第5話 人は空を飛ぶ
飛行機がどうして空を飛ぶのかは謎である。
ネットではよくこういったデマを見かける。
そんなとはない。飛行機の揚力の仕組みは良く知られている。だがそれを一般の人に教える際にウソを教えているためだ。
よく使われるのはベルヌーイの定理であり、これは翼の上の気流が速くなることで気圧が下がり吸い上げられるという説明である。ほとんどの揚力の説明にこれが使われる。
だが、翼があればその上下で自然に気圧差が生じて吸い上げられるという説明におかしいと思う人がいないのは不思議である。
ここで思考実験をしてみよう。
航空機を包む大きな空間を考えると、その空間全体が落下しない条件は重力制御を除けば二つしかない。
一つは空間内の重量が空間を占める同じ空気の重量より軽いか等しい場合。これは気球などで見られる浮遊の原理である。
もう一つは反動推進で、空気を下に向けて噴き出すことで重量を支える方法である。
実際に航空機の翼は翼の上の気流を下側に偏向するように作られている。つまり気流を下に向けた反動で飛んでいるのだ。翼端乱流で気流が翼から剥がれるとこの効果は消滅し、航空機は墜落する。
翼の上下の気圧差はその結果生じる現象で、つまりはこれは結果であり原因ではないのだ。
実はこのことに触れている文献はマイクロソフト・フライトシミュレータのマニュアルに出てくるアメリカの飛行教習所の教官の言葉のみである。彼は『飛行機は翼で空気を叩いてその反動で飛んでいる』と述べている。やはり長い間飛行機に触れている人間は直感的に理解するのだ。
その他の人間がかならずベルヌーイの定理が~と言うのは、まさに愚か者の帝国そのものである。
翼の後ろに水平の長い板をつけて、気流が下に偏向しないようなものを作ればこの事はすぐ分かる。こうして作られた翼でも翼の下側の気圧は翼の上の気圧よりも高くなる。だが翼の上の面積の方がその分大きくなるので、受ける圧力は上からも下からも同じものになる。つまり飛ばないのだ。
このように原因と結果が近接している場合、その因果関係を逆に理解してしまうことは科学の世界では多々あるのだ。それは科学者でも同じで、個々人でも物事の理解の深さには大きな差があるのが見て取れる。
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