30話 極寒地方の依頼
美食ブームとは言え、流石に毎日食って寝ての生活はあまりよろしくない。
それに死に活も最近は疎かになってたし、そろそろ本腰いれて死にに行かないと。
と言う訳で俺達は久々に依頼所に来て仕事を探していた。
「やはりと言うべきか、飲食店の日雇いとか食の依頼が多いですね」
「まあブームだしな」
さてさて、何か良い依頼は無いかなーっと…お?
『
依頼名
ユキメロンが食べたいです
内容詳細
ユキメロンが欲しいけど、そこまで行くのが危険なので護衛してほしいです。
報酬
3500ルピ+ユキメロン
依頼者
ミラ(人間)
備考
防寒対策は忘れずにお願いします。
』
「ユキメロンって何だ?」
「寒い地域に生息する果物です。白いボールの様な見た目ですが、中は黄色いんですよ」
寒い地域か…中々に危険な臭いがするな!
「これ、受けてみないか?金貰いながら旨いの食べれるし」
「ネネ寒いの苦手にゃ…」
マジかー…まあ猫だから仕方ないか。
「でもユキメロンは食べてみたいから我慢するにゃ」
手の平返しがはええなおい。
「じゃあ私は受付を済ませますので、お二人はアイテムとかの準備をお願いしても良いですか?」
「分かったにゃ!」
確かに今回は何かアイテムを買わないと駄目かもな。特に寒さ対策は絶対しないとだし。
俺とネネはアイテム屋に向かった。
「では今回はよろしくお願いします」
「お任せ下さい!」
依頼者の男の子、ミラさんと指定の場所で落ち合い、俺達は一年中雪が積もる極寒の地に足を進めた。
アイテムは買い揃えたし、寒さ対策も万全だ。
の、はずだったんだが…
「さ、寒いにゃぁ…」
ネネは震えながら鼻水を垂らしていた。
変だなぁ…体温を上げるドリンクも飲んで誰よりも厚着してる筈だが…
マジで寒いの苦手なんだな。
「ヤマー…ホットジュース欲しいにゃあ…」
「ほら…本当に大丈夫か?」
「平気にゃ!こんな寒さなんて…にゃふし!」
まあ今さら引き返す訳にもいかんし、俺達はネネを信じて進んだ。
「ミラー…ユキメロンってどれくらい美味しいんだにゃ?」
「そうですね…アマメロンを更に柔らかく、甘くした感じですよ。調理には向かないので生食しか出来ませんが、それでも充分美味しいです」
「美味しそうだにゃ!…動くと寒いにゃあ」
こりゃ旨そうだ。護衛を付けてでも取りに行きたいのも分かる気がする。
「今から楽しみですね!」
「はい!僕も楽しみです!」
よしよし、みんなやる気満々だ。
後はモンスターが襲ってくれれば完璧だ。何か出てこーい!
すると俺の声が届いたのか、何か聞こえてきた。
……て…!
これは…何だ?子供の声か?
「声が…!ちょっと行ってきます!」
ヴィラは声のした方に一人で走っていった。
「おい!一人は危険だぞ!」
「追いかけましょう!」
「ま、待ってにゃあ…にゃふしょん!」
***
急いで行ってみると、フードを被ってるから顔は見えませんが、子供二人が動物に襲われていました。
「…狼でしたか!今助けます!」
特に危なげも無く、狼の討伐には成功しました。
…いくら私でもそんなに弱くは無いですからね!
「狼は倒しました!もう大丈夫ですよ!」
恐怖で座り込んでた二人に私はしゃがんで手を伸ばしました。
男の子と女の子で、年齢的には兄妹に見えますね。
「あ、ありが…」
二人は私の顔を見ようとこちらを向きました。
すると…
「う、うわああああ!!新型雪女だああああ!!殺されるうううう!!」
「助けてええええ!!!」
「…え?」
雪女…?…私が!?
何の事ですか!?
