25話 謝罪の拷問

sideバヤナカ


『ふはは…雨ごときで負ける私では無いわ!』


バヤナカは炎を全身に纏った。炎の鎧とでも言えるだろう。


「いや、負けは確定じゃ!」


シャンティは空に杖を向けると巨大な魔方陣が現れた。


「お主に耐えれるかの?…ゆけ!!」


その言葉と同時に、氷の塊がバヤナカに向かって降り始めた。


『氷の雨か!だが私の炎にそんなちんけな氷など効かぬ!』


「そんなの百も承知じゃ!」


新たに魔法を唱えると、バヤナカの回りに水が纏わり着いた。


『なんだこの水…ぬお!?私の炎が…!』


纏い着いた水はバヤナカの炎をみるみる消していく。


「炎が無ければ驚異でない…!氷よ!貫け!」


シャンティは氷の槍を召喚し、バヤナカに発射した。


そして…氷の雨と共に全身を貫いた。


『ぬおおお…私の命の灯が…消えていく…!』


「すまぬが負ける訳にはいかんのでの!」


『楽しかったぞ…女王よ……主の戦い………見事…………なり……………』


力を失ったバヤナカは黒い灰となり消滅した。





sideヴィラ


ネネさんは素早い動きでウィルオウィスプを翻弄しつつ、蹴りや殴りで少しずつですが攻撃を当ててます。


…ですが、どうしても決定力不足です。このままでは…時間が…!


「もう時間が無いにゃ…次で決着を着けるにゃ!!」


『アラ?私はもっと楽しみたいのだけど』


「ネネはそんなのゴメンだにゃ!」


するとネネさんは私に向かって走って来ました。何をする気ですか…?


「ヴィラ!肩を借りるにゃ!」


「え!?…ふぎゃ!」


ネネさんは私を踏み台にして空高くジャンプしました。


そのまま勢いを付けて…


「食らえ!!飛び膝蹴りにゃー!!!」


『イイワ!!正面から倒してあげる!!』


もう時間がありません。これが最後の一撃になるでしょう。


今の私でも出来ることは…


『グッ!?あんた後ろに…』


隙を作る事です!


「ずっと背後からやられてたお返しです!」


怯みました!これなら蹴りを受ける事は出来ません!


「ナイスだにゃ!!!食らえにゃあああ!!!」


渾身の膝蹴りがウィルオウィスプの体を貫きました。


ですが勢いの余り、ネネさんは地面に激突してしまいました。


だ、大丈夫ですか…?


「い…」


い?


「いってーーにゃああああああ!!!」


「もう!無茶し過ぎです!」


何か応急処置を…!そうです!


この服を破って包帯代わりにして…


「ほら!大人しくして下さい!」


かなり簡単な物ですが、少しはマシになったと思います。


「にゃあぁ……助かったにゃあ……やっぱりヴィラは頼りになるにゃ!」


…頼りにしてくれるのは嬉しいですが…何かフクザツです。


一方、体を貫かれたウィルオウィスプは倒れたまま動きません。


倒したの…ですかね?


『アララ…力が抜けてくわね…』


そう言うと体が少しずつ透けていきました。


私達を囲ってた炎の檻も消えてますね。


「うるせーにゃ。さっさと消えろにゃ」


『ハイハイ…じゃ、私は逝くわ。次会うのは…地獄かもね!!!!アハハハハ!!!!』


その言葉を最後にウィルオウィスプは消滅しました。


「遅れてすまぬ!こっちは終わったぞ!全員無事か!」


どうやらシャンティさんも決着が着いたみたいですね。


急いでヤマさんを…!


「ヤ、ヤマさんが!凄く衰弱してるんです!ネネさんも怪我を!」


「分かった!急いで治療室に運ぶぞ!」


二人でネネさんとヤマさんを担ぎ上げ、治療室に走りました。







「かなり精気を吸われてましたが、大事にはならないでしょう。意識も戻りましたし、直ぐに回復しますよ」


「良かったぁ…」


無事でした…!何だか力が抜けてく感じがします…


「どうしましょう?宜しければ会いますか?」


「お願いします!」


治療室に入ると、ベッドに入ってるヤマさんとソファーに座るネネさんが居ました。


二人に体の調子を訪ねると…


「まだ怠さは残ってるけど、それ以外は問題ないぞ」


「ネネも膝はちょっと痛めたけど問題無いにゃ」


良かったぁ…本当に良かったぁ…!


