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ある研究者は、増える思い出を、増える皺を、増える歳を数えて笑う事こそが正しさであると。年輪をその身体に刻む事こそが正しいと、そう考えた。
それが生きる意味だと、そう考えた。
死の恐怖に溺れ、死ぬべき時に死ぬ事こそが、人間の美しさであると考えた。
研究者は、量産され、今なお増殖し続けるその薬を、全て研究所から持ち出した。
そしてそれを全て小さな池へ投げ込んだ。
「何が正義だ!この薬は人類の毒だ!」
研究者は狂った。
それもやはり狂気であった。皮肉にも、開発した怪物の姿と重なった。
研究者は事の重大さに気付いた。手元に残る毒は残り1瓶。世界の希望と、正義と称されるそれを研究者は強く握った。
そしてそれを小さなメモと共に池の畔へ置いた。
研究者は死んだ。
毒の渦巻く池へと沈んだ。
研究者の字には芯が、心があった。
字は、研究者の血で滲んでいた。
『世界を光で満たしてくれよ』
Adl 花楠彾生 @kananr
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