第21話 幼馴染以上言いなり未満?
夕食はかなり豪勢で、残したら失礼だと無理に詰め込んだせいで腹がかなり脹れてしまった。
そんな苦しさを抱えつつ、「泊まって行かれては……」と言う
「着替えの準備もしてないからね」
「それならまた私の服を……」
「それだけはダメ」
「……そうですか」
しゅんとする彼女に胸が痛まない訳では無いが、また囲まれて顔を弄られるのは御免だ。
最後に「また今度、しっかり予定を立てて来させてもらうよ」と言うと、乃愛は嬉しそうに笑いながら「是非!」と手を振って見送ってくれる。
それからの帰り道。隣を歩く
「本当に泊まらなくて良かったの?」
その言葉を聞いて、初めから自分は帰ると言っていた彼女が遠慮してくれていたのではないかなんて考えが過ぎる。
秋葉は口うるさいが、それはつまり気が回るということだ。気を遣ってくれていた可能性も十分にあり得るだろう。
そんなことを考えた
「秋葉を一人で帰す訳にもいかないからね」
「……何よ、あなたより力は強いわよ?」
「狙うのが僕みたいなのばかりなら、そもそも心配なんてしてないよ」
「それもそうね」
なるほどと頷く彼女は、「慧斗が居れば囮にできるものね」なんて言って意地悪な笑みを浮かべる。
そんなことをしようだなんて思っては居ないのだろう。「お役に立てるなら本望」と返したら、「苦しゅうない」だなんて言って胸を張られた。
けれど、彼女はすぐに姿勢を元に戻すと、短いため息を零して呟いた。
「……でも、少し意外だわ」
「何が?」
「私のことを心配してくれることがよ。だって、色々と嫌われても仕方ないことをしたから」
「あ、そういう感覚はあったんだ」
「当たり前じゃない!」
秋葉は人差し指同士をツンツンと突き合わせながら「忍び込んだし……」なんて言うが、そんなことを言えば慧斗だって同じだ。
「秋葉こそ、僕にスカートめくられ続けたのに離れなかったでしょ?」
「……確かに」
「結局、幼馴染は幼馴染だからね。ちょっと嫌なことをされても変わらないんだよ」
「そうなのかもしれないわね」
いい感じにまとめようとしたものの、「まあ、最初の頃は本当に嫌だったけど」と目を細められると返す言葉も見つからない。
それに関してはもうやめたからいいじゃないかと主張しても、それとこれとは別だとぶった切られてしまった。
「そもそも、今の私はスカートめくりをして欲しいって言ってるわけだし」
「それが意味分からないんだけど」
「私がして欲しいって言ってるんだから、喜んですればいいじゃない。減るもんじゃないし」
「それ、そっちが言ったらお終いのセリフだよ」
冗談めかしてツッコミを入れてみるが、どうやら向こうは話している間にスイッチが入ってしまったらしい。
慧斗にしか頼めないだとか、見られてもいいのを穿いてきてるだとか、よく分からない誘い文句を口にしながらスカートをヒラヒラ。
こんな誘惑に負けられない彼は必死に拒もうとするが、最後にはやっぱり例のセリフが飛び出してきてしまった。
「そこまで言うことを聞かないってなら、ASMRのこと口を滑らせちゃうかもしれないわね」
「それだけは……」
「だったら聞けるわよね?」
「え、えっと……こ、ここまで脅されたら秋葉のこと嫌いになるかもしれないよ?」
「私、信じてるの。慧斗が変わらないって言ってくれたさっきの言葉」
「ぐっ……」
まさか、先程のセリフが自分の首を絞めるだなんて思ってもみなかった彼は、ついに反論のための言葉を詰まらせてしまう。
その隙を見逃さなかった秋葉は口元を緩めると、怪しく目を細めながらこんな提案をしてきた。
「それじゃあ、今日のところはスカートめくりは諦めてあげる。その代わり別のお願いを聞いて」
「内容によるけど……」
「選り好み出来る立場なのかしら」
「……き、聞かせて頂きます」
やっぱりこの幼馴染とは縁を切った方がいいのかもしれない。頭ではそう思いつつも、結局は出来ないのだろうなと心の中でため息を零す慧斗であった。
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