15話 湖で死に活
新たにヴィラが加わり、3人となった俺らは今後の行動を決める為に、かつてネネに致すのを止められた橋の下に行くことにした。
ここでしっかり決めとけば、俺が死ぬのもスムーズに進むはずだ。上手いこと主導権は握らなければ。
「私とネネさんは持ち家がありますが、ヤマさんはどこで寝泊まりしますか?」
「ここで良いんじゃないか?」
まあヴィラ達と出会わなかったら家買うまで野宿する気でいたし、別に特段問題とは言えないが…
「ダメです!こんな所で寝てたら風邪を引いてしまいます!」
「そうにゃそうにゃ!」
「じゃあどうすんだよ。言っとくが宿を借りる金は無いぞ?」
宿借りるなら野宿するし、致す家の為なら背中が痛いくらいどうってことないしな。
「私/ネネの家で/にゃ!」
…ん?
「…え?」
「…にゃ?」
…可笑しい…本来なら俺を奪い合う理想のシチュエーションの筈なのに…
「ネネさんは止めた時に軽く怪我させたんですよね?なら今後は私がヤマさんを止めますので、ネネさんはゆっくりなさって下さい」
「時には強引さも必要にゃ。それに獣人のネネなら夜遅くても平気にゃ。夜に弱い人間様はネネに任せて引っ込んでるにゃ」
こんなに嬉しくない奪い合いは初めてだ。むしろどっちにも引き取って欲しくないまである。
そもそも何故俺の致す事を止めるのが前提になってるんだ…いや、間違ってないけど…
その後は必死に説得して寝袋を持つこと、刃物は全て回収する事を条件に何とか見逃して貰った。
これで充分だ。一人の時間さえ取れればどうとでもなる!
「後は依頼ですね」
さあ、今回のメインが来た!ここで何としても俺が死ぬルートに派生させたい。
この二人が居る以上、自力で致せる可能性があるのは精々深夜だけだろう。
となると難しい依頼に…ダメだ二人が危ない。流石に俺以外に危険が及ぶのはNGだ。
こいつらは俺の為となると簡単に命を賭けてくる。前みたいなのはもうゴメンだ。
逝ける可能性があるのは手分けして作業するパターンだろうか?まずは俺一人になれる時間を確保しなければ…
「とりあえずヤマが死ぬ可能性がある依頼は全部NGだにゃ」
「そうですね」
「おい、ちょっと待て」
マジでそれだけは止めてくれ。ただでさえ先行投資して逝く確率が下がってるのに、それを0にされたら希望が無くなってしまう。
「何言ってるにゃ。あんな事があったのに、ヤマを行かせると思うのかにゃ?」
「私も賛成です。何度も同じ事は繰り返したくありませんから!」
くそっ!こいつら過保護過ぎるだろ!
流石の俺も女の子におんぶだっこされっぱなしは嫌だし、何とかしないと。
「でも報酬も三分の一になるから、多少はリスクを負わないとやってけなくなるぞ?」
「いえ、私は食品とアイテム系さえ買えれば問題ないです」
「ネネも食費があれば問題ないにゃ」
…アユルの女の子はそう言った事に関心が無いのか?
「いや、二人とも女の子だしさ。もっとこう…おしゃれとかしたいって思わないの?」
「ヤマさん。私達みたいな人は生き延びる事が第一です。動きにくい服を着てたら、モンスターに襲われたとか話になりませんので」
ぐうの音も出ないド正論な事で…
「ネネはあんなヒラヒラした服は動きにくくてどの道嫌だにゃ」
どっちもあんま興味無さそうだな…こりゃ、金欠作戦は無理か…
なら…
「流石に毎日安い食事じゃ栄養も偏るぞ。常に万全な体制で居るためにも多少は良いのを食べた方が良いだろ」
「…確かにそうですね。体調はあまり妥協出来ませんし…」
お、手応えありか?
「じゃあネネが毎日魚と木の実取ってくるにゃ」
ふはっ!それも対策済さ!
