どうやら僕は幼馴染の双子から【溺愛/殺害予告】されているらしい

プル・メープル

プロローグ

 この物語の主人公、遠山とおやま 凛斗りんとはつい最近高校二年生になったばかり。

 学校生活も陽キャと違って平々凡々ではあるが、大した不満を抱えることなく順調に進んでいる。

 今日も今日とて学校に行きますかと支度を済ませた彼は、カバンを持って家を出たところでいつも通り二人組の女の子と出会った。


「……また朝から嫌な顔を見ちゃったわ」

「まあまあ、そう言わずに。おはよう、凛くん」


 ゴミでも見るような目でこちらを睨みつけてくる赤い髪留めをした方が添木そえぎ 千夏ちなつ

 ニッコリと天使かと見紛いそうになる笑顔で挨拶をしてくれる、青い髪留めをした方が千冬ちふゆ

 正反対な二人だが彼女たちは双子であり、同時に家が隣同士ということで昔から関わりの多い凛斗の幼馴染でもある。

 見ての通り、片方からは猛烈に嫌われているようだが。今ではそういうものなのだろうと、千夏と距離を縮め直すことは諦めている。


「千冬、今日って何か宿題あったっけ?」

「国語で漢字の書き取りがあったかな。もしかして忘れたの?」

「……そうとも言えるかもしれない」

「凛くんにしては珍しいね。私のノート見せてあげよっか?」

「恩に着るよ。お礼はまた今度するから」

「気にしなくていいのに」


 肩を寄せながら楽しそうに話す二人に、千夏は強引に間に入ると凛斗を睨み付けながら「しっしっ」とあっち行けのジェスチャーをする。

 いつもこうだ。彼女は千冬と仲良くすることが気に入らないらしく、話が盛り上がってきそうな時に邪魔をしに来る。

 正直、千冬と今以上に親密になりたい彼にとって、千夏の存在は鬱陶しいと感じることもあった。

 それでも千冬本人が千夏にくっつかれると嬉しそうな顔をするから、グッと堪えることが出来ている。可愛いは正義とはよく言ったものだ。


「凛斗のことなんて放っておいて、さっさと学校に行くわよ」

「もう、千夏ちゃんはせっかちだね」

「そんなことないから!」


 腕を引かれて歩いていく後ろ姿に、今日はこれ以上の会話は難しそうだと追いかけるのを諦める。

 千夏が振り返りざまにべーっと舌を出してきたから、お返しに同じことをしたら口パクで『ばかみたい』と言われた。

 確かにあの双子の顔は整っているが、バカみたいになっていたのは同じだと言うのに。……まあ、千冬と同じ顔なだけあって可愛くはあったけれど。

 そんなことを思っていると、どこかの影から見ていたのだろう。同じ制服に身を包んだ金髪の男子生徒がニヤニヤしながら近付いて来た。


「やあやあやあ、凛斗くんや。いつも通り朝から千夏ちゃんとお熱いね」

「あれのどこがそう見えたのか詳しくお聞かせ願いたいね。僕には冷たいようにしか見えなかったけど」

「嫌よ嫌よも好きのうちって言うじゃん? あんな可愛い子に冷たい目を向けられるのも、一種のご褒美だと思えば幸せだろ?」

「……アッキーってドMだったんだ」

「いや、別に俺は喜んでねぇよ?!」


 アッキーこと秋山あきやま てるは、凛斗言葉に若干動揺しつつもしっかりと横に並んで着いてくる。

 秋山は金髪イケメンが故にチャラそうに見えるが、ところがどっこい彼女が欲しいと言いながら作る素振りも見せない陰キャ仲間なのだ。

 そんなギャップもあって凛斗と仲良くなるまでそう時間はかからず、二年生になってもこうして仲良くしている。

 最近はやたら千夏と凛斗をカップリングしようとしてくる節があるため、その話の処理が面倒になってきてはいるが。


「話してると学校まであっという間だな」

「一人で歩くよりは短く感じるね」

「早く昼休みにならねぇかな」

「まだ始まってもないって」


 そんなこんなで学校に到着した凛斗は、こんな平穏な日常がずっと続くものだと思っていた。

 しかし、数日後に彼はミミズも震え上がるような出来事にに巻き込まれていくことになるのだけれど……それはまた次のお話。

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