7 令和の手裏剣
「手裏剣とか使うの?」
「まぁ現代風に形を変えて」
露骨な話題逸らしではあるが聞きたかった話の一つに、茜部はフラットな顔を崩さずに答えてくれる。
「手裏剣が必要な場面って思い浮かぶ?」
「ん~~……そう言われるとパッと思いつかないな。銃とか現代兵器に比べるとスペック的に微妙そうじゃない?」
「って思うよね~~」
言いながら茜部はどこからか
持ってはいるのか。てか今どこから出した?挙動の端々がちょいちょい心躍るな。
彼女がくすんだそれを適当にぴっと放ると、高速で回転しながら宙に浮いた。
「え、ドローン?」
「そうそう」
回転しながら浮いているそれは手裏剣というよりはプロペラのようである。が、よく見るドローンの意外にうるさいホバリング音はなく静音、本体が薄く小さい上にくすんだ色合いが相まって目立ちにくい。
え、すげぇ。隠密のやつじゃん。
「暗器も科学技術の発展に伴って色々形を変えてるのよ」
言いながら茜部は浮遊する手裏剣には目もくれずスマホを取り出していじりだし、手裏剣はそれに呼応するようにするっと俺の真正面へとやってくる。
「ほれ」
こちらに向けたスマホの画面には手裏剣の位置から俺を撮っているような映像が流れている。
「すげぇ、どこにカメラついてんのこれ」
「盗撮盗聴お手の物。
「令和の手裏剣スペック高すぎじゃね?」
「本当に最先端の技術は末端には降りてこないもんよ」
はぇー、一気にSF感が増した。
忍者じゃん。現代の忍者、ハイテクだなぁ。でもって、こういうハイテクなアイテムがあるなら諜報が曰く楽になるのも分かる気がする。
この手裏剣とか、夜にその辺飛んでても絶対気付かないし。
「なお切れ味」
「おわっ」
茜部が何気ない顔で取り出したポケットティッシュを浮遊する手裏剣に宛がうと、チュンっと可愛らしい音を立ててパックごと真っ二つに裂けた。
鋭っ。
えっ。鋭っ。
「やべ~~~~」
「語彙力喪失してるじゃん」
「喪失するだろこれは」
正直ワクワクしてる。
え、忍者じゃん。しかもめちゃくちゃ技術革新してて……なんだ?Japanese Modern NINJAじゃん。
「こういう便利アイテムが色々あるのよ」
「色々あるのかよぉ……」
便利アイテム色々見た過ぎる。
正直それ見たさだけで彼女と結婚したいまである。例えね。一応。
「くぅ~~~~……」
「語彙力中々戻ってこないね」
「っあぁ~~パネぇ~~……」
「IQ低そう」
驚きとワクワクでままならなくなった俺は、愉し気に見つめてくる茜部が稀に見る柔和な笑顔をしていたのを、忍者の便利アイテムに気を取られて惜しくも見逃すのだった。
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