第11話 正義感
「そ、そいつにゃ!今さっき、そいつに追いかけられてたにゃ!」
「え!?マ、マリアさんにですか!?どういうことです!?」
「実はな…」
俺はついさっきあった事を話した。
「成る程…事情は分かりました」
「てか誰なんだあいつは」
「私の後輩です。評判も良く今後の期待もあり、とても優秀な方ですが…」
確かに最初は気遣ったりとヴィラみたいな行動はしていた。
でも結局敵意剥き出しになった訳だが…何があったんだろうか?
「でも襲われたのは事実にゃ」
「そうですよね…どうしてそんな事を…」
「なあ、そんな簡単に信じて良いのか…?俺ら会ってまだ数日だぜ?」
「正直言うとまだ半信半疑です。だからこの目で確かめます」
ヴィラのその目はマリアを信じてる目だ。
やはり後輩となれば情も湧くのだろうか?
「もし真実なら先輩として、マリアさんを止めます。彼女にはしっかりと罪を償って貰います」
そう言うと、俺達に向かって一礼した。
「ではご協力、感謝します。それでは!」
ヴィラは走って森の中に入って行った。
「ネネ達も帰るにゃ。走ってる時に色々落としたから、それも補給しないとだにゃ」
「そうだな…」
今のマリアは殺人鬼と言っても変わり無い。あいつは本当に大丈夫だろうか…
装備街、アイテム屋
「何で今日に限って何も置いてないにゃ…」
音玉も閃光玉も罠も全然置いてない。やはり護身用ともなると売れ行きも良いのか。
「とりあえず有るだけは買うから、ヤマも持っとくにゃ。心もとないけど無いよりマシにゃ」
そう言われ、睡眠の薬を塗り込んだナイフを一本買った。ネネは麻痺の薬を塗り込んだナイフを買ったらしい。
モンスターには足止め程度の効果だが、人間にはそれなりに効果的らしい。
「にゃあ…あんまり補給出来なかったにゃ…にゃにゃ!?あれはアジサカナの移動販売だにゃ!下さいにゃー!!」
ネネは一目散に走っていった。
そして俺は…ネネが目を離した隙に俺は森のある方に走った。
…すまない。
やっぱ俺、ヴィラが心配だ。
正義の為なら無茶をかなりするし、危なっかしいんだよ。あいつ。
それに最悪、一度だけ使える肉壁にはなれる。万が一はそれで助けることも出来るだろう。
よし…行くか…
「どこ行くにゃー!置いてくにゃー!」
…お早い事で。流石は獣人。
「まだ森に何か用かにゃ?」
「…ヴィラを助けに行く」
その回答にネネは頭にハテナマークを浮かべていた。
「それが何でネネを置いてくのに繋がるんだにゃ?」
「…これは俺のワガママだ。それにネネを巻き込む訳には…」
「そんなの知らねぇにゃ!」
ネネは大声で答えた。
「ネネはヤマに着いてくって決めてるんにゃから、ヤマの目的はネネの目的でもあるにゃ!いいからもっとネネを頼れにゃ!」
…はは。優しいなぁ…。確かに二人なら無茶しても止めれる可能性を上げれる。なら…
「…ヴィラはかなり無茶をする。何かあったら担いで逃げろ。良いな」
「ガッテンだにゃ!」
ネネは俺の腕を引っ張って早く行くのを促した。
「ほら、さっさと行くにゃ!三人で帰ってイチホシサカナを一緒に食べるにゃ!」
「…よし、行くか!」
入ったは良いが、この広大な森からヴィラをピンポイントで見つけるのは至難の技だろう。
だがやるしかない。
「ヤマ、そのナイフで木に印を付けてくにゃ。また迷子になったら元も子も無いにゃ」
「ほいよ…ん?あれは…!」
俺は咄嗟にネネの口を手で塞いだ。
『何するにゃ!』
『あそこにマリアが居る!』
『にゃんですと!?』
くそっ…こんなに早く遭遇するとは…
『とにかくゆっくり離れるぞ』
『分かったにゃ』
足音を立てない様にそーっとそーっと離れていく。よし、これなら気付かれない…
「お二人共…何してるのですか?」
「にゃああああ!?」
急に声がしたかと思えば、背後にヴィラが立っていた。
「ヴィラ!びっくりさせるな!」
「す、すみません!」
「そんな事より大変にゃ!マリアが近くに居るにゃ!」
「何ですって!?」
だがこんな大声で騒げば見つかるのは必然だ。
「見つけたわよ…!」
くそ!もう見付かっちまったか…
「貴女は?…エミリー!何故ここに!」
…ん?エミリー…?
