10月4日 火曜日 ~2日目~ (1)
「あー。ねみぃ……」
「さっさと寝ないからだろ。おかげで僕は今日の朝ご飯、みたらし団子一本だけだったじゃないか」
「一本食えれば十分でしょう。あたしは何も食べてないのよ」
「知ってるぞ。おまえが昨日、醤油バターご飯とカップラーメンのメタボコンボ定食食ってたこと」
あたしとタゴサクは、そんな言い合いをしながらいつも通り学校へと向かっていた。昨夜は両親にバレないように帰宅することに成功し、その後さっとシャワーを浴びて夜食を食べ終わると、すでに一時過ぎだったから眠気MAXだ。
「恋虎ー、おはよー! 昨日はあんまり役に立たなかったけどお疲れ様ー」
「恋虎嬢、おはようございます。昨夜は旦那様にひっついているだけの金魚の糞でしたが、お疲れ様でござる」
「……ふぅーっ」
「嫌みもここまで来ると一周回ってすがすがしいな、珍獣ども」
あたしは突っ込むのも面倒くさくて、あくびをしながら白狼と合流した。
「白狼、おはよう。昨日はありがとうね」
「……zzz。あ、おはよう、恋虎さん。昨日は大変だった、zzz」
「ナルコレプシーか。今回は演技じゃなさそうだな」
「ナルコレプシーは、重要な会議や人生における大事な場面で発症する睡眠障害だよ。zzz」
「丁寧に説明していると見せかけて、あたしとの朝の挨拶はそこまで重要じゃないって言いたいんだな」
「被害妄想も甚だしいぞ」
「そうだよー。いくら犯人を見つけてやるって意気込んでおいて活躍できなかったからといって」
「いくら、機能を完全に使用できない某たちよりも、洞察力が無いからといって、旦那様に八つ当たりするなど甚だ理解に苦しむでござるよー」
「……へっ」
「おまえら全員、人を蔑むことにおいては朝から全開だな。活躍してないって言うなら、ゴンベエ、おまえもだからな」
「……ちっ」
「また舌打ちしたな。あたしとおまえがわかり合える日が来るのか楽しみだよ」
「zzz。ん? あれ、今何年?」
「この状況でよく時を駆けられたな。いっそその能力で一連の犯人を捜してこいよ」
「今日はツッコミがキレッキレだな。元気そうで何よりだ」
「だから眠いっつってんだろ。何回も言わせんな!」
そんなやりとりをしていると、やがて学校に着いた。校門の前では昨日と同じように馬場先生が立って生徒に挨拶をしている。あたしや白狼と違って声に張りがあり、眠くなさそうだ。大人ってすごい。
「馬場先生、おはようございます」
「小宮と大崎か。昨日はちゃんと帰ったか?」
「おかげさまで。……あの、それで例の親に連絡するという話は?」
「だからそれはおまえらの態度次第だ」
「zzz」
「自分で言うのも何だか、生徒指導部の前で平然と眠りこけるそのメンタルはめざましいものがあるな、大崎」
「あ、馬場先生。おはようございます。今日も良い天気ですね」
「曇天だこの野郎。さっさと教室に行け」
おとがめをくらうことなく、あたし達は教室へと向かった。
教室内を見る限り、みんないつもと変わらない様子だ。今日はヒナも朝から来ていて、自分の席に座って、一人で外の方をぼんやりと見ていた。
「ヒナ、おはよう」
「……」
「ヒナ?」
「あっ、恋ちゃん。お、おはよう。昨日は鞄ありがとうね」
「うん。それより何かあった?」
ヒナは明らかな作り笑いで首を横に振った。
「何もないよ。ほらっ、左手もこの通り! いてて……」
ヒナは包帯の巻かれた左手をぶんぶんと振っていたが、すぐに苦悶の表情を浮かべていた。
「無理に動かしちゃだめでしょう! 何やってんのよ!」
「えへへ。ごめんごめん」
「まったく……」
えへへじゃねぇよ。その笑顔、天使の生まれ変わりか。
それにしても、犯人は誰なんだろう。早く捕まえないと、ヒナがずっと恐怖に怯えることになっちゃう。白狼は何か分かったのかな。そういえば昨日、祠の中を見た時、白狼は異変に気付いたみたいだけど、あれって何だったんだろう。
結局あたしは。昼休みになるまでそんなことを考えながら授業を受けていた。これではスマホ獲得への道が遠ざかるばかりだ。ちゃっちゃと解決して、あたしもみんなの仲間に加わらないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます