19話 正体不明の依頼
とりあえずレクイエムさんとの一日は『野宿してたら保護された』って事で納得して貰った。
今はまだ朝早く、店もあまり空いてない。空いてるのは精々、依頼所だけだろう。
朝早い事もあり、人はまだ少ない。今なら良い依頼も見つかるはずだ。
「割りの良い採取に配達、店番…中々報酬が良いんですね」
「早起きも良いもんだな」
折角だから楽して稼げる依頼を受けたい。何か良いのはあるかな…?
「お二人とも、これを見て下さい」
『
依頼名
アジサカナ配達
内容詳細
4匹
報酬
依頼者
備考
指定位置に置けば取りに行く
』
何だこの依頼…本当に必要最低限しか書いてないんだが…
しかも…
「0ルピ…」
「タダ働きにゃ…」
報酬枠が空白の時は基本的に無しだ。ボランティアとかはこの形式が使われる。
ただ、魚配達だけでこの額は確かに変だ。流石に安すぎる。
こんなの誰が受けるんだよ…
「あ、その依頼ですか?」
俺達が依頼書を見てると、受付嬢さんが声をかけてきた。
「この依頼ってなんですか?内容や報酬が色々と変ですが…」
「それが…今朝カウンターに置いてあったんです。一応依頼と言うことで置いてありますが…」
何だそれ?かなり怪しい奴じゃん。
「え?てことは依頼者は身元不明だったんですか?」
「はい、本当に不思議でして…こちらとしても困ってるんです」
まあこんな誰かも分からない依頼を出されても迷惑だろうし、報酬0ルピも舐めすぎだ。
こんなの誰も受ける訳がない。
この依頼は放って俺達は別の依頼を見ようとした。
「あの…報酬は依頼所で出しますので受けてくれませんか?」
受付嬢さんからまさかの提案をされた。まあ報酬くれるってなら考えはするけど…
「ちなみに…おいくらだにゃ?」
「そうですね…この位でどうですか?」
そこに書いてあったのは配達依頼からしたら破格の値段だった。店で魚を買っても余裕でお釣りが出る。
しかも正体不明の相手なら多少のリスクはあるはずだ。それは俺の肉壁チャンスとも言える。
こんなの当然…
「「「受ける/ます/にゃ!!!」」」
「この辺か?」
「ですが誰も居ないですね…」
「イタズラ依頼だったんじゃにゃいか?」
でも指定の場所に行くとそこに生えてる木に切った後が残っている。もしかして目印か?
俺がその切った後に触ろうとした時だった。
スコンッ!
切った後の所に弓矢が飛んできた。
くそっ…後一歩早かったら刺さってたのに…
「誰にゃー!!ヤマを殺す気かにゃ!!」
「待って下さい!何か付いてます!」
弓矢には手紙らしき物が結ばれており、俺らはその手紙を外して読んでみた。
『荷物を置いてさっさと立ち去れ』
何でこんなに高圧的なんだよ…!依頼関係無しに腹立つな…
「うにゃあ…ふざけた奴だにゃ…」
「落ち着いて下さい…まずは荷物を置きましょう…」
「分かったにゃ…」
ネネは持ってきた魚を木の近くに置いた。
「ほら!置いたぞ!」
するとまた弓矢が飛んできた。
『さっさと失せろ。目障りだ』
何なんだよコイツ…!意地でも姿は見せない気か…!
「…うにゃー!!さっさと出てこいにゃー!!礼の一つも言えないのかにゃー!!」
そう言った瞬間、こんどはネネの真横に弓矢が飛んできた。
『必要無い』
こいつ…まだこんな事…!
「…お二人とも、もう帰りましょう。こんな礼儀知らずの方など相手にする必要無いです」
「二度と来てやんねーにゃ!!!」
不快感を覚えながら俺達はアユルに戻った。
「もぐ…もぐ…全く…腹立つにゃあ…」
「攻撃してくるし、姿も見せねぇし…最悪な奴だな…あ、これ美味い」
「そうですね…余りにも礼儀が無さすぎます。どんな教育を受けてきたんでしょうか…これは美味ですね」
俺達は依頼所からの報酬金を使って、ちょっと良い物を食べに来た。所謂、やけ食いと言うのだ。
最初は暗めな雰囲気だった。しかし共通の話題となると話が弾むものだ。
「ヴィラってあんなタイプは嫌いそうだよな」
「はい。各々違いはあれど、感謝の気持ちを持てない何て考えられません」
「ネネはそんな気にしないけど、あれは論外だにゃ。失礼すぎだにゃ」
「ホント、どんな顔してるか見てやりたいな」
まあ嫌な話はこれくらいにして…
「あ、ヤマ。それ頂戴にゃ」
「良ければ私も…」
うまい物ってやっぱ正義だわ。
腹も満たされたし、午後の作業に入ろうとしたのだが…
「良い依頼無いにゃ…」
「朝の内に無くなってしまいましたね…」
残ってた依頼は家事手伝いやモンスター討伐だ。今回は採取依頼すら少ない。
今回は金こそ稼げたから午後は働かなくても良いが、午後丸々暇なのも考えものだ。
こんな時間じゃ死に活もあんま出来ないし…
「二人とも、変な依頼があるにゃ」
『
依頼名
私と遊んで下さい!
内容詳細
街や私の里で一緒に遊んで下さい!
報酬
5000ルピ
依頼者
セレナ(エルフ)
備考
お金周りは私が用意します!
』
そこには見覚えのある名前があった。
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