第12話 レガルスの野望

〜〜レガルス視点〜〜


 クソ! あのリンザとかいう忌々しい小娘め!

 私に謝罪を要求してきやがった。


 もう無視したが、あんな小娘に私が頭を下げるわけにはいかん。

 この騎士団長、レガルス・バレインスタインは絶対に負けないのだ。


 私は城の地下へと降りた。

 そこは深い。特別な者しか入れない地下の広場。


「オババ」


「これはレガルス様。こんな場所に何用ですかな?」


「国王の呪いが解けてしまった」


「なんと?」


「解呪の計画を練りながら餌をやり続け、国王をモンスターにする計画がおじゃんだ」


「では、邪神ホシガルはどういたしましょう?」


 広場には大きな魔法陣が描かれており、その中央には、大きな猿のような形をした黒い霧状の物が浮かんでいた。


「もう随分と育ったな」


「ひひひ。ありとあらゆる欲望を食べさせましたのでねぇ」


「よし。解き放とう」


「はい。では実体にするには人間の血が必要ですじゃ」


「なるほど」


「適当な人間を殺して、邪神に血を吸わせましょう。ヒヒヒ」


「ふむ。適当な人間か」


「はい。地上に出てさらってきてくださいな」


「その必要はないな」


「へ?」


 俺の剣はオババの体を斬った。


「ぎゃぁあああああッ!!」


 オババは絶命。

 その血は邪神の元へと流れる。


「ククク。さぁ、吸え! その血を与えたのは私だ!! 私を主人と崇めよ! 邪神ホシガル!!」


 この国を我が物にするためになぁああ!!








〜〜ゴォ視点〜〜


 僕たちは城内で数日間、体を癒すことにした。

 ナナトナが国王の体が回復するのを確認してから王都ロントモアーズに帰る予定だ。


「あ、あの……。師匠……」


 と、現れたのはドレス姿のナナトナである。

 真っ赤なドレスに胸元はしっかりと開いていた。


 随分と色っぽい。


 みんなは目を見張る。


「どうしたんだ? その格好?」


「は、初めてなんですけど……。き、着てみました。へ、変ですか?」


 いや、変ってことはないが……。


「わは! ナナちゃん可愛い!」


「あんた、王子になるのは辞めちゃったの?」


「そ、そういうんじゃないんですけど……。そ、その、折角、城に帰ってきたので……。き、着てみました」


 折角の意味がわからんが……。


 ナナトナは僕の反応をチラチラと伺っていた。


「あーー! ナナちゃんもしかしてぇ」

「な、なんだよ?」

「それ、ゴオさんに見せる為に着たんでしょう!?」

「違っ! 違うよ!!」

「えーー。絶対そうだぁあ!!」

「ち、違うけどぉ……」


 と、ナナトナは僕を見つめた。


「ど、どうですか師匠?」


 いや、どうって……。




「ドレスだな」




 僕の言葉にリンザが突っかかる。


「んもぉ! あんたってば女心がわかってないだからぁ!」

「女心なんて知る必要はない」

「彼女には必要なのよ?」

「なぜだ?」

「んもぉ! あの顔見てピンと来ないの?」

「全く来ない」

「乙女心よ」

「そんな物は僕の人生に取って無用の長物だ」

「もっとナナトナのことを考えてあげなよ!」

「彼女を強くする計画は毎日考えているぞ?」

「じゃなくてぇ……」


 リンザは僕に耳打ちする。


「似合ってる。可愛いって言ってあげるの!」

「……なぜだ?」

「彼女が喜ぶからでしょうがぁ!」

「そんな言葉が嬉しいのか?」

「んもぉ! 本当に何もわかってないのねぇ。いいから言うの! いい?」


 やれやれ。

 

 僕はコホンと咳こんでから言う。




「あーー。そのドレス似合っていて可愛いぞ」


 


 すると彼女は大喜び。




「ありがとうございます! 師匠♡」




 こんな言葉が嬉しいのか?

 うーーむ。

 女心とは厄介だなぁ。


 そんな時である。




ゴゴゴゴゴゴッ!




 と、凄まじい地震が起こった。


 この揺れ方……。

 自然の地震じゃないぞ?


 城の外から大きな黒い出現する。


「なんだ?」


 それは30メートルを超える、黒い猿のモンスターだった。

 その肩には人が乗っている。


「レガルス……」


 なぜ、あんな化け物と一緒なんだ?


「ハハハハーーーー! この城は今から私の物となる!」


 大猿は拳を塔に向けて放つ。

 バゴンと轟音と共に破壊した。


「ヌハハ。邪魔をする者は即刻殺す!!」

 

 やれやれ。

 厄介なことになったな。


 城兵たちは恐怖に阿鼻叫喚。

 レガルスの姿に大混乱である。


「どうしてレガルス様が化け物と?」

「レガルス様、これはどういうことですか?」

「お助けください、レガルス様ぁああ!!」


 レガルスは笑った。


「今日から、この国は私の物となる!! 逆らう者は命はない!!」


 この言葉に、みんなは絶望する。


「ああ、レガルス様は邪神に操られているんだぁあああ!!」

「レガルス様を助けなくては!」

「邪神めぇえええ!!」


 あの黒い大猿は見たことのないモンスターだな。


「ガオ。いるか?」


『はい。 主人マスターのお側に』


 と、変化狼のハウル顔は床からニョキっと顔を出した。


「あのモンスターの名前、わかるか?」


『あれは邪神、ホシガルでございます。人々の欲求を膨らまし、その心を食べて育つ邪神です』


 なるほど。


「つまり、一連の事件はあの邪神が原因だったのか?」


『おそらく……。我を襲った黒い靄も、あの邪神が元凶だったかと』


 繋がったな。

 

「しかし、そうなるとレガルスは、邪神に操られているのか?」


『あの男の様子から、それはないと思われます』


「うむ」


 興奮はしているが、レガルスの状態はいたって普通の状態だ。

 目の色、汗の出方からそれは判別可能。ハウルガオや、呪われている国王と戦った感じからそれはわかる。

 つまりそうなると、国王を呪いにかけてこの国を滅ぼそうとしたのは、全て……。


「おいレガルス! 全部、あんたの仕業だったんだな?」


 みんなは僕の言葉に目を見張る。


「ええ!? あの人は邪神に操られてるんでしょ?」

「師匠、どうしてそんなことが!?」

「ゴオさん、どういうことですか!?」


 その答えは僕が答えなくても良さそうだ。


「ふはは! ゴオ! なかなかやるじゃないか! 貴様の言う通り、全ては私の計画だ! 国王に呪いをかけ、この国を滅ぼそうとしたのだぁああ!!」


 やれやれ。

 邪神より邪悪な人間か。

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