(5)魔法のテスト(その2)

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 狙うべきは真正面に置かれている測定器の板の中央。

 測定器がどのような構成になっているかは分からないので、出来る限り中央を狙った方がいいと判断。

 使う魔法は、ルーカスの知る世界ではレールガンと呼ばれている物体を電磁気力によって打ち出す。

 打ち出す物体は、土魔法を使って小さな球を作り出している。

 複数の魔法を高いレベルで制御するという複雑な過程を経て使える魔法ではあるが、ルーカスにとってはもっとも得意とする魔法になる。

 ルーカスに多少なりとも科学的な知識があったからこそ出来るようになった魔法だ。

 ルーカスがその魔法を使って驚かれることはあっても、他の誰かが使っているところを見たことは無い。

 見た目のインパクトもあるし試験官であればその魔法の難易度もきちんと理解してくれるだろうと考えて、敢えてその魔法を使うことに決めた。

 

 ――ズッバギャァァァァァン!!

 

 ルーカスがその魔法レールガンを打った次の瞬間、会場中に盛大な破裂音が響いた。

 幸いにして測定器自体は壊れていない――というよりもルーカスが壊れないように調整して魔法を打っていた。

 本来であれば攻撃(打撃?)力となるエネルギーの一部を音に転化したため、思った以上に大きな音になってしまっていた。

 ルーカスも初めてやったことなので予想外の大きさになってしまったが、試験で見せるパフォーマンスとしては結果的に良かったと思えた。

 現にルーカスの魔法を見ていた試験官や受験者だけではなく、他の会場にいた全ての人族の視線が集まっていた。

 

 他の受験者は、一度目の魔法を打ってから次の魔法を打つように指示があったのでそれを待っていたルーカスだったが、いつまで待ってもその声がかかることは無かった。

「――ええと、次も打っていいのでしょうか?」

 仕方なくルーカスから問いかけると、試験官たちは揃ってハッとした様子になりお互いに顔を見合わせていた。

「す、少し待ってくれるか? 測定器の様子を見るから」

 試験官の一人がそう言いながら慌てて測定器へと近寄って、損傷がないかを確認し始めた。

 他の試験官は、彼らが座っている席に用意された端末に表示されているらしい測定結果を見て何やらひそひそと議論をしている。

 

 時間にすれば数分ほどだったが、測定器の様子を確認した試験官が席に戻ると他の試験官と一言二言言葉を交わしてからルーカスに向かって言った。

「――一応確認するが、次も同じ魔法を使うつもりか?」

「そのつもりですが、測定器に問題があるようであれば変えることもできます」

「それは有難いが……いや、やめておこう。君の実力であれば、他の魔法を使っても同じ結果になるだろう。もう次の会場に向かってもらって構わない」

「ええと……確認しますが、回数が少ないことによる減点などはありますか?」

「ハハハ、心配するな。そもそも他の受験者に複数回打たせているのは、魔法の安定性を見るためだ。君の場合は全く心配がなさそうだから、それによって点数が減ることはないな」

「そうですか。それでは、仰る通り次の会場へと向かいます」

 少しやり過ぎたかと内心で冷や汗を流していたルーカスだったが、試験官たちの様子はむしろ好意的に見えたので安心していた。

 もっともルーカスの内心とは裏腹に、試験官たちはそれどころではなかったのだが少なくともそれを表に見せることはなかった。

 

 そんな試験官たちの考えなどつゆ知らず、次の会場へと向かおうとしたルーカスは、次の受験者である隣に座っていた男子が自分を睨みつけていることに気が付いた。

 その視線がどういう意味を持っているかは分からなかったが、どう見ても好意的とは真逆の表情であることは間違いない。

 大方自分よりも強い魔法を使われて苛立ったのだろうと当たりを付けたルーカスは、その男子を無視してそのまま次の会場へと向かうことにした。

 幸いにしてその男子もルーカスに声をかけて来ることはせず、ただ睨みつけて来ただけだったのでその場はそれだけで終わった。

 

 そしてルーカスが次の会場に入った時には、その男子の睨みなどすっかり頭から消えていた。

 ルーカスにとっては次の試験のほうが大事なことで、しかもその会場にはその男子が来なかったので忘れてしまったのも無理はない。

 次の会場は三十人程度が入ることができる大きさの教室で、ルーカスの後にもう一人の受験者が来たことでちょうど締め切りになったのだ。

 室内にいた受験者は十五人ほどだったが、少し余裕をもって会場が作られていた。

 

 それぞれの受験者は約一メートル幅の少し広くなっている机と用意された椅子に座っている。

 その机の上には、一辺十五センチくらいの立方体になっている魔道具らしきものが五つ置かれていた。

 次の試験はその立方体を使って行われるということは分かるが、何をするのかまではルーカスにも見当がつかなかった。

 幾つか予想できることはあるもののどれも魔法の試験としてはありそうな作業だったので、一つに絞れなかった。

 

 そうこうしているうちにこの部屋での担当者なのか、試験官が三人入ってきた。

 その内の一人が試験内容の説明を始める。

「これから他の二人が新たな五つの魔道具を配ります。皆さんは元から置いてあった魔道具を使って、配った魔道具の解呪に挑戦していただきます。中にはが入っていますので、それを取り出せれば成功となります。解呪のやり方など分からないという方もいると思いますが、すぐに諦めずにできる限り挑戦してみてください」

 その試験官が説明している最中に、他の二人が部屋を出たり入ったりしながら受験者の机に別の魔道具を配り始めていた。

 ルーカスのところに来たのは最後の辺りだったが、部屋に入ってきた順番に配っていたらしいので特に問題はない。

 受験者の中には早く自分のところに来て欲しいという表情を浮かべる者もいたが、ルーカス自身は新しいパズルを解く気持ちになっていたので焦りよりもワクワクの方が大きかった。

 

 自分のところに試験官が来て新しい魔道具が配られると、ルーカスは早速それらを手に取って観察し始めた。

 元あった魔道具が五つあって、新しく配られた魔道具も五つある。

 一つ一つの魔道具を手に取って確認していると、すぐにとある一つの組み合わせが鍵と鍵穴に対応していることに気が付いた。

 単純に考えればそれぞれに対応する魔道具があるということなのだろうが、これまでの試験の内容を思い浮かべたルーカスはこの試験がそこまで単純だとは考えていない。

 既に見つけた組み合わせもほんの少しだけ魔法を使って調整すれば鍵を開けられることはわかったが、それに飛びつくことはせずに念入りに観察を続けた。

 

 ルーカスがしばらく観察を続けていると、どうしても解けない組み合わせが発生することに気が付いた。

 パターンを幾つか変えてみても一つか二つが何をどう変えても、それに対応する鍵穴を見つけることが出来ない。

 より正確にいえば鍵穴と鍵のパターンを同時に無理やり変えれば開けることが出来るが、とても試験時間内に終わらせることができない。

 そんな問題を学校側かが用意するとも思えず、何か別の角度からアプローチする必要が出て来た。

 

 他の受験者たちを見てみれば、解呪が得意な何人かの受験者が幾つかの解呪に成功しているようだがやはり残りのところで躓いているように見えた。

 解呪が得意ではない受験者は、最初から諦めて試験時間が終わるのを待っている。

 頭をリセットするために周囲を確認していたルーカスだったが、ここでとあることに気が付くのであった。




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