22話 シャンティのお土産

「こんなちっこいのが女王なのかにゃ?」


「…どう見ても子供ですよね?若くして即位したのですか?」


身長は…130センチ程でしょうか?どう見ても子供です。


とても女王には…


「まあ無理もない。肉体の成長速度を遅くしてるのじゃからな」


「…今何歳にゃ?」


「4桁だと思うぞ?もう数えてないから分からぬ」


…スケールが違いすぎます。流石は長寿の種族、でしょうか。


「嘘臭いにゃ…」


でもネネさんは全く信じてないみたいです。


正直私も半信半疑ですし…


「そういえばセレナがどうこう言ってたけど、何か関係あるのかにゃ?」


「セレナは妾の娘じゃ。立場的には王女になるの」


姫様ってそう言う事だったんですね。


「でも姫様ならそんなホイホイ街に出て良いのかにゃ?」


「別に里に縛り付ける理由も無いしの。自由に生きさせてる。…こんな腐った里には居て欲しくないからの」


腐った里って…


言いたいことは分からなくはないですが…


「それにセレナから話は聞いておるぞ。とても優しくしてくれる人間達が居るとの」


え?もしかしてそれって…


「そうじゃ。ヤマ、ヴィラ、ネネの三人の事じゃな。本当は今日、一度礼を言いたくて街に向かってたんじゃが…いくら探しても見つからなくての、仕方なく帰ったら…と言う訳じゃ」


セレナさん…結構私達の事を話してたんですね。


ちゃんと力になれてて、ちょっと嬉しいです♪


「で?結局ネネ達はどうなるにゃ?いつ帰れるにゃ?それにヤマはどうなったにゃ?」


「剣もアイテムも無いですし…ヤマさんが治ったら帰りたいです…」


剣はおろか、服も寝間着のままです。正直、朝からこんな事されて…不快ですね。


ヤマさんにもあんな怪我を…!


「ヤマの治療はもう暫くかかる。すまないが、もう少し待っていて欲しいのじゃ…」


治療の間だけとは言え、こんな物騒な所に居ないといけないのですね…


気が滅入ります…


「無論、タダで待てとは言わん。衣服や食料の提供、治療後のケアに金品の譲渡や身の安全も保証するのじゃ」


「信用出来ないにゃ」


ネネさんが即座に言葉を返しました。


まあ確かに女王様なら出来そうですが…あんまり現実的とは言えないですよね。


「まあ信じれなくて当然じゃな。なら、どれか1つでも破る度に…」








「この里からエルフの首を差し出そう」


シャンティさんはとんでもない事を言ってきました。


「な…何もそこまで…」


「何か変かの?お主らは命を奪われかけたのだから、妾達も同じリスクを持つのは当然じゃろう?」


「大体どうやって持ってくるつもりにゃ!デタラメ言うにゃ!」


ネネさんの言う通りです!そんなの…ありえません!


「なら今から持ってくるか?エルフ1人程度ならすぐ取れるぞ」


「取れる物なら取ってこいにゃ」


「ネネさん!?そんな事…」


「どうせハッタリにゃ」


まあ…人の首なんてそうそう取れるとは思えませんし…


やっぱり嘘ですかね?


「分かった。暫し待て」






暫くするとシャンティさんが帰って来ました。


「ほれ、これで良いかの?」


その手にお土産を持って。


………


……


…え?


「ひいいいいいいい!?!?」


「にゃあああああ!?!?本当に持ってくるにゃあああああ!!!!」


いや確かに言いましたけどぉ!!ホントにやるとか思わないじゃないですかぁ!!


