第6話 それでも人は空を飛ぶ

 以前、初の日本人宇宙飛行士が出たころ、テレビの番組で次のような企画が行われた。

 文部科学省や大手航空機製造会社の技術部に次のような問題を出したのだ。


 「この模型飛行機を宇宙の無重力空間内で飛ばした場合どのような軌道を描くでしょう」


 航空力学を正しく理解していれば答えは簡単だ。主翼と尾翼の役割および楊力の作用を勘案するだけのこと。

 まず最初に飛行機は主翼の揚力で上昇する。この過程で、尾翼の揚力のカウンターバランスとなる尾翼部の重力が無いため機体は下方向に向く。最後に空気の抵抗を受けたことにより、今度は機首を下げながら前進して落下軌道を描く。

 恐ろしく単純だ。

 驚くべきことは三つの部門に聞いた結果、別のものが三つでてきたこと。つまり航空機関連の大御所たちが全員別の答えを出したのだ。

 正解は一つのみ。詰まるところこの航空力学の大御所の内二つは間違って理解していたのだ。


 大笑い。


 正しく科学技術を理解している部門の方が少ないというのは恐ろしいことである。

 ではこのような体たらくでどうして飛行機は墜落しないのか?

 それは航空機シミュレーションのお陰である。技術者が設計した飛行機は最後にはこのシミュレーションを通して挙動を確認される。これをパスするならば少なくとも墜落することはないと保証される。

 今までどれだけの設計者がシミュレーションの結果を見て冷や汗をかいたことか、想像に難くない。


 実はこの航空機シミュレーションには一部にバグがあることが判明した。

 そう、大型旅客機が謎の墜落を起こした直後のことである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る