誰よりも弱い俺は周りから見捨てられるが死ねば死ぬほど強くなる事が判明したから何としても死にたい。～でも俺の周りがあらゆる手段を使って生かそうとしてくるが頼むから死なせてくれ。

24話 青の雨、顔の雨

vsバヤナカ

「しかしまたお前と戦う事になるとはの」

『何の話だ？』

「覚えとらんのかい…まあ良い。また地獄に送ってやろうぞ」

そう言うとシャンティは杖を産み出した。

『いくぞ！』

バヤナカは手に炎を纏い突撃してきた。当たれば間違いなく即死するだろうが、シャンティはそんな甘い相手ではない。

「遅い！！」

拳を振ろうとしたその刹那、バヤナカの全身を一瞬にして凍り付かせた。

だが数秒と経たない内に、自力で氷を砕いた。

『ほほぅ…これならどうだ！！』

「甘いわぁ！！！」

次にバヤナカは巨大な炎の塊を飛ばすが、シャンティも巨大な水の塊を飛ばし、互いの技が相殺された。

周囲には僅かな水が弾け飛んだだけだ。

『ふむ…女王の名は伊達ではない様だな…そこらの人間共とは段違いだ』

「こんな修羅の里を率いるなら強くないといかんからの」

『面白い…面白いぞ！もっと楽しませてみよ！！』

vsウィルオウィスプ、sideヴィラ

『アッチも盛り上がってるみたいね。私達も始めましょうか？』

シャンティさん達の戦いを見て私達も始まろうとしています。

「そうですね…悪いですが倒させて頂きます！」

「ネネもやる気いっぱいにゃ！」

ですがウィルオウィスプはどう来るのでしょうか？

近接？それとも魔法？それとも…

攻撃方法が全く読めません…

とにかく用心しなくては…！

「ヴィラ！後ろだ！」

ヤマさんの声で振り向いた途端、黒い影の様な物が襲い掛かってきました。

咄嗟に剣を凪ぎ払いましたが…なんとその黒い影が真っ二つに切れました！

「か、影が切れた！？」

「何にゃその剣！？」

『レイタイを実体で捉えれるのね…フフフ…楽しそう…！』

凄い…！これなら幽霊相手でも戦えます！

「隙ありにゃ！」

油断した一瞬の隙を突き、今度はネネさんが攻撃を仕掛けました。

『グボッ！！』

あれ…？結構効いてる…？

「何か…割りと弱そうかにゃ…？」

「物理攻撃には弱いのですかね？」

「魔法使いは物理攻撃に弱いって聞いたことあるぞ？同じなんじゃないか？」

確かに魔法使いは基本距離を取りますから、体は鍛えてない人が多いです。

加えてウィルオウィスプは幽霊ですし、それに歯車をかけたのでしょうか？

つまり…

「攻撃を当てれば勝てるにゃ！」

「これなら何とかなりそうですね！…ヤマさん！すぐ終わらせますので待ってて下さいね！」

「お、おう…」

ヤマさんも見てますし、私、頑張りますよ！

『アナタ達…あの男の子に随分と入れ込んでるみたいね。もしかして恋しちゃってるのかしら？』

…へ！？こ、こ、こ、恋！？

「え！、あ、いや、べ、べつに！ヤマさんは仲間って言うか、と、友達って言うか！そんな、す、す、好きとか！そんなの！！」

『アラ、図星かしら？』

「動揺しすぎにゃ…」

うぅ…何で私こんなに動揺しちゃったんだろ…

ヤマさんは仲間であって、そんな感情は…

『ナラ…こんなのはどうかしら！』

「うわっ…」

するとヤマさんの真下から影がまた現れ、全身を包み込みました。

顔は辛うじて出てますが…殆ど影に飲み込まれてます。

『ヤル気を出させる為に、この子から精気を吸わせて貰うわ』

「それが何だにゃ」

『ソウネ…精気を吸い付くしたら…』

『シんじゃうわ』

…え？死ぬ…？

『モッテ十分、下手したらもっと短いかもね。ドウ？ちょっとはやる気出たかしら？』

…どうして！どうしてヤマさんばっかりこんな目に会うんですか！

あんなに優しくて…頼りになって…私を助けてくれたのに…！

貴女だけは絶対倒します！

『アハハ！そうよ！その顔よ！もっと来なさい！』

「ネネはヤマを助けるにゃ！だからあいつは任せたにゃ！」

「…はい！そちらはお任せします！」

『アト五分よ？急がなくて良いの？』

影から助け出そうとしても全然引っ張り出せませんし、引きちぎっても一瞬で影が復活します。

肝心の本体も足が無い分、動きが不定形で凄くやりにくいです。聴覚強化の先読みも、ほとんど効果がありませんでした。

そもそも影が邪魔で本体まで全然たどり着けません…

ですがウィルオウィスプを倒すしか道は…！

もう時間がありません…！早く、早く何とかしないと…！

sideシャンティ

『どうやら向こうも楽しんでるみたいだな。ヤル気を出させる為に男を人質とは考えたな』

「何じゃと…」

『しかも精気吸いとってるのか。これはあの男は死ぬかもな』

「…ふざけるでない！あやつらを殺させはせん！」

本当に…！戦いの為なら手段を選ばぬモンスターじゃな！！

こんな奴はさっさと倒さねば…

『いいぞ！私は全力のお前と戦いたいのだ！さあ！かかってこい！！！』

相変わらずの戦闘狂じゃの…

じゃが…

「変わらぬの、お前は」

『何がだ？』

「熱くなると周りが見えなくなるその癖じゃ！」

その瞬間、辺り一面に巨大な黒雲が発生した。妾が予め仕込んでおいた物じゃ。

『これは…！』

気付いた様じゃがもう遅い！

「降れ！」

そう唱えると、雨が降り始めた。それも遠くでは雷まで鳴る程の強い雨じゃ。

これでバヤナカの炎は威力が下がる筈じゃな。

『成る程、雨で私の力を削る気か』

「簡易的な物じゃがの。火は水に弱い、常識じゃ！」

『いいぞ…！その調子だ！雨もろとも吹き飛ばしてやろう！』

同刻、ウィルオウィスプ

「え、雨！？」

『アラ、本当』

どうやらシャンティさんが戦いの最中で降らせたみたいです。

地面がぬかるんで、上手く踏ん張れません…

ウィルオウィスプは足が無いから影響無いですし、そもそも影で攻撃をしてます。つまり相手が圧倒的に有利に…

「なら後はネネに任せるにゃ。あんたは引っ込んでろにゃ」

「きゃっ…ネ、ネネさん…？」

するとネネさんが私を押し退けて前に出ました。

「アラ、貴女が相手なの？」

「んにゃ、ネネは雨が大得意だにゃ」

「フフフ…楽しみねぇ。でも、もう三分も無いわよ？」

その言葉には余裕と同時に楽しさも混ざってるように聞こえます。

恐らく、この状態でも余裕と言う事でしょう。

「なら速攻で決めれば良いんだにゃ。ヴィラ、ヤマは任せたにゃ…覚悟しろにゃ！」

「速！？」

ネネさんは雨でぬかるんだ地面からは信じられない程、俊敏に動き始めました。

雨が得意と言うのは本当みたいですね。

『タシカニ速いわね！でもそれだけかしら！？』

ウィルオウィスプは影を使ってネネさんに襲いかかりました。

しかし今のネネさんの速さでは全く当たりません。全て避けてます！

「遅いにゃ！」

影を潜り抜けたネネさんはウィルオウィスプの背後に回り込み、拳を入れる事に成功しました！

『グッ…！』

「やった！」

いくら物理に貧弱と言っても流石に一撃で落ちる訳がありません。でも、ネネさんが互角以上に戦えるようになったのは紛れもない事実です。

『イイワ…良いわよ！そう来なくっちゃ！最期まで楽しみましょう！！』

「一瞬で片付けてやるにゃ！」

凄い…凄いです！これなら五分以内に倒せそうです！

………

でも……

五分も使って何も出来なくて……

今も応援しか出来なくて……

私、何してるんだろ……

ぐすっ……