「作り物では無いぞ?何なら触ってみても…」


「もう分かったにゃ!今回は信じるにゃ!」


これは…流石に信じるしかないですね…


酷いものを見ましたよ…暫く夢にも出そうですね…


「てか同族をそんな簡単に殺れるってどんな神経してるにゃ…」


「どの道このエルフは死刑じゃったからな。証明するには丁度良かろう」


そう言うとシャンティさんはゴミを捨てるみたいにお土産を放り投げました。


その捨てられたお土産は私達を見て…


「いやあああああ!!!!こっち見てるぅぅぅぅぅぅ!!!!」


「早く回収しろにゃああああああ!!!!」


その後、無事回収してくれました。






「とりあえず服と食料は直ぐに用意させる。金品には準備があるから直ぐにとは言えぬが…」



「もしヤマが心配なら治療室まで案内するぞ?治療の邪魔さえしなければ好きにすると良い」


……


「それと里に居る間は妾が護衛しよう。安心せい。お主らには指一本と触れさせん」


………


「…のう、もう少し近くに来ても良いんじゃぞ?妾は別に襲ったりせんが…」


私達はシャンティさんからかなりの距離を取っています。


だって…流石に怖いですよ…


「遠慮しておきます…」


「絶対嫌にゃ」


「のじゃぁ……」





着替えて多少お腹に食べ物を入れた後、私達はヤマさんにも差し入れする為に治療室に向かっています。


シャンティさんとは相変わらずの距離ですが。


「こんなのが女王とか世も末にゃ…もっとキラキラしたのをイメージしてたにゃ」


「腐った奴らも統率するなら妾も多少なりとも腐る必要があるからの。伊達に数千年も女王はやっとらん」


「その…話し合いとかでは駄目だったのですか?」


別に知能が低い訳では無いですし、平和的解決とかは…


「奴らが話を聞くと思うか?」


「絶対聞かないにゃ」


ですよねー…


「あいつらは正攻法では手遅れの領域に達しとる。今は武力で何とか抑えとるが…これも何時まで持つかの…」


女王様も大変なんですね…


「さて、ここじゃの。ヤマにも差し入れしてやれ。妾はここで見張っとる」


中に入る前に治療してたエルフも出て来てくれて、また三人が揃いました。


「ヤマさん…体調は如何ですか…?」


「まあ大丈夫だ。ちょっと手足が動きにくいけど、明日には動くらしいしな」


「全く…いつも無茶し過ぎだにゃ!」




***


内容は分からぬが、声色から楽しそうな雰囲気は伝わって来る。


羨ましいのぉ…


全ての種族があの様に仲良く、そして笑い会える関係を妾は作りたかったのじゃが…


「もうエルフは一番の嫌われものじゃな…」


「そうですね…」


今となっては『エルフ以外が仲良く笑い会える関係』が形成されつつある。妾達が共通の敵となってしもうた。


必至の演説や援助で近隣住民の印象は悪くないが…それは物で釣ってるのと同じじゃ。何れは破綻する。


「エルフはもう滅びるのですかね…」


「安心せい。妾が生きてる限りそんな事はさせん。必ず平和な世界を作ってみせるぞ」


エルフ唯一の強さは寿命じゃ。どれほど長い時間がかかっても妾は諦めぬぞ。


***




「ヤマ、気分はどうじゃ?」


「え、誰?」


そう言えばまだヤマさんは知りませんでしたね。


「シャンティさんです。エルフの女王みたいですよ」


「じょ、女王様!?」


「別に畏まる必要無いにゃ」


「えぇー…」


お気持ち…分かりますよ。私もちょっと困惑しましたし。


でもあの姿を見たらそんな気も薄まりました…


「その部屋に物資は運んだが、足りないのがあれば言っとくれ。直ぐに用意させる」


「あ、ありがとうございます」


そう言うとシャンティさんの声は聞こえなくなりました。


「何か…以外と良いエルフだな」


「「絶対違います/にゃ!!」」


「何でそこでハモるんだよ…」




一方、シャンティ側では…


「シャンティ様!大変です!」


「何じゃ騒々しい」


「今回の騒動を起こした6名が脱走しました!」


「何じゃと!?」


何かが起ころうとしていた。

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