第13話 アメリカとお金持ちは全てが大きい
両開きの大きな扉の前で足を止めた彼女は、コンコンとノックをしてから中にいる人物に声をかけた。
「お父様、
『……入ってくれ』
聞こえてきたのは重々しい男の人の声。扉一枚挟んでいても、体の中心に響いてくる。
慧斗たちは「失礼します」と言いながら入っていく乃愛に続いて入室すると、少し縮こまりながらお辞儀をした。
確か乃愛の父親は大企業の社長さんだと言っていたはず。こんな大きな家を持てるくらいなのだから、かなり迫力のある大人なはずだ。
その予想はある程度当たっていたようで、大きな机に向かっていたダンディな髭の彼はゆっくりと立ち上がってこちらへとやってきた。
「
「
「
「乃愛から聞いている。転校初日から仲良くしてくれているらしいじゃないか」
「はい。荒木さんはとてもしっかりしていて、僕も色々と助けられています」
「……模範的な回答だな」
「はい?」
何だか雲行きの怪しい言葉に首を傾げると、亜門さんは先程まで机の上で何かをしていた紙を持ってきて差し出した。
一体何かと中身を確認してみると、上から順番にいくつも質問が書かれてある。
その全てが乃愛に関することだ。
「これから君が乃愛に相応しいかをテストしよう。まず第一問!」
「ちょっと待って下さい、どうしてそんな……」
「乃愛の誕生日はいつだ!」
「し、知りませんよ!」
「2月15日だ、そんなことで相手が務まるか!」
「相手ってなんのことですか?」
「第二問! 乃愛の身長は―――――――――」
「お父様、いい加減にして下さい!」
あまりの強引さにあわあわとする慧斗を見ていられなかったのだろう。
乃愛は暴走する父親の頬を平手打ちすると、腕を組みながら両頬を膨れさせた。
「乃愛、お父さんはお前を思ってだな……」
「頼んでいませんし、慧斗さんはお友達です! 勝手にパートナーとしてのテストをするなんて、慧斗さんに失礼ですよ!」
「うっ……」
娘に本気で叱られる父親というのはこんなにも目も当てられないものなのか。
彼はそんなことを思いつつ、「わ、悪かった……」と後ろ頭をかく亜門さんの謝罪を素直に受け入れた。
「お父様は私のことになると少々熱くなってしまうようで。本当にごめんなさい」
「大丈夫だよ。それに、友達として知っておくべきことを知らないことも分かったから。亜門さんには少し感謝しないとかな」
「慧斗さんはやっぱりお優しいですね。カッとなってしまった自分が恥ずかしいです」
「僕のために怒ってくれたのは嬉しかったよ」
「えへへ、本当ですか?」
嬉しそうに笑いながら後ろ頭をかく姿を見ると、やっぱり目の前でいじけているダンディ(?)な大人の娘なのだなと感じる。
顔の方はきっとお母さんに似たのだろう。あったことは無いが美人に違いない。
「いちいちイチャつくのやめてもらえる?」
「そんなに不機嫌になってどうしたんですか? もしかして、私と慧斗さんが仲良くしているのが羨ましいとか?」
「そ、そんなわけないでしょ。話が進まないから、後にしなさいって言ってるの」
「ふふふ、そういうことにしておきましょう」
何だか不満げな秋葉に促され、三人は落ち込んでいる亜門さんをそのままに退室。
次は乃愛がいつも使っている御屋敷の中の色々な施設を見に行くことになった。
自宅に施設と呼べるものがあると聞いた時点で十分に驚いたつもりだったのだが……。
「こちらがボルダリングルーム、あっちがレコーディングスタジオ、そこの扉の先はシアタールームになっています」
「「す、すごい……」」
実際に回転する壁や数百万もするマイク、見上げるほど大きなスクリーンを見た時には、その数倍は目を丸くしたことは言うまでもない。
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