枚は鏡の横にある掛けられる場所にタオルを掛けとく。

残りのタオルをシャワーのお湯で濡らし絞って、三人が入っている浴槽に向かう。


未だ顔を赤くしている二人はじっとしていたが、アニーが浴槽内を歩き回っていたため温かい湯で浮き出た黒い汚れが広がり浴槽の湯全体が黒く染まっていた。



子供達に虐められていた猫を思い出す。

尻尾を掴んで振り回していたクソガ、子供達を追い払い、保護した。

近付くと人に恐怖を感じているのか震えていた。

心が痛く「ごめんね、ごめんね。」と猫に謝った。


その猫を茶猫だと思っていた。


最初濡れタオルで優しく拭いてた。

猫に近づいても震われず抱っこをできるようになってさらに数日後本格的に洗った。

浴びるのも浸かるのも嫌いな娘だったみたいで、風呂桶のぬるま湯に入れ暴れシャワーを当てて暴れまくって大変だった。


今のように風呂桶の湯が黒く染まった。

猫用シャンプーで三度目で汚れのないシャンプー泡になって洗い流すと、白猫が現れた。(洗い流しで薄々気がついていたけどね。)


洗い拭き終わり、「おまえさんこんなに綺麗だったんだぞ」と鏡の前に持っていくと「ふしゃーふしゃー」と鏡に映る自分に猫パンチ、跳ねたり威嚇しながら近付いたり離れたり俊敏に動く猫ちゃんが面白く笑ってしまった。

あと元気になってよかったなと思った。


真っ白な猫で里親募集したら希望する人が殺到して里親を決めるのも大変だった。


里親になった方からはわたあめちゃん(猫ちゃんの名前)の動画や毎年年賀状を送られてきた。

おもちゃを追いかけるわたあめちゃんやゴロロロと鳴らし里親のお腹で眠るわたあめちゃんの動画、干支の被り物を被ったわたあめちゃんは最高に格好良かった、可愛かった。


そんな幸せに過ごすわたあめちゃんを思い出して、わたあめちゃんのようにイルとアニーを幸せにしようと思った。



浴びるのも浸かるのも嫌がらなくてよかったとかこの娘達も毛色が変わっちゃうのかなとかとも思いつつ、アニーを呼んでタオルの使い方を説明し、アニーに使い教える。


頭皮も顔も保湿?させ潤けさせるため長目なタオルで髪を纏め頭を包み、浴槽の縁に後頭部を置いてもらい、小さめなタオルを顔に被せた。


「寝ちゃいそう~」とアニーの気持ち良さげな発言して一分くらい、三人からすぅすぅと寝息が聞こえた。

十分くらい浸かっていてもらおうと思っていたため寝かせたままで沈まないよう注意しながら、魔力の循環をする。


魔力が漏れないよう意識しなくても無意識下で魔力の循環をするように身体に覚えさせなくてはならない。


呼吸が当たり前のように魔力の循環も当たり前のようにしなければマルルちゃんのように魔力が見える人に漏れている魔力(マルルちゃん曰く桁違いの魔力量)を見られたら、面倒事に巻き込まれる可能性大だ。


さっきやった心臓のように左からというものの循環を数分続けた。

魔力を循環させると流れるプールのように魔臓から出る魔力が動かした魔力の軌道に沿って流れる。


しかし循環の速度が遅いと、最初の起点の魔力が左半身から右半身へ流れた辺りで魔臓から出る魔力が軌道から漏れ始めて、起点の魔力が魔臓に戻ってくる頃には左半身を流れる魔力がほとんど軌道から漏れ身体からも漏れてしまう。


まぁ速く動かせば軌道から漏れることなく循環する。

だが、全身が暑くて汗が滲み出てきてしまう……。


どうすればいいかなと思考しながら、魔力の循環をしているとあっという間に十分が過ぎていた。


アニー達を起こし、アニーを頭から身体全体を洗うことにした。


三人が浴槽から出ると浴槽がぴかっと光って、浴槽内が綺麗になっていた。


「すごい!すごい!綺麗になった!」

「掃除しなくてもいいのは楽だけど、私がすることがなくなっちゃうな……」「洗浄スキル。範囲も効果も凄い。」


分かりやすいスキルの効果を見て、ファンタジー要素いっぱい(イルとアニー猫耳猫尻尾が生えた人やオーク、収納袋とか)あったが、改めてファンタジー世界に来たんだなと思った。


いや、ほんと、素晴らしいアイテムだ。

ヴィトラジャート様、ありがとうございます。



アニーを落ち着かせ、イルには「他のことをすればいいよ。」と言い、イル、アニー、マルルちゃんの順に風呂椅子に座ってもらう。


鏡の下の棚にはボトルが三つあり、シャンプーとトリートメント、ボディソープと書かれてあった。

それらとボディタオルもあって三人に用途を説明した。


説明と言ってもトリートメントなんて使ったことなかったから、最初にシャンプーで頭を洗い、流した後にトリートメントを付ける?揉みこみ数分置き流すんだよと見たCMを思い出して言った。


