魔導科学(超能力/魔法)
魔力を制御する技術のことを魔法と呼び、魔具という道具を用いれば誰でも扱うことができる。そして、魔具を使わずして魔力を制御する者を超能力者と呼び、超能力者は世界に9人しかいない。また、魔法を使う人間は大きく三つに大別できる。一つは魔具を使わずに魔法を扱うことができる超能力者、二つは魔具を用いることで擬似的に魔法を扱うことができる魔法使い、三つは致死量の魔力を浴びる等のアレルギー反応を起こした副作用で魔法を行使できるようになった魔人の3種類である。また、超能力者は虹色の瞳を持つのが特徴(ただし虹色の瞳を持つ人が超能力者とは限らず、魔導粒子ユレーナが瞳孔や髪色に影響を及ぼすケースとして多数報告されている)。
魔力の正体は新たに発見された素粒子、魔導粒子ユレーナである。ユレーナは世界の遺伝子とも表現されるように、無限の可能性を内包する。それらはDNA構造とも似ており、様々な要因によってその性質を変化させる。火にもなれば水にもなり、赤にもなれば青にもなる。これらを制御することで任意の性質を引き出す技術が魔法である。魔法はフェイズシフトと同時に現れた超能力者の力をもとに開発された技術だが、未だその原理はブラックボックスとなっている。超能力者がなぜ魔具を使わずに魔法を使うことができるのか、それは現代の科学者たちにとって永遠の命題といえるだろう。一説には、魔導粒子ユレーナは宇宙を満たすダークエネルギーの正体ともされている。
魔導粒子ユレーナはカラフルな光を放つ性質を持つ。これは上述した通り、無数の可能性を含有する特徴から無常の色彩を併せ持つため。多量の魔力を含んだ雲が星雲のようにカラフルに輝く現象も、その性質ゆえである。日常生活においても色鮮やかに都会を縁取っているが、青色と赤色を目にする機会が最も多いだろう。なぜなら、安定した状態の魔力は赤と青に発色するためである。実は、虹色の魔力の発色が定まる時、その色によって魔力の状態を示していることが魔導科学では解明されている。ただし、出力する魔具を加工すれば状態に依らず発色を操作することも可能(ラストリゾートでは主流となったホログラム投影技術に用いられる光はこの性質を利用)。なお、魔人や超能力者が出力する魔力の発色は個々の適応度に依存する。稀有な例として、超能力者の暁烏澪が有するアストラルキネシスは全ての状態を扱うことができるため、彼女の場合は殆どが虹色に発光する。
・金色…非常に安定した状態。レミューリア神話では『神聖』を司る。白色とも同一視される。
・青色…安定した状態。レミューリア神話では『知恵』を司る。
・赤色…安定した状態。レミューリア神話では『正義』を司る。
・橙色…やや不安定な状態。レミューリア神話では『慈愛』を司る。
・緑色…不安定な状態。レミューリア神話では『勇気』を司る。
・紫色…危険な状態。レミューリア神話では『淘汰』を司る。
・白色/黒色…高純度かつレトロな状態。白黒の場合は非常に危険な状態。レミューリア神話では『審判』を司る。
一般的に、魔導粒子ユレーナが結晶化した金属のことはアダマンタイトと呼ばれる。アダマンタイトは魔法技術で生成できる金属であり、地上に存在する金属の中で最も高い硬度を誇る。魔力伝導率も非常に良いことから、魔具のみならずラストリゾートの建造物のほとんどにはアダマンタイトが用いられている。アダマンタイトはアダマンタイトでしか破壊できないのが通例だが、だからといって必ずしもアダマンタイトが最高硬度とは限らず、中には脆いものも存在する。こうした例外のように、アダマンタイトという鉱石については、分かっていないことも多い。
魔導科学の研究が進むに連れて、アダマンタイトは五次元空間に存在する五次元結晶体であることが明らかになったほか、四次元結晶体タキオニウム(時空間が物質化したもの)を発見するなど目覚ましい発見が続いた。このように、魔導科学は往来の科学技術とは一線を画した技術を人類にもたらし、ついに高次元へ手を触れ始めている。
基本的に魔法の強度は使用する魔具に依存する。そのため一言に魔法と言っても魔具それぞれが有する固有の効力しか発揮できない。誰が使っても平等に力を引き出せる点から、公共施設でも無理なく組み込むことができた。中でも生活魔具はデパートやコンビニでも市販されており、ライターやペアリング収納機能付き腕時計、瞬間乾燥機など生活必需品が大部分を占める。武器として使われるような危険な魔具も存在するが、大抵は暗黒街のブラックマーケットを始めとする違法なルートで流通する。魔法といってもあくまで科学技術の延長線上に過ぎず、それらは車や冷蔵庫、携帯電話のように日常の中に溶け込んでいる。
魔法技術の台頭がもたらした発明の中で、魔導暦10年現在では幻となったものが存在する。それは量子テレポーテーション技術である。指定した位置座標から指定した位置座標までを瞬間的に移動するこの技術は、テレポート装置としてラストリゾートでは公共交通手段として導入されていた。しかし、正しく転送されない不具合や事故が頻発し失踪者が出たことから、2046年の時点で全面的に廃止された。楽園律令省はテレポートの使用を無機物に限定したほか、テレポートの使用権限には厳しい審査基準を設けた。以降は主に物流業界での活躍が期待されていたものの、ラストリゾートの暗黒街においてジャミング装置が開発されると、テレポートも決して安全かつ確実な移送方法としての価値を危ぶまれた。魔導暦10年現在ではついにテレポート装置は重要性が高い案件であればあるほど使用を控えられるようになり、活躍の場は縮小する一方である。このように、テレポートは人類が夢見てきた先進的な技術でありながら、多くの欠陥を抱えている。
しかし魔導科学がより進歩すると、より安全な代替案としてワームホールを利用した技術が開発された。人体そのものを指定した座標へ転送するテレポートに対し、指定した二つの空間座標を繋ぐことでワームホールを生み、そこを通過することで擬似的にテレポートを行う。前者に比べて人体や対象物を再構築する際に起き得る事故のリスクがなく、代替の技術として活躍が期待された。だが、ワームホールには距離の制限があったり、ワームホール装置の開発コスト問題、ジャミングによる脆弱性は改善されなかった問題などにより、一部の施設で採用されるに留まっている。
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