「一人一食二匹だと毎日のノルマが18匹だぞ。そんなに釣れるのか?更にそれプラス木の実だ。大変じゃないか?」
「にゃあ…それはキツイにゃ…」
よし、渋々とは言え何とか説得出来たぞ。
「とにかく依頼所に行ってみよう。何か見つかるかもしれないからな」
「うーん…三人となると割の良い依頼は中々ありませんね…」
「にゃあ~…もっと楽して稼げる依頼は無いのかにゃ~…」
「そんなのある訳無いだろ…」
方やキノコ採取や薬草採取。方やハイオーク討伐や遺跡調査。
難易度が極端だよな…
「すみません。こんなのはどうですか?」
『
依頼名
湖の清掃作業
内容詳細
ここから北に進んだ所の湖が非常に汚染されています。徹底的な清掃をお願いします。
報酬は達成業務のみの支払いとなります。
報酬
周辺清掃 3000ルピ
雑草除去 3000ルピ
浄化作業 5000ルピ
依頼者
アユル環境管理局職員 ディゴ
備考
清掃に必要な道具はこちらで支給します。
また、近辺で行方不明者が多数出ています。どうか細心の注意でお願いします。
』
「清掃作業か」
「はい。これなら報酬も良いですし、三人で丁度良いと思います」
確かに難しくないし、報酬も悪くない。
この依頼は良いかもな。
「ネネも賛成にゃ!」
よし、満場一致だな。
「すみません。この依頼ですが…」
依頼の説明を受ける為に受付嬢さんから紹介状を貰った俺達は、ディゴさんの居る管理局に足を進めた。
「ではこちらがゴミ入れの袋や手袋等の作業品、後は浄化用の薬です。薬は湖に入れとくだけで勝手に綺麗になるはずです」
「とんでもない薬だにゃ」
「技術の進歩って凄いんですね…」
てことは浄化は問題無さそうだな。ならメインはゴミ拾いと雑草取りか。
「すみません。地図って貰えますか?」
「はい。少々お待ち下さいね」
暫くしてディゴさんは地図を持ってきてくれた。
「では良い結果をお待ちしてます。…それと最近あの辺りで行方不明者が出ています。くれぐれも怪我の無いように気を付けて下さい」
「大丈夫です!何かあっても私が着いてますから!」
…いやー、正直な話ヴィラは…
「じゃあ尚更不安だにゃ」
「どういう意味です!?」
命賭けて特攻するからだよ!!てか本当に特攻するなよ!!俺が死ねなくなるだろ!!
準備を済ませ俺達は北に向かった。
道は割と整備されてる様で、モンスターも居なく何なら何人かとすれ違う程だ。
暫く歩いて目的地には着いたのだが…
「きったない湖だにゃ」
「これは…酷いですね…」
ゴミだらけで雑草まみれ、湖は真っ黒でかなり酷い状況だ。
こりゃ匙投げたくなる気持ちも分かるわ。
「とにかく手分けしてやろう。俺はゴミ拾いするから、ヴィラとネネは雑草取りを…」
「いえ、私もゴミに回ります。ヤマさんが何しでかすか分かりませんので…」
「じゃあ雑草はネネに任せるにゃ!そっちはヤマの監視もお願いにゃ」
「任せて下さい!」
何だこの団結力は…
監視の目を掻い潜って…はキツイな。今回は諦めるか…
そういえば鋭利な物がかなり落ちてるな…よし。転ぶフリしてこれを突き刺せば!
これなら事故だし、ヴィラ達も油断するはず…
じゃあふらーっと…
「危ない!」
45度ほど倒れた時、ヴィラに腕を捕まれた。何と言う反射神経…
「もう…ここは刃物が多くて危ないですから、気を付けて下さいね」
「あ、ああ。助かった…」
流石にこれはダメか…仕方ない。大人しく掃除するか。
…何個かはくすねとくか。
「よし、あらかた終わったか?」
「こっちもゴミは回収終わりました!」
「雑草も終わったにゃ!」
回収用の袋にはゴミと雑草が山の様に入っていた。
「さて、残すは…この湖をどうするか、だ」
最早水と言えるか怪しい湖を浄化、もしくは掃除する必要があるが…
「貰った薬も効いてないっぽいにゃ」
「私も浄化魔法は使えませんし…」
だよなぁ…この規模だと全部綺麗にするのは無謀だし、そもそも中心部分まで行く方法が無い。
かと言って、ここまで綺麗にして湖は無視ってのもバツが悪い。
「とりあえず際のヘドロだけでも回収しよう。それだけでも大分違うはずだ」
「ここまで来たらヤケクソだにゃ!とことんやってやるにゃ!」
「ですね!最後までやりましょう!」
しかし俺らは失念していた。
『また、近辺で行方不明者が多数出ています。どうか細心の注意でお願いします。』
この一言が何を意味していたのか。
ザザザ…
この依頼はそんなに甘くないって事だ。
ザザザザザ…
ゲロ…ゲコ…ゲーロ…
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