31話 無理ゲー
「よし、後方支援は僕達に任せろ。ニコラは何時も通りにやってくれ」
「バフなら私にお任せ!ですわ!」
どうやは後方支援を一人に集中させる戦いかたの様だ。
「ありがとーっ!うーん…みなぎってきたぁ!」
対する俺達は手数や知識で戦うタイプだ。俺がどこまで彼女に抗えるか…
「そういえばヤマさんとタッグを組むのは久し振りですね」
「確かに初めて会った時以来だな」
なんやかんやで俺は戦力外の事が多かったしな。
「でも流石に冷えてきたなー…よし!ちょっとだけ本気!んー、30%くらいで!」
「ヤマさん気を付けて下さい!何か来ます!」
彼女の剣からまばゆい光が放たれている。間違いなく大技が飛んでくる動きだ。
「いくよ!あたしの必殺技!」
「グローリアヴェントス!」
そう唱えると、凄まじい轟風が俺とヴィラの間を突き抜けた。
全く見えなかった…
「およ、外れちゃった?ま、良っか。次は当てよーっと!」
普段なら喜んで当たりに行くが、今回は依頼中だ。無駄な怪我は避けないといけない。
ならあんな挑発に乗るなって話だけどな…
「当たったらタダじゃ済まなそうですね…」
ほんの少しかすったのか、ヴィラの頬からは血が流れていた。
これに当たったら確実に死ねるだろう。実に惜しい技だ。
「だな。あれをどう攻略するか…」
可能な限り被害を出さずにニコラ含む三人をどう捌くか…
と、考えた次の瞬間。
ゴゴゴゴゴゴ…
「わっ!…何の音?」
轟音が鳴り響き、地面が大きく揺れた。
「地震ですの?」
「いや、地盤に変化は無い。何か別の要因が…」
「……え?これ…まさか…!」
聴覚強化で何かを聞いたのか、ヴィラは顔を青くしている。
何が聞こえたんだ?
「ヤマさん!すぐに逃げますよ!ミラさん達も!」
「え?」
「急いで下さい!」
「わ、分かった!」
何だ何だ!何が起こってるんだ!ヴィラは何かを感じ取ったっぽいが…
『ズドドドドドドド!!!』
なにかが猛スピードで流れてきた。
え…?あれってもしかして…!?
「嘘でしょお!?!?」
「逃げろ!巻き込まれるぞ!」
「いやああああ!?!?まだ死にたくないですわあああ!!??」
雪崩!?
もしかしてさっきの攻撃が原因か!
「とにかく逃げるぞ!!走れ!!」
「分かりました!」
「ネネさん走れますか!?」
「こんな時に寒がってられないにゃ!!」
俺達は全速力で逃げ始めた。
…が、自然の力はそんなに甘くない。
「む、無理です!もう近くまで来てます!」
「雪崩速すぎにゃあああ!!こんなの無理ゲーだにゃあ!!」
「ちょっとヨアン!あんたの力で雪崩程度防げないんですの!?」
「この規模は流石に無理だ!」
駄目だ!流石に雪崩相手じゃ逃げれない!
せめて雪崩をやり過ごせる方法があれば…!
「皆さん!僕の手を!」
「何ですか!!こんな時に!!」
「僕なら雪崩をやり過ごせます!ですので早く手を掴んで下さい!」
「ホントかにゃ!?」
「任せて下さい!」
くそっ!もうミラさんに掛けるしかねえ!
ズドドドドドドド…
「ふう…間一髪ですね。カマクラが間に合って良かったです」
雪…と思われる白い物で出来た丸い建造物に身を隠す事で何とかやり過ごす事に成功した。
「収まったか…?ヴィラ!ネネ!二人とも無事か!?」
「わ、私は大丈夫です!」
「ネネも平気にゃ!」
よし、全員無事だな!
