(21)発見そして発見

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「本当にあるとは……」

「こ、こんな簡単に……」

「さすがマスターです」

 コントロールルームに設置されたモニターに映し出された光景に、桃李、芙蓉、藤花が三者三様の反応を示していた。

 モニターに映し出されているのは探していた条件に合う島で、半日ほどで見つけ出すことが出来ていた。

「欲を言えばもう少し小さい方が良かったけれどな。時間的にもエネルギー的にもここらで妥協するとしようか」

「あと半日程度であればまだ余裕はありますが、よろしいのでしょうか?」

「余裕は余裕として取っておきたいからなあ。変に条件にこだわるよりも、見つけた島で調整していく方がいいだろう」


 ルーカスの説明を聞いた藤花は「畏まりました」と素直に引き下がっていた。

 藤花は基本的にルーカスのやることに反対しないので、今後の予定のためにも念のため確認しておいたというところだった。

 そんな藤花とは対照的に、桃李と芙蓉は未だに驚いたままでいる。

 島を探し始めてたった数時間で見つけ出したことが、よほどショックだったのだろう。

 

「おーい。いつまで驚いているんだ? さっさと島を確保して王国まで戻ろう」

「な、何故、そんな当たり前のように!? 普通はこんな簡単には見つかるはずがないz……はずです!」

 直前までぞんざいな態度を取っていたはずの桃李があからさまに態度を変えたことに、ルーカスは思わず笑ってしまった。

 ルーカスとしては基本的に丁寧とは正反対の探索者と毎日のように関わっているので、桃李の態度を咎めるつもりはなかったのだが。

「そうは言ってもな。見つかった以上は、結果が全てだ。それに今回は完全に浮遊球の能力にも助けられているからな」

「浮遊球の能力ですか。詳しく聞いてもよろしいですか?」

 ルーカスの答えに興味が引かれたのか、今もあまり驚いた様子を見せていない藤花がそう聞いてきた。

「普段は帆船で探しているからもっと日数がかかるが、浮遊球は比べ物にならないくらいに早いからなあ。いつもは時間がかかるところを速さで補った感じだな」

「そういうことでしたか。納得いたしました」


 エルモたち探索者が乗るような船は、魔法がある世界なのでルーカスの知る世界の帆船よりも早く移動することは出来るがそれでも帆船は帆船でしかない。

 さらに魔法により恩恵も弱風や無風の状態を多少改善できるという程度なので、そこまで速度そのものに違いがあるというわけではない。

 それに対して浮遊球は独自のエネルギーを使って移動することができるので、ジェット船やそれ以上の速度でこの世界を駆け抜けることが出来る。

 その速度とルーカスの特殊能力(?)を利用して数時間で島を見つけることが出来たというわけだ。

 

「いやいやいや! 藤花も何を落ち着いて会話をしていやがる! マスター、こんなことは普通じゃないぞ! ……ないですよ」

「別に無理して口調変える必要ないぞ。あと漂っている資源を見つけることについては、別に俺一人だけの能力ってわけじゃないから」

「そうなのですか?」

 ルーカスの説明に、落ち着きを取り戻したらしい芙蓉が興味深げに聞いてきた。

「ああ。俺も話で聞いているだけだが、少なくともあと二人はいそうだと。いるのは他国らしいけど。既に現役を引退した人とか含めるとそれなりにいるんじゃないか?」

「そうなのですね。知りませんでした」

「君たち管理者が知らないのは、王種を得た人の中にたまたまいなかっただけじゃないか? ――なんて偉そうに言っているが、本当に今回は運が良かっただけの可能性もあるからな。外れていた可能性もあったから百パーセントではないことだけは覚えておいて欲しい」

「畏まりました。今後も探索をする場合は余裕を持って計画を立てることにいたします」

 藤花がそう締めくくると、芙蓉や桃李も真剣な顔になって頷いていた。

 

