第2話 呪いのテレビ

 そのテレビは呪われていた。


 電源を入れなくても夜中にブラウン管がぼんやりと青く光るのだ。

 その光に手を翳すと、手の骨が透けて見えた。この不思議な光景に人々は驚愕した。


 やがて誰かがその秘密を解きあかした。


 ブラウン管の仕組みは電子管から発射された電子ビームに磁場をかけてその軌道を曲げ、蛍光塗料が塗られたブラウン管の前面にぶつけて発光させるというものだ。電子は軌道が曲がる際に過剰になったエネルギーを捨てるために光子を放射する。これが放射光と呼ばれる現象である。そしてその光子はかなりのエネルギーを持っていたため、X線領域に所属することになる。これを制動X線と呼び、歯科などで一般的に使われているX線撮像装置でも使われている。

 これを防ぐために電子ビームが曲がるブラウン管の根本には鉛のシールドが設置される。

 このテレビには設計ミスで鉛の遮蔽材が入っておらず、長い間の使用により、テレビは放射性物質の塊に変じていたのだ。


 教訓:テレビの見すぎは体に悪い。

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