第3話
「陛下、反論しても宜しいでしょうか?」
「うむ、許可しよう。」
「ま、待ってください父上。」
「後にせよ。」
「証拠は揃っているではありませんか!罪人の言うことなど聞くべきではありません!」
おお、反論すら許さないって世界が自分中心に回ってると思ってるみたいね。
「では、冤罪だったらどうするのだ?」
「は?」
「証拠が捏造で、その者が善良な者であった場合、その責任はどうする。そんなことが横行すれば、この国から善良なそして優秀な技術を持つものたちが他国へ流出するだろう。そしてこの国は衰退するな。それに、余がこの件を裁いておる。余が許可を出しておるのだ。ということで、エリシア嬢の反論を聞こう。」
真っ当な理由で陛下に釘を刺された殿下は口をパクパクさせて絶句してるわね。とりあえず反論としましょうか。
「許可をいただきありがとうございます。まず最初に、殿下が仰っていた3名は私の派閥ではありません。むしろ付きまとわれて迷惑していましたわ。」
私の発言に「えっ」と言う言葉が3人分あがった。自分が私の友人だと思っていた令嬢たちね。
「そ、それは、お前自身に罪が及ばぬよう、蜥蜴の尻尾切りの為に言ってるだけだろう。」
「はー。蜥蜴の尻尾切りなら、その落書き?が私の筆跡だとおかしいでしょ。」
「うっ。」
「それに、私の派閥にはそのようなことをしない方を選んでますわ。んー、そうですわねぇ、私の派閥の主要メンバーを紹介しておきましょうか。」
「おお、それは知りたいな。教えてもらえるか?」
おっと、陛下の方が気になって聞いてきましたわね。そりゃあ王太子妃の派閥の中心人物は気になるわね。
「はい。まず、ゴディアス伯爵令嬢フレイヤ様、フェザー侯爵令嬢ネフィリス様。」
「「なっ!!」」
二人して声をあげてしまったマキシム様とカインズ様。まあ仕方ありませんわね。出てきたのはお二人の婚約者ですから。
フレイヤ様とネフィリス様は私の後方に並ぶ。
「そして――――。サティリア殿下。」
私の声に姿を現す王女殿下――――。王太子殿下の妹で、王位継承権第2位の御方である。
「おお、サティよ。来ていたのか。」
「ええ、お父様。お義姉様の卒業パーティーという晴れ舞台。来ないはずありまえせんわ。」
図らずとも王位継承権上位が相対する事となった。
そして、この令嬢4人が公式行事を含めて、揃って並んでいることは、初めてであった。それぞれに取り巻きがおり、4つの派閥に別れていると思われていた。
「私たち4人――――まあ、私は入学してからですけど、お休みの日に交流を重ねてまいりました。学園内であまり交流していなかったのは、一人だけ学年の違う私に配慮されたからですわ。お義姉様と同じ学年だったらどれだけよかったか……。」
なぜか最後は嘆きが入ったサティリア王女の発言により、4つの派閥がしのぎを削っていると思われていたこの年代の令嬢の派閥争いが、実は1つの巨大な派閥と、僅かにいる派閥に入れなかった令嬢の2つになっていたこと。そして、3年制のこの学園の最大5年間に卒業する令嬢がこの1つの派閥に所属しているかもしれない事実が。
「ちなみに、私たちの派閥『四つの花冠』の入会は既婚、入学前関係なくご令嬢なら入れますわ。まあ入会するには会員の推薦を執行部による調査を経てからお誘いするので、声の掛からなかった方は現状入る資格なしになっております。募集はしておりませんので、あしからず。なお、誰が私たちの派閥なのかは秘匿とさせていただきます。」
エリシアの発言に恐怖を抱く男ども。既に派閥どころかこの国を裏で操ることができる組織になっていた。しかも、派閥の人間であることを明言されているのは4人。しかも、取り巻き=派閥の人間と思われていた3人は派閥に入っていないことを明言されている。そして、別々の派閥であると思われていた4人が水面下で同じ派閥にいると言う事実が、逆に判断を難しくさせている。しかも、この場にいる卒業生、在校生の令嬢が顔を見合わせている――――すなわち、本当に『四つの花冠』に所属している令嬢たちが演技をしているのか、所属していなくて困惑しているのかがわからない状況にあった。
「と、とりあえず、あの3人とお前が関わりがないと言っても、お前がレニーの教科書に落書きをしたのは間違いない。それはどう説明するんだ?」
王太子殿下があわてて聞いてくる。そりゃあ数ある証拠のうちひとつが殿下の求めるものではなかったから焦るはずよ。ただ突きつけることをしないだけちょっと成長したのかしら。
どう反論しようか思案していると、彼女がこちらを見て、なにかを言いたそうにしている。―――――――――ここは、彼女に任せてみようかしら。
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