8 忍の鉄板ギャグ
夜。
告白から五日目現在、茜部からは依然返事を催促されてはいない。
茜部が放課後は何やら忙しかったらしく、手裏剣の日以降は一緒に帰れてはいない。
正直手裏剣の下りで気持ち的には陥落しているのだが、自分の決断が一族……まぁ言っても血筋も何もない一般市民の分家も分家ではあるが、一応は大切に思っている家族の行く末を決めると思うと、いざ承諾するにも勇気が要る。
「茜部に不満は一切ないんだけどな~……」
如何せん、彼女を取り巻く環境に不確定要素がありすぎる。
いっそ「忍者を自称するちょっと痛い子」くらいの闇ステータスであってくれた方が穏やかな気持ちで受け入れられるところだが、忍者っぽい身体能力と忍者っぽい暗器を使っていたのでどうやら本当に忍者臭いのだ。
俺にとって忍者と言えばナ○トであって、何なら忍者というよりかはNINJA寄りである。
忍者って何なんだろうな……?
「
ガラガラ
「呼んだ?」
「ア˝ぁ!!?」
腹の底からダミ声が出た。
いやいやそうじゃなくて
電気ショックばりの跳ね方でベッドから飛び起きると、わずかに開いたクローゼットのドアの隙間から見覚えのありすぎる視線を感じた。
「年頃の男子の部屋に忍び込むのも忍びないなとは思ったんだけどね」
「忍びだけに?」
「忍びだけに」
「やかましいわ」
煽っといてなんだがマジで今はやかましいしかない。
隙間から淡々と言われて癪なので思いっきりクローゼットを開いてやると、全身光沢のない黒のぴっちりスーツみたいな姿の茜部が正座していた。
いや、エッロ。シルエットくっきり出過ぎだろ何その格好。忍者のユニフォーム?は?えろっ。
思わず目を逸らした俺を気に留めた様子もなく、あくまで彼女はフラットな顔をしている。
「……まぁ忍び込むの今日が初めてじゃないんだけどね」
「薄々そうじゃないかとは思ってたけど改めて言ってくれるなよ」
「しのびねぇな」
「……かまわんよ」
「忍だけに」
「それは見過ごせん」
こんな時にアフロを
あとこの短時間でしょうもないネタを二回も
「単純に、好きな男子の生態が知りたかった」
ちょっと頬を染めながらそんなこと言うなよ。可愛いから許しちゃうだろ……
「悪い気はしないけど、それ言われると俺も茜部の生態をじっくり観察したいんだよな」
開き直ってちょっと
「…………まぁ、私にそれを拒否する資格はないし、返事する前に色々見ておきたいって言うなら」
口調だけは淡々と言いつつ茹蛸みたいに顔を真っ赤にする茜部に不覚にも胸が締め付けられる。今はマジ照れはやめてくれよ。お言葉には甘えたいけども。
「……と、今まではそうだったんだけど、水原、忍の存在と機密を知っちゃったから」
「……あぁ、監視的な」
「他の忍に監視させるのは癪だったから私が志願して来た」
今は私情じゃなくて任務、と。
「ってことは、いざってときには茜部が俺や俺の家族を抹消するんだな」
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