第2話

「では、最初の証言者は誰だ?このあとがあるので、早くしてもらうと助かるのだが。」


 陛下の声で、相談し始める首謀者3人。しかし、陛下もそこはぶっちゃけなくてもいいのに……。

 そういうことを考えているうちに、最初の生け贄……じゃない。証言者が決まる。


「まずは、メンフィス伯爵家のリタ嬢だ。エリシアがレニーにしたことを証言してくれる。」


 王子がそう言うと、令嬢が出て………………こず、暫くしてから青い顔をした令嬢が現れた。


「へ、陛下におかれてましては――――――。」

「時候の挨拶はよい。お主の目撃証言を述べよ。」

「は、はい。えーと、それなんですけど……。」


 なぜか、どもる令嬢。


「どうかしたのか?まさか偽の証言を言おうとしていたのか?」


 陛下の詰問が入る。


「い、いえ、私は、殿下にレニー様がいじめにあっているというを伝えていただけでありまして……。」

「では、その噂を言っていた人物はわかるか?その者に証言してもらおう。」

「あ、はい、それはです。」

「ぬわぁっ!?」


 マキシム様から変な声が出た。


「マキシムとは、……ああ、トルメキア卿の子息だったか。」


 陛下が思い出していると、青くなったマキシム様が陛下の前に出て頭を下げる。


「と、トルメキア公爵嫡子マキシムです。」

「ふむ、お主か。早速証言をしてもらおう。」


 そんな陛下の言葉に戸惑うマキシム様。


「と、言われましても……。」


 なかなか思い出せないマキシム様に、救いの手が差しのべられる。


「マキシム様、ほら、あの時に言ってたじゃないですか。礼儀作法の実習の時に……。」


 リタ様がマキシム様に助言する。


「…………そういえば、そんなこと言った気が……。」


 なんとなく思い出してきたみたい。


「ふむ、ならばお主が目撃者で間違いないのだな。」

「いえ、自分も直接見たわけでなく、話を聞いただけですよ。」


 陛下の質問にそう答えるマキシム様。


「では、誰から聞いたのだ。」

「カインズです。」

「なっ!?」


 マキシム様の発言に、驚愕するカインズ様。なんなんでしょう、これは。さっきから証言が又聞きしかないなんて……。


「ふむ、聞いたことのある名だな。たしかクロマキー卿の子息だったか。」

「……あ、はい。クロマキー伯爵子息のカインズです。」

「そうか、では証言を聞こう。」


 そう陛下が言うと、カインズ様は難しい顔をしました。まさか……。


「どうかしたのか?早く証言をせよ。」


 さすがに、こう同じ展開が続いているから、陛下もイラつきはじめてますわね。


「……いえ、私は目撃者でありませんので、証言はできませんが、マキシム――――――トルメキア公爵令息の言葉に心当たりが……。」


 お、これは展開が変わった?


「もうしてみよ。」

「はい。実は殿下から、最近よく会うレニー嬢がいじめにあっていると言われ、黒幕の可能性のひとつとして、エリシア様があり得るという話はしましたが……。」

「ちょっと待て、カインズ。お前が言ってただろう、エリシアがやったて。」


 おやぁ、仲違いしだしたなぁ。雲行きが怪しくなってきたみたいだね。


「ふむ、では、コルセア公爵令嬢がいじめを行ったという証言はないのだな。」

「いえ、はずです。それは王太子殿下がご存知のようですので、事実かと。ただ、実行犯から首謀者がエリシア様かと推測できます。マキシムが言っていた私が言ったというのは、この推測のことだと思われます。」


 あら、私と断定していた訳じゃないのね。でも……。


「お主の言っていることがしているが、それはどういうことだ?」


 そうなのよね、カインズ様は最初に『確固たる証拠がある』と言っていたのに、今は『推測できる』となっている。これをどう説明するのかな。


「そうですね、複数の情報があったので『確固たる証拠』としてました。まあ、複数のうち2つが同じ情報だったとは想像してませんでしたが……。」


 なるほど、知らなかったで通すみたいね――――。ほんとに知らなかった可能性が高いけど。


「では、他の証言者に――――――」

「いや、いじめがあったのなら、このままそれを最後まで確認しよう。この学園では本来身分の差で差別することを禁じておる。もし身分の差を理由としたいじめ自体が問題になるからな。本件と関係有るか否か関係なく調べるのが筋であろう。ちょうど証言者もいるみたいだしの。」


 カインズ様の発言を遮り、陛下がこの証言を掘り下げることを宣言する。


「では、続けるとしよう。クロマキー伯爵子息の証言の元は誰から聞いたのであったかな。」

「は、はい。王太子殿下です。」

「……我が息子か。……クリス、前へ。」

「は、はい。」


 陛下の声であわてて前に出る殿下。


「クリスよ。目撃したのはお前か?」

「ち、父上、それが……。」


 しどろもどろになる王太子殿下。


「うむ?どうかしたのか?早く答えよ。」

「ええと……、その……。」

「ちゃんと答えよ!お前はであろう。はっきり言わんか!」

「はいっ、父上、私が見たのではなく、レニーから相談を受けただけですっ。」


 陛下の一喝でやっと答えた殿下。というか、ここまで直接の目撃者がなくレニー嬢いじめを受けた被害者まで来たんですが……。


「レニーとは、確かいじめ被害者の令嬢であったな。」

「は、はい。そうです父上。」

「ふむ、相談の内容を詳しく伝えよ。」


 当事者であるレニー嬢が嘘をついている可能性があるから、前に証言を聞いておくわけね。


「はい、レニーから聞いたのは、イシアツ侯爵令嬢メアリーとオトカツ伯爵令嬢メリッサとイアノン伯爵令嬢ディアドラから慢性的にいじめを受けていたと言う話でした。この3名はエリシアの取り巻きだと言っていたので、黒幕はエリシアではないかと……。」


 何を言ってるの、この男は。

 そう思って声を上げようとしたが、その前に陛下が確認を始める。


「レニー嬢、この話に相違はないか?」

「あ、はい、確かに私は殿下にそう相談いたしました。」


 レニー嬢はそう答えた。いじめは実際にあったみたいね。


「では、レニー嬢、どういうことをされたのか、辛いかもしれぬな話してもらえぬか?」


 陛下が優しい声でレニー嬢を気遣いながら聞かれた。


「あ、はい。そうですね、『下級貴族は道を譲れ』とか、『下級貴族のクセに殿下に媚を売るな』とか。あとは、教科書を破り捨てられたり隠されたりしました。」

「ほう、なるほどな。」


 陛下の目が座った。かなり怒っているみたいね。


「父上、他に教科書に落書きをされていたみたいです。」

「え?いえ、それは……。」


 おっと、殿下が追加で罪状を述べた。レニー嬢はそれを言うつもりはなかったみたいね。殿下はさらに演説する。


「その教科書の落書きはエリシアの筆跡でした。エリシアの取り巻きが直接いじめていたことを合わせると、やはりエリシアが主犯でしょう。エリシアとのを!そしてを!」

「え?、え?」


 おー、言い切ったな、殿下。その横でおろおろする小動物のようなレニー嬢といい対比ね。しかし、殿。ここまでとは……。

さて、反撃といきますか。

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