第10話 要らないことをする文部省
垂直抗力というものがある。
例えば机の上に何かを置くと、重力が作用してその物体は机に力を与える。すると机の表面から垂直抗力という「与えられた力と反対方向で同じ大きさの力」が働き、物体を机の表面に静止させる。
私はここで引っかかった。タイムラグなしに同じ力を生み出すなどということがあるのか、どうしても許容できなかったからだ。
ここから私は物理というものが嫌いになった。
この垂直抗力、実は文部省が説明を省くために創り出した偽科学なのである。引っ掛かるのは当然だ。
実際には物体はわずかに机の表面にめり込む。机を構成する分子や原子の電磁反発力や強い力などの作用の合力がそれを止めるのだ。
間抜けな文部省は余計なことをする。
光の圧力を目に見える形にする器具がある。真空容器中に羽根車が入れてあり、羽根車は片面が白、片面が黒に塗られている。光がこれに当たると、黒い面では光子が吸収され、白い面では光子が反射され、結果として白い面の方が光子の二倍の運動量を得て、羽の白い面が押される。
だがこの器具には欠点がある。光の圧力はごくわずかなのだ。この羽車が回転するためには、回転軸が滑らかで、内部が高真空で、羽根車が非常に軽くなければならない。
そういった器具は恐ろしく高価なものになる。おいそれと量産できる価格にはならない。
そこで文部省はこれによく似た器具を作った。容器の内部にはわずかに空気が存在する器具だ。すると黒い面は光子を吸収しわずかに熱を帯びる。それに温められた空気が羽根車を動かすのである。本物の器具の逆の方向に。
理解を助けるための器具が逆の動きをする。これでは混乱が増長されるだけだ。
間抜けな文部省は実に余計なことをする。
他の省庁に比べ文部省には悩みがあった。他の省庁に比べてOBたちに金ヅルがないのだ。だから彼らはサッカーくじを始めた。
つまり子供たちにギャンブルは悪いことだと教育するべき存在が、ギャンブルの胴元を始めたということだ。
間抜けで欲深な文部省は実に実に余計なことをする。
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