でも…また私は全然力になれませんでした…今回も殆どネネさんの活躍でしたし…


もっと…もっと強くならないと…!


その瞬間、ドアのノック音が聞こえてきました。


「失礼するぞ…む、話を切ってしまったかの?」


「別に大したことは話してなかったにゃ」


「そうか…すまぬが、三人に話があるのじゃ」


何でしょうか…?





sideヤマ


「三人に多大な迷惑をかけた事を謝罪する。本当にすまなかったのじゃ」


そう言うとシャンティは地に膝を付き土下座の姿勢を取った。


「そんな易々と許せる訳ねーにゃ」


「はい…流石にここまでされると私も怒りを覚えます」


でも二人はその謝罪を受け入れる事はしなかった。


まあ俺もあのザル警備とかは擁護出来ないしな…


あ、処刑は大歓迎だ。…とか言ったらヤバいから黙っとこう。


「分かっとる。欲しい物は何でもやる。妾達に鬱憤晴らしをしても良い。奴隷になれと言うなら一生なろう。何でも言ってくれ」


「…物で釣るつもりですか?」


「ネネ達の事バカにしてるのかにゃ?」


あれ…?ネネは最初物で釣られてたような…?もしかして俺がまた死にかけたからシャンティを尚更許せなくなったのか?


ただ…それ込みだとしても、ちょっと言い方がキツくないか?


「おいお前らその辺に…「「黙ってて/にゃ!!」」…スミマセン」


こえーよ…マジで三人に何があったんだよ…


「すまぬ…妾にはこれしか思い付かんのじゃ…」


土下座するシャンティの姿はいつも以上に小さく見えた。


「その前に残りの脱走者はどうなってるにゃ?」


「全員捕らえて今は妾特製の牢に入れてる。後に死刑にするつもりだったのじゃが…」


「ちょっと変更して欲しいにゃ」


そう言うとネネはシャンティにひそひそと何かを話始めた。


「ほほぅ…ネネは面白い事を考えるな。良いぞ。あいつらの刑はそれにしよう」


「ふん、ざまぁみろだにゃ」


ネネもシャンティも悪い顔をしている…


「何言ったんだ?」


「内緒にゃ」


マジで何をするつもりだ…まあ同情は出来ないけど。





「すみません。今度は私から良いですか?」


「なんじゃ?」


次はヴィラか。何を言うつもりだ?


まあ…ヴィラならそんな厳しい事は言わないだろ…


「正直に申しますと、私は謝罪の言葉さえ聞ければ良いと思ってます」


「…それは流石に甘過ぎにゃ」


うん、俺もそれはちょっと甘いと思う。


「ええ、ですのでまずシャンティさんが里の代表として私達に謝罪の言葉を送って下さい」


「分かった。…えー、妾の管理不足のせいで…」






「最後に、迷惑をかけて本当にすまなかったのじゃ」


数分に渡る長い謝罪が終わった。


「どうですか?二人は許しますか?」


「まあ、俺は別に…」


「ネネは絶対許さないにゃ」


ネネは許さない気満々だ。この中だと誰よりもキレてるし、当然だろう。


「だ、そうですよ?次は別の言葉でお願いしますね」


「そうじゃの。元より謝罪一つで許されるとは思っとらん。何度でも言うぞ」





「…三人には深く謝罪するのじゃ」


二回目の謝罪が終わった。


「お二人共、如何ですか?」


「俺は良いけど」


「ネネはまだ気が済まないにゃ!謝罪程度で許すわけねーにゃ!!」


まあそうだよな。


ネネって結構意見を通すタイプだし、許さないと決めたらとことん貫くだろう。


「…はい、ではまた別の言葉でお願いしますね」


「わ、分かったのじゃ」





「三人を侮辱する発言を…」


「足りねーにゃ」





「必要の無い危険に曝して…」


「まだ許さねーにゃ!!」





「えー…ヤマを危うく死なせてしまいそうにして…」


「まだ駄目にゃ!!」





おい、まさかこれ…



「嫌にゃ!!全然足りないにゃ!!」


「はい、またお願いしますね」


「えーと…えーと…あ、同族が三人を侮辱して…」


「それはさっき言ったにゃ!」



ネネが許すまで終わらないんじゃないか…?



「のじゃ!?えーっと…えーっと…わ、妾が同族を管理…」


「それも聞きましたよ?」


「のじゃぁ…もう勘弁してほしいのじゃぁ…その冷たい眼もやめてくれぇ…」


ヴィラとネネの謝罪と言う名の拷問はまだまだ続く…







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