巻いていたタオルを取りアニーに少し前屈みで頭を下げて目を瞑ってもらい、アニーの頭を洗う。

手で泡立てたシャンプーの泡が一瞬で溶け消えて黒く液体へと変わった。

風邪で寝込んで三日風呂に入れなかった時より早く泡が消えた。


全然泡立たなかった……


泡が消えずにシャンプー泡が保つまで洗う流すを何度も繰り返し、尻尾も同じく繰り返した。


泡立てたシャンプー泡が残るようになったところで髪も尻尾も流さず、鏡横に掛けた小さめなタオルを取って、タオルを濡らし絞り、少しシャンプーを付け片っ方の猫耳を内外とタオルで挟み毛並みに沿って耳元から先に動かした。


タオルを広げて汚れ具合を見ると、黒かった。

だからタオルをお湯で洗って絞り同じことを繰り返し、汚れなくなったら、今度はシャンプーを落とすためただの濡れタオルでまた同じことを繰り返し、タオルが泡立たなくなるまでシャンプーが落ちるまで続けた。


もう片方の猫耳も洗った後、尻尾のシャンプーを洗い流し、髪は身体につかないようシャンプーを流し落とす。

髪を梳いて頭を撫でて水を取りトリートメントを揉みこみ、掛けておいた綺麗な長目なタオルを取り、髪を纏め頭の上でタオルで覆い頭に軽く巻く(CMで見た女性のようにしてみた)。


ぴくぴく動く猫耳が良い。

自分でやったんだけど太めのハチマキしているみたいで可愛い。自画自賛。

まぁ素材が良いからだな。

なんたって猫耳に美少女(アニーは可愛い系)だからねっ!


今度は身体を洗う。

よく見えるようになったうなじにそっと人差し指中指薬指の爪を立て、優しく軽く下へ引っ掻くと、でろっと潤けた垢が取れて、綺麗な?爪痕がアニーの首にできた。


本当に優しく全体を大雑把に爪を立て垢を取った後、肌は洗いすぎは良くないと聞いたことがあるから、潤けさせた垢だけ取るつもりで気持ち強くボディソープを泡立てたボディタオルで隅々まで洗った。


場所によっては身体をくねくねさせ「くすぐったい~」「きゃっ!」と楽しげに言い、洗われることが楽しいのかアニーの尻尾が左右に振られていた。


真っ先にお風呂に入りに行こうとするほどだから、水浴び、洗うことが嫌いじゃなくて本当に良かった……

お湯で洗おうとすると指や手や腕を噛んだり、爪を出して逃げ出そうと抵抗する猫ちゃんがいっぱいいたからな……

わたあめちゃんとかね……


「ルドアお姉ちゃんありがとう!」

「どういたしまして。ちょっと汚れていたから今日は先に頭も身体も洗ったけど、次からは軽く汚れを落としてから、浴槽に入ればいいよ。あとトリートメントを付けたのもあるけど長い髪の場合は頭の上で纏めて浴槽の湯に浸からないようにするんだ。」

「はーい。」

「はい。」

「わかった。」

「アニーは洗い流したから、先に入ってていいよ。」

「はーい。」


アニーが浴槽に向かい、二人に「こんな感じで洗うんだよ。」と伝えた。


「温かい~。気持ちい~。」


アニーのリラックスしたような力の抜けた声が聞こえて、俺はふふっと笑みを溢し、ちらっとアニーを見た。


「アニーっ?!」

「「!?」」

「な~に~。」


お尻が浮かび、だらんと尻尾が垂れかかっている姿を見た。


リラックスした声だったのだが、うつ伏せの状態を見て幼児がうつ伏せで溺れいたというニュースが頭を過り、慌てて立ち上がり大きな声を出してしまった。


呼ばれたアニーはリラックスした力の抜けた返事をして方向転換した。

犬かきしているアニーを見て俺はほっと息を吐いた。


「あぁ、良かったぁ。」


もう、心臓に悪いよ……


「どうしたの~。」

「ううん、何でもないよ。」

「そっか~。」

「ふぅ。っ!?」


安堵したのもつかの間風呂椅子に座ろうとして、鏡に映る自身の健康的な肌で立派な女性的な身体が視界に入り、反応してしまった。


男のさがだから仕方がないのだ……


俺は尻尾で隠し風呂椅子に座って太股に挟んだ。

この身体を意識して急に恥ずかしくなっていた。


鏡を見ないよう素早い動きでシャンプーのボトルをプッシュし、泡立て頭を洗おうとする。

猫耳があることを忘れていて、猫耳に泡が当たることで思い出し、ぴくぴく反応する猫耳を気にしながら体を少し前に倒し、胸を見ないよう目を瞑り慎重に耳周辺の頭皮と髪を洗っていく。


いやぁ、猫耳カチューシャじゃなくて本物の猫耳が生えているよ。

ぴくぴく動いているよ。

自分に本物の猫耳が生えているなんて、感動ものなんだがっ!


