第7話 LHCの脅威
LHCスーパーコライダーは素粒子の挙動を調べるための超巨大電磁加速実験装置である。
素粒子は顕微鏡でも見えない極微の存在だが、超高エネルギー領域での粒子衝突の際にはその存在の尻尾とでも言える現象を見せる。その尻尾の形から素粒子の本当の形を予想するのが目的である。
もっとも小さいものを見るためにはもっとも凄いエネルギーが必要になるというこの逆説的な仕組みは非常に面白い。
世界は質の悪いジョークに満ちている。
さて、LHCの実験の際に二千万分の一程度の確率で量子バンチというものが生成される可能性がある。一度これが生成されれば地球は成長するブラックホールに飲み込まれることになる。
つまりはまあ、地球の終わりだ。その上に暮らす人類も一緒に。
だがそれでもLHC実験は飽きもせずに繰り返されている。
つまるところ、科学者の知識欲のために世界中の人々の命が賭けられているのである。世界の人々には何の同意も無しに。
もっとも知識欲とは言うが、その実は自分の理論を認めてもらって有名になり、研究費を手に入れるという物欲名誉欲なのであるから質が悪い。
その意味はつまり、何があろうが彼らは絶対に止めるつもりは無いということになる。
世界中の人々の大部分は自分たちの命が勝手に賭けのチップに使われていることを知らずに、日々を過ごしている。
今日も彼らはLHCという名の地獄のルーレットをぶん回している。
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