第3話 囮作戦

「さ!着きましたよ!」


遂に来たか…大都市アユル!


そして俺の野望の拠点となる場所!


「さて、私は報告があるのでもう行かないといけないんですが、ヤマさんはこれからどうするんですか?」


「俺もやらないといけない事があるからな。ここでお別れだ」


嘘では無いぞ?何度も致す必要があるからな。


とにかくヴィラとは一旦別れよう。でないと身動きが取れん。


「…まさかと思いますが、また死のうとか思ってませんよね?」


「そんな事しないから。心配すんな」


第一ナイフはもう無い。やりたくても出来ないんだよこんちくしょう。


「分かりました…今回はその言葉を信じますね」


随分警戒した筈なのに、こんなあっさり信じるのもどうかと思うぞ?


以外とチョロイのか?


「良いですか!私はもう行きますけど、絶対一人で悩んだりしないで下さいよ!何かあったら私に必ず相談とかして下さい!良いですね!」


そう言うとヴィラは人混みの中に消えていった。


何から何まで優しい人だったな…




とにかく、単独行動になった今の内に何回か逝っとこう。


まずナイフはヴィラに捨てられたから代わりになるのを買って…


…しまった…今の俺は無一文で出たから金が無い。


ならどっか住み込みで働くか…いやこれも駄目だ。今のクソザコ状態ではどこも雇ってくれないだろう。


本当は森で死にまくって、ある程度強くなったらアユルで働いて、今後の資金稼ぎをしようと思ったのに、予定が大分狂ってしまった。


今の俺は、人目が付かない場所+金のかからない場所+逝く道具が必須になる。


つまりこう言う事だ。






「…結局また森に戻って来ちまった」


金も無いし、人目の少ない森がやはりベストだろう。


森なら危険が多い分、俺を狙ってくれるモンスターも多いはずだ。


逝く→強くなる→アユルで働く→金を稼ぐ


よし、これで逝こう。何をするにも金は必須だからな。


急ぐ必要は無い。地道に進めていこう。



なるべく強いモンスターを探して森を探索していると、見覚えのある植物があった。


「毒草か…前見たのとは違う種類だな…」


そう言えばモンスターが苦手な植物が生えてるってヴィラが言ってたな。


てことは、この周辺でモンスターが全然見つからないのはこれが原因で間違いないだろう。


それと、家で読んでた本にこの毒草は載ってたから覚えている。


これを食べれば一発で逝けるだろう。


と言っても、外傷で逝った事しかない以上、毒で逝ったら復活する保証も無いし、復活した後に毒が消える確証も無い。


まだ俺のスキルがよく分からない以上、可能な限りは外傷で済ませたいのが本音だ。危ない橋を無理して渡る必要は無いからな。


やっぱりグサリとするしかないか…でもナイフはもう無いし。


結局モンスターを探して殺って貰うしか方法が…


「きゃああああ!!」


悲鳴?てことは誰かモンスターに襲われてるんじゃないか!


待ってろ!今すぐ囮になってやる!


声のした方に向かうと前回のゴブリンより更に大柄なモンスターが居た。あれは確かオークとか言ったはずだ。


襲われてるのは…エルフか?あの特徴的な耳があるから間違いないはず。


エルフの足元を見ると、折れた弓矢が落ちていた。どうやら壊されてしまったのだろう。


これはチャンスだ。


人助けも出来て、俺は死ねるチャンスが出来る。正に一石二鳥。


まずは、俺でも投げれそうな小石を掴んでオークにぶん投げた。


「こっちだ!俺が相手してやるよ!」


こっちに気が付いたららしいが、襲ってくる様子は無くキョロキョロしている。


どっちを狙おうか悩んでるのだろう。


「あんたも早く逃げろ!」


「で、でも…」


くそ!何で逃げないんだ!早く居なくなってくれ!


「俺なら大丈夫だ!早く逃げろ!」


「分かりました…!ごめんなさい…!」


エルフの子は泣きながら逃げていった。よし!これなら一対一になれる!


ここでもう一発、小石をぶん投げる!


「お前の相手は俺だ!さっさとこっちに来い!」


出来るだけ遠くに!人目の着かない場所に!




「はぁっ…はぁっ…もう無理だ…」


大して離れたとは思えないが、これくらい離れれば十分だろう。


やはり『成長阻害』の弊害はデカいな…この程度の距離で息が上がってしまう。


まあいい。ちょうどオーク様もお出ましだ。


「さあ!やれ!俺は逃げも隠れもしないぞ!」


オークはこん棒を俺の頭に振り下ろした。






しかし当たったと思った瞬間、俺は横に吹き飛ばされた。


「ぐっ…間に合いました!」


「ヴィラ!?」


アユルで別れたはずのヴィラが現れ、またしても俺を助けに来た。

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