***
「おい!一人で先に行くな!」
「す、すみません。いても立ってもいられなくて…」
俺はヴィラから事の顛末を聞いた。
新型雪女…ねぇ…
「ミラさんは何か知ってる?」
「雪女なら分かりますが…新型は初耳ですね」
ミラさんが知らないならあんまり情報は期待出来ないな…
「二人はどうだ?」
「私も知らないです…」
「ネネもにゃ…」
雪女はなんとなく想像つくが、新型ってホントに何なんだ?
まあ気にしても仕方ない。今はミラさんの依頼が優先だ。
早いとこユキメロンを見付けて…
「キミ達何してるの?」
「え?」
茶色の髪を結んだ女の子が声をかけてきた。
そっちこそ、こんな極寒の地で何してるんだ?
「ニコラさん、独断行動は危険ですわ!」
「全く…君はいつもいつも…」
「あはは、ゴメンゴメン」
するとネネよりも更に小さい女の子と、少し髪がボサボサの男の人もやって来た。
仲間か何かだろうか。
「ところで君達は何をしてるんだ?僕達に何か用かな?」
何をしてると言われても…
「あ、いえ、ちょっと探し物を…」
「探し物?」
そう言うとミラさんが付け足す様に説明してくれた。
「はい。僕の依頼で果物を一緒に探してるんです」
「果物だと?こんな極寒の地でか?」
もしかしたらユキメロンを知らないのかもしれないな。
そんなレアな果物って訳では無いらしいけど…
「…そう言うあんた達は何してんだにゃ。…にゃふしょん!」
「え?あたし達は雪女の調査で…」
雪女…?
「おいニコラ。余計な事を言うな」
「…あ!ヤバッ!今の無し!」
なんだこの人達…芸人か何かか?
「とにかく!私達はここに用事があるのですわ!」
あ、怪しい…
雪女とか言ってたし、さっきの子供とも関係ありそうだ。
「にしても貴方達怪しいですわね…この雪山で何か企んでるのではありませんの?」
「ちょっとカレン!この人達を疑ってるの?」
「人は見掛けによらないからな。ニコラは少しは疑う事を覚えたほうが良い」
あっちは俺達の事を完全に疑っている。
でも俺らからしたら怪しいのはそっちなんだが…
「うるさいにゃ…クソガキに怪しいとか言われる筋合いは無いにゃ」
「誰がクソガキですか!!私はもう16ですわ!!」
まあ一応15で成人だから大人ではある。
だがシャンティさん程では無いが、見た目は完全に子供だ。
「あっはっはっ!!だよねー!!カレンってちっちゃいからどう見ても子供だもん!!キミ達面白いねー!!」
「貴女は誰の味方なんですの!?」
もう一人の女の子はお腹を押さえながら大爆笑しており、涙すら流していた。
「だが…確かに彼からはなにやら不思議な力を感じるな」
不思議な力…俺から?
もしかして『成長阻害』と何か関係があるのか?
「その顔は何か心当たりがあるようだな」
「…ヤマさん?」
「あれ?もしかして本当に悪い人だった?」
このスキルは誰にも話してないからヴィラも不思議そうな顔をしている。
もしバレればずっと守られっぱなしで一生クソザコなのは確定だ。
そんなのは絶対嫌だ。俺は俺の野望の為に、こんな所で躓く訳にはいかない。
死ぬことのデメリットは無いに等しいし、死ねば死んだで儲けもんだ。
それに依頼達成の為にもこの先に進む必要がある。
ここは…やるしかない!
「…近付いて来る!」
「やはり悪党だったか。悪いが倒させて貰うぞ」
「正体を表しましたわね!ここで成敗してさしあげますわ!」
「…何のつもりかは知りませんが、貴方達がその気なら私も相手になります。ヤマさんとみんなは私が守ります!」
相手もヴィラもやる気だ。仕掛けたのが俺とは言え、もう衝突は避けられない。
「ネネ!ミラさんを頼む!」
「分かったにゃあ…にゃふしっ!…寒いにゃあ」
「大丈夫ですか?良ければ着て下さいね」
「助かるにゃ…あったかいにゃあ…」
あっちは緊張感の欠片も無いな…
「仕方ないね…!ヨアン!カレン!いくよ!」
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