猫耳と猫尻尾が生えていることを再認識して嬉しくてテンションが上がりそうになる。

しかし女性の身体っていうのも意識したら困惑してテンションが下がる。


でもやっぱり猫耳と猫尻尾がある嬉しさの方が勝り、嬉しいという感情に尻尾がゆらゆらと左右に振られそうになるのが挟んだ太股に伝わるぴくぴくと動く尻尾の動きでわかる。

あと女性の身体に男のさがであそこも若干テンションが上がっていてむくむくと立ち上がるのもわかってしまう。


恥ずかしがってないで早めに自分の身体女性の部分に慣れないとな……


お風呂にアニーやイルと一緒に入ることが多くなりそうだから自分の身体に反応するのは色々やばい。

見られて「変態……」とか猫少女達に言われたら、ショックでふさぎ込み引きこもりになる。


そう思い、目を開けて頭を洗い、身体を洗っていく。

視覚と手に伝わる柔らかい感触に、慣れていない俺は天に向かって立つわけだが、慣れるためそのまま身体を洗っていく。

尻尾の付け根に触れるとあそこが反応して、本当に付け根は性感帯だったんだとネットで見た記事を思い出したりしながら洗う。


「あ、あの、お姉ちゃん。」

「なに?どうした?」


洗い終わり、髪を纏めタオルを巻いているとイルが話しかけてきた。


「アニーの様に綺麗にしてください!」

「うん、いいよ。」

「私もお願い。」

「えっ?」


「私もお願い。」を発言をしたマルルちゃんを驚いて見る。


イルは妹で家族で子供だから問題ない。

しかしマルルちゃんは成人している女性だ。

数日経って自分の身体女性体に慣れマルルちゃんと仲良くなった後ならまだしも、会って一時間も経ってない元男が洗うのは大問題だと思う。


「……だめ?」


マルルちゃんの上目遣い。ただし無表情で見つめてくる。

刺さる人には刺さる。


俺には刺さった、猫みたいで。

俺にはとっても深く刺さってしまった。


興味無さそうな猫が身体を擦り付けてきて喉をゴロロロゴロロロと鳴らし出すあれみたいな感じで、なんだっ?!このコ!可愛すぎるだろっ!ってなやつ。

または心開いたら甘えん坊になる猫ちゃんとかね。


どっちも似たような状況で涙で視界がぼやけて我慢していたくしゃみを出してしまって逃げられちゃったけど……


無表情な人って猫みたいだと思わない?

わかる?


「い、イルの後に洗うね。」

「待ってる。」


マルルちゃんは猫マルルちゃんは猫━━

マルルちゃんは子供マルルちゃん子供━━


マルルちゃんに対して失礼なことを心で何度も言い自己暗示しながら、彼女らの洗う用纏める用タオルを取りに行き、戻ってきてイルを丁寧に洗っていく。

イルは「んんん。」「あうう。」と恥ずかしいのを我慢していた。

洗い終わると、イルは「お姉ちゃん、ありがとう……」と言いゆっくり立ち上がりゆっくりと浴槽に向かっていた。


次洗うマルルちゃんは滝行みたいな体勢(風呂椅子からまた床に直接、あの岩の上で座るよう体勢)で座ってシャワーを頭から浴びていた。

声をかけ、風呂椅子に座ってもらう。


猫耳がないから髪は洗いやすかった。


でも耳の位置は人間と同じだったが形は違った。

横に伸びて先が細くなっている、多くある想像物のエルフような耳だった。

エルフ耳も猫耳と似た感じで触れるとぴくぴく上下に動いていた。


認識(魔力感知の時からね。)はしていたが気にしていなかったため、洗って触ってしっかりと見てやっと「あぁマルルちゃんはエルフなのかな」と思ったくらいだ。

それで大きな帽子を被っていたのは耳を隠すためだったのかな?と少し推測してみた。


聞かないけど……

自分で言うのも変かもしれないが、猫関係以外のことはあまり気にしない、適当な人なんだよ俺は。


イルとアニーの猫耳と同じように優しく洗ったつもりだがエルフ耳は赤くなってしまった。

謝ると「だいじょうぶ……」と小さな声で言われた。


恥ずかしかったんだなと思い、他も優しく素早く洗うことにした。

早く終わらせようとした。


成人している女性、マルルちゃんの「んっ」「あっ」という聞いてはいけない漏れる声で、自己暗示が解けかけたが、頑張った、まじ頑張った。


ふらふらなマルルちゃんを支えながら、一緒に浴槽に入る。


ふぅぅぅぅ……


野良猫達を洗うより疲れた。

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