「あー危なかった」
「全く、技を使うときはもっと周りを見ろ」
「本気で死ぬかと思いましたわ…」
この三人もか…
「何でお前達もしれっと助かってんだにゃ!!」
「そりゃこんぐらい図太くないと自然相手に生きてけないからねー」
「それにしてもミラさんにこんな力があったのですね」
「僕はちょっとトリッキーな魔法が得意なんです。使える所が限定的過ぎてあまり意味ないんですけどね」
ミラさんには頭が上がらないな。
さて、このまずは三人をどうするか…
と、考えてると剣士の女の子が俺達に声をかけてきた。
「ねえキミ達、確か果物探してたって言ってたよね?」
「そうですね。僕からの依頼ですから」
「良ければあたし達も手伝おっか?」
…どういう風の吹き回しだ?さっきまで命の奪い合いをしてた関係だぞ。
「何を企んでんだにゃ」
「別に何も企んでないよ?仮にも命助けてくれたんだもん。このまま『はいさようなら~』とは出来ないって」
「君達からしたら僕たちは敵かもしれないが、恩人を狩る程堕ちてないしな」
うーん…戦力増加と考えたら是非とも手伝って欲しいが、裏切るリスクもあるしなぁ。
でもこの感じからして、本当に善意で言ってくれてるとも思うし…悩むなぁ。
「えっと、ミラさんはどうする?今回はミラさんの意見に合わせようと思うんだけど…」
「僕は良いですよ。人が多いことに越したことは無いですので」
「ま、ミラがそう言うなら仕方ないにゃ」
「不安は少し残りますが、どんな形になってもミラさんは私達が守ります!」
二人も賛成気味だな。
「じゃあ改めて自己紹介!あたしはニコラ!で、そこのボサボサ髪がヨアン、あっちのチビッ子がカレン!よろしくねっ!」
俺達も適当に自己紹介をして互いの挨拶が終わった。
「こんな事言うのもだが、僕たちの事を信用しすぎじゃないか?もしかしたら裏切るかもしれないぞ?」
「大丈夫です。保険もありますので」
「保険ですか?それは一体…」
するとミラさんは指で輪っかを作ると、その穴からニコラを見始めた。
「ふむ。ニコラさんの秘密は自宅の本棚三列目に隠した書物を見ながら自「わー!!わー!!」」
「絶対裏切らないから!!だからそれだけは止めて!!!お願いだから言わないで!!!」
何が起きたんだ…?
「…君はまさか人の秘密を探れるのか?」
「まあそうですね。万が一僕が死んだら容疑者の知り合い全員に伝達される二重の保険付きです」
「敵に回すと恐ろしいな…」
「褒め言葉として受け取っておきます」
と、とにかくだ。三人が一時的に味方になったのは確かだな。
戦力増加と考えたら頼もしい限りだ。
「じゃあヤマ、この三人の指示は任せたにゃ」
「え!?俺!?」
「そもそもヤマが喧嘩売らなきゃ良かったんだにゃ。少しは責任取れにゃ」
「うぐっ」
た、確かに…
「さ、あたし達に指示を頂戴!よっぽど無茶な事じゃ無ければちゃんと言うこと聞くからさ!」
「じゃあ最前列に…」
「この並びで良いんですか?」
「ミラさんが一番安全なのはこんな感じだろ」
最前列にヨアン、ニコラ
中列にヴィラ、ミラ、ネネ
最後尾に俺、カレン
この並びに決定だ。
「とりあえず彼を最優先で守れば良いんだな?」
「そうだね。最悪俺は見捨てても優先して守って欲しい」
「もう何度言ったか分かりませんが、いい加減自分を犠牲にするのは止めてくれませんか…?」
「それしか取り柄が無いからな」
「大丈夫だって。あたし達がちゃんと誰も彼も死なせない様にするから!」
「いざとなったらこのクソチビガキを盾にすれば良いんだにゃ」
「誰がチビガキですの!?しかもしれっと悪口増やしてんじゃないですわ!!」
いやー…しかしこれは…
「凄い賑やかになりましたね」
「まあ七人も居ればな」
本当に大丈夫か…?
悩んでも仕方ない。早いとこユキメロンを見付けよう。
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