「ヤマさん!マリアさんはどこに逃げましたか!エミリーが居るなら彼女も早く逃がさないと…!」
何言ってるんだ…?あの女がマリアじゃ無いのか…?
「あれがマリアじゃ無いのかにゃ?」
「彼女はエミリー。私と同じく、コロン団長のギルドに所属してる剣士です」
仲間…なのか?いやでも、襲ってきたし…
それにエミリー?マリアでは無いのか?
じゃあ、あのリュックは…?
「あら、ヴィラじゃない。またヒーローごっこかしら?」
「ごっこじゃ無いです!」
こほん、と一息入れるとエミリーを指差してヴィラは言った。
「コロン団長から聞きましたよ!エミリーは自分の華々しい功績の為なら殺人でも平気で犯し、その罪誰かに着せて解決する…とんでもない極悪人だと!」
「へぇ…!私の事をよく調べたのね…」
おいおい、とんでもない女だな…
てことは俺らを襲ったのも、その功績の為なのか?
「でも私の秘密を知ったからには…生かしては置けないわよねぇ!」
そう言うとエミリーは剣を引き抜いた。
剣にはどことなく赤色が付いており、今の言葉が真実だと言ってる様な物だった。
「そおねぇ…今回は『某ギルドの剣士、一般人殺害!犯人は駆け付けた人に倒され命を落とす』なんてどうかしら?」
「そんなのお断りだにゃ!」
「ええ、貴女の為に殺される気はありません!」
だがどうする。まともに戦って勝てるような相手じゃない。
そう思ってると、ヴィラから小声で耳打ちされた。
『お二方』
『どうした?』
『今回はかなり分が悪いです。私が隙を作りますので、その間に逃げましょう』
『じゃあヤマはネネが担ぐにゃ。その方が早いにゃ』
『分かった』
「そうですね。私ではエミリーには勝てないでしょう」
「あら、良く分かってるじゃない」
「ですので…」
ヴィラはエミリーに向かって何かをばら蒔いた。
「逃げます!」
「ぐっ…小細工を…」
足元で数回爆発したのを見ると、投げたのは小型の爆弾だった様だ。だが、確かにこれで隙が出来た!
「よし!逃げるぞ!」
「ガッテンだにゃ!」
「こっちです!」
よし!ネネ、頼んだ…
「にゃ!?」
「うわっ!」
だがスタートダッシュに失敗したネネは盛大に転けてしまい、担がれてた俺も前に投げ出された。
「大丈夫か!」
「だ、大丈夫にゃ」
だがその隙をエミリーが見逃す筈が無い。
一瞬で追い付いたかと思えば、ネネをターゲットにした。
「逃がさないわよぉ…」
「にゃっ!?」
「ネネさん!今助け…!」
ヴィラが助けに入ろうとするも、大きな音と人に寄せられたゴブリンが襲ってきた。
「ぐっ…こんな時に…!」
くそっ!どうしてこう不幸が重なるんだよ!
「おいネネ!逃げろ!」
「む、無理だにゃ…腰抜けたにゃ…」
「さぁ…まずはあんたよ…!」
非常にマズイ…
ヴィラはゴブリンを抑えるのに必死だし、ネネは腰を抜かして動けない。
絶対絶命だ。全滅の危機すらある。
ならせめて…
「死になさい…!」
ネネだけは助ける!
「ネネーー!!」
「にゃふ!?」
振り下ろす直前に、割り込む様にネネを突き飛ばした。
そしてエミリーの剣筋に入った瞬間
俺の背中を深く切り裂いた。
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