 その様子を見てこれなら大丈夫かと判断したルーカスは、これからの予定について話すことにした。

「とりあえずこれから向かう先は予定通り王国だな。ただ時間的余裕があるみたいだから少し寄り道を考えている」

「寄り道ですか。どちらへ向かうか伺っても?」

「最初は先にエネルギーとして使えそうな小島を見つける予定だっただろ? 島を見つけるよりは簡単だから恐らく多少周り道すれば見つけられると思う」

 

 浮遊球を動かすためのエネルギーが浮遊珠であることは変えようのない事実だが、世界を漂っている大小さまざまな島から得られる資源も間接的・・・にエネルギーにすることができる。

 例えば藤花たち管理者が口にする作物などを作るための土壌は、普通は浮遊球の純粋なエネルギーから生み出している。

 それを島から直接得た土で代用することによって、使用するエネルギーを抑えることが可能になる。

 何よりも先に中継港となる島を探すことが優先だったために後回しにしていたのだが、時間的な余裕ができたことで浮遊球のエネルギー代わりになりそうな小島を探すことが次の目的というわけだ。

 

 今回はルーカスがコツコツと時間を見つけては端末から得た情報が役に立った。

 ルーカスの話を聞いた三人の反応も良かったことから、見つけようとしている小さな島が今回失ったエネルギーの代わりになることは確定している。

 実際に島を見つけられるかはまだ分からないが、ルーカス的には七割程度の確率で見つけられると考えている。

 ただ見つけた島がエネルギーの代わりとなるかは、見つけた島をきちんと確認してからでないと分からない。

 

「――というわけで、次は小岩を見つける旅に出発!」

 

 ルーカスがあっさりと目的の島を見つけたからだけではないだろうが、その掛け声に芙蓉と桃李がきびきびと動き出した。

 藤花だけは出会った当初から忠誠心(?)が振り切っていたので、態度は変わっていない。

 二人の様子を見ていたルーカスは、棚ぼた的に多少なりとも忠誠心を上げるきっかけを作れたことで内心でホッとしていた。

 恐らく今後も長い付き合いになるであろう二人の心を掴むことができたのは、もしかすると今回の短い探索で一番の収穫かもしれない。

 そう考えると浮遊球に貯まっていたエネルギーを浪費してしまったことも無駄ではなかったといえるのかもしれない、と。

 

 そしてルーカスの宣言から一時間後には、目的だった小岩の発見ができた。

 王国に向かって直進するところを多少逸れた道を通ってきたが、そこまで大きくそれて来たわけではない。

 その寄り道分にプラスして今回の行程分の三割程度は回収できそうだと藤花から報告を聞いたルーカスは、とりあえずこれ以上の結果を求めるのは諦めて王国へ戻ることを決定した。

 探せばまだまだ小岩程度なら見つけることは出来るだろうが、そもそも時間的余裕があまりない。

 

 ルーカスは王国の学校に通うことが決まっていて、その前に行われる試験の勉強は出来るだけしておきたいのだ。

 本来ならまだまだ子供で勉強なんてと放り出すこともあり得るところだが、ルーカスには以前の人生の記憶もあるのでその辺りは真面目にこなす分別がある。

 ルーカス自身は特に頭の出来が良いとは思っていないが、他者から学べる時間が作れるという大切さを知っているので手を抜くつもりはない。

 エルモも管理者たちも既にそのことをルーカス本人から聞いているので、勉強の時間を邪魔することはなかった。

 さらに当人の努力と子供の頭の柔軟さが合わさったお陰か、ルーカスが思ってもみなかった結果を出すことになる……のだが、それを知るのはもう少し先のことである。

 

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※1:この後の話で説明される……はずですが、島を抱えた分行よりも帰りの方が最高移動速度は遅くなっています。

 島を抱えても速度を元に戻す方法もありますが、それについても後程説明予定です。……多分。


※2:これにて第一章は終わりになります。

 第二章(1)の投稿は明日ですが、それ以降は一日おきの更新になる予定です。



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m(__)m

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