14、第2方面艦隊、北へ!
【新暦2445年8月7日】※現地時間
連合艦隊による南エレノア海の勝利から、おおよそ2ヵ月。
そして、レントン軍のミリア小隊が苦戦する3日前……。
北洋の関門――レバント海峡へ粛々とせまる艦隊がいた。
2ヵ月ほど前に行なわれた、連合艦隊と人族連合軍との戦略会議。
そこで両軍合同による初の作戦実施が決定した。
【
北天頂(北極)にかがやく【不動星】の名を冠した作戦だ。
『北の果てにあるレバント海峡まで遠征し、北セトラ大陸に侵攻した魔王軍の背後を断つ』
これが目的となっている。
作戦の準備に1ヵ月。
6000キロの距離を海上移動するのに、さらに1ヵ月。
これでも大車輪で行なった結果だった。
地球でいえば、東京からハワイまで6000キロ……。
ハワイまで行く予定だった連合艦隊にとっても、簡単に遠征できる距離ではない。
まずレバント海峡を行き来している魔王軍の補給船を撃破する。
そののち北セトラ大陸側に上陸作戦を実施。
最初に、シルキー山脈を本拠地としている山エルフ族(レントン国所属)に接触。
武器弾薬と人族連合の
その後、上陸した部隊はシルキー山脈の北端を
大森林の手前でレントン軍と合流。
そこで最新の武器と弾薬/兵員を支給する。
山エルフと森エルフは、よほどの事がない限り共同戦線を張らない。
おなじレントン国の軍であるにも関わらずだ。
歴史的に見ても、両エルフ族は永らく別の国家だった。
レントン国として合併したのは、魔王国軍がバンドリアを制圧した直後。
つまり両軍は、それぞれの担当地域を死守することで共闘を実現したのである。
これらの事情から、【北龍星作戦】は変則的なものとなった。
連合艦隊に所属する陸軍部隊と海軍陸戦隊は、あくまで一時的な遠征となる。
彼らの任務は上陸作戦の実施と、レントン軍と合流するための地域拠点の確保だ。
レントンへの
上陸支援なら、連合艦隊が得意とする分野……。
そもそもハワイ上陸作戦のため編成された艦隊である。
先に行なわれた南エレノア海戦(迎撃戦)のほうが想定外だったのだ。
北龍星作戦担当艦隊は【北方方面艦隊】と命名された。
指揮下に第2艦隊/第2機動部隊/第2駆逐戦隊/輸送隊を置いている。
輸送隊に乗りこむのは、陸軍1個師団/海軍陸戦隊第1軽戦車大隊/第2
これに人族連合陸軍の2個軽装旅団が加わる。
上陸兵力は日本軍が14400名。
人族連合軍が16000名。
リーンネリアは地球の中世時代の文明度だ。
したがって3万の軍勢は、小規模国家の国軍総数に匹敵する。
上陸作戦として見れば
人族連合軍としても、リーン諸島を守備している半数が出撃した。
たった1ヵ月間だが訓練も積んでいる。
連合艦隊が支給した小銃その他の魔導化された近代武器による訓練だ。
彼らにすれば一世一代の大作戦となる。
しかも連合艦隊がいなければ実施できない。
現在の人族連合軍の海上輸送力では、大洋を縦断する能力はない。
それどころか、身近な南セトラ大陸へ兵力を送りこむことさえ困難な状況だ。
そこまでリーン諸島の海軍戦力は底をついていた。
まさにじり貧である。
レントンが落ちれば人族連合は
たとえリーン諸島が健在でも、後方支援してくれるレントン国とグンタ国を失えば負けが確定する。
そこで危険な賭けを承知で攻勢に出たのだ。
敵が予想できないほどの大軍を派遣。
一時的にせよ、魔王国軍をレバント海峡の西側へ押しもどす。
敵を押しもどしたタイミングで、レントン軍を一気に近代化する。
従来の弓矢を魔法付与された狙撃小銃に装備更新する。
森と山岳地帯でのゲリラ戦に特化した魔導兵器を提供。
継続的な反撃を可能にする。
ただ行って勝つだけではない。
レントン軍を近代化するのが主目的だ。
帝国陸軍部隊が1ヵ月のあいだ鍛えた人族連合軍の教導部隊を駐留させる。
あとは彼らがレントン軍を教育する。
この作戦の成否が、今後行なわれるすべての戦いの指標となる。
まさに排水の陣の戦いである。
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