第4話 守ります!
「何でヴィラがここに!?」
「門番の人に聞いたら外に出たと聞きましたので!」
くそっ!そんな所でバレるとは思わなかったよ!
「それに途中で会ったエルフの方にも言われました。囮になってくれた人がオークに追われてる。助けてあげてって」
あの時のエルフか…
「色々聞きたいことはありますが、今は離れてて下さい!絶対に守りますから!」
いやー…正直要らんよ。でもこの様子じゃ何を言っても無駄かな。
でも万が一があると俺の後味が悪い。
仕方ない。ヤバくなったら身代わりになってヴィラを逃がそう。
「…行きます!」
そう言うと剣を引き抜いた。
「はぁ…はぁ…つ…強い…!」
オーク相手にヴィラはかなり苦戦していた。
それもその筈。ヴィラはどちらかと言うとスピード型で、一撃は軽いが速さと手数で勝負するタイプ。
対してオークは完全なパワー型。多少の攻撃何のそので一撃がとにかく重いタイプだ。
オークも無傷と言う訳では無いが、時間が経てば経つほどヴィラがスタミナ切れで圧倒的に不利になるだろう。
そして遂にオークのこん棒とヴィラの剣がぶつかり合う。しかし、こうなったらパワー不足のヴィラに勝ち目は無い。
「だめっ…押し…負け…きゃああああ!!!!」
そのまま力任せと言わんばかりにヴィラは吹っ飛び、木に激突して倒れ込んだ。
「うぅ…」
勿論、そんなチャンスを逃す筈が無い。こん棒を持って少しずつ近付いてる。
マズイぞ…このままだとあいつは殺される。
俺は何回死んでも構わないが、他人を巻き込むのは性に合わない。
こうなったらまたやるしかない!
再び小石を掴んでオークにぶん投げた。
「こっち来い!俺が相手してやる!ほーらほら、どうしたクソザコ!お前なんか余裕だよザコモンスターが!」
手を叩く簡単な挑発だが、見事に乗って来たオークが、俺にジリジリと近付いて来た。
「そうだ!それで良い!ヴィラ!今の内に逃げろ!」
「そんな…いや…ダメ…!そっち行っちゃ…!」
オークは完全に俺に夢中になってる。
「ほらほら!こっちだこっち!」
少しずつだがヴィラとも距離が離れていく。これなら逃げても気付かれないだろう。
オークと向き合いながら下がってくと、小石が転がり落ちる音がした。
振り替えるとそこは急斜面。こりゃもう距離は取れんな。
どうやら俺の1死は撲殺になりそうだ…
さあ!思い切りやれ!
オークはこん棒を振り下ろした。
しかし当たったと思ったこん棒は、隣の地面にめり込んでいた。
「…間一髪…ですね…!」
どうやらヴィラが持ってる剣の鞘をオークに投げ付けたらしい。
当たった衝撃で、振り下ろしたこん棒は軌道が変わり、ギリギリの所で当たらなかったのだ。
…当たっても良かったのに。
「言った…筈です!ヤマさんは…絶対に…守るって!」
既にヴィラは全身泥だらけでボロボロになっていた。怪我も酷いし、このままだと冗談抜きで危険だ。
しかも今の一撃で、狙いがまたヴィラに移ってしまった。
「俺が囮になる!ヴィラはもう逃げろ!」
「嫌です!ここで逃げたら…約束が違いますから!」
ヴィラはフラフラしながらも剣を構えた。
「これで…決着を着ける!」
最後の力を振り絞る如くオークに走っていき…
「たあああああ!!」
思い切り剣を切り下ろした…が、それは無残にも外れてしまう…
不気味な笑みを浮かべたオークは大きくこん棒を振り上げた。
そして振り下ろそうとした刹那―
ヴィラは切り下げた剣を即座に上に切り返した。
「これで…トドメだあああああ!!!」
ヴィラの渾身の一撃がオークを深く切り裂いた。
切られたオークはその衝撃で崖から落ちていった。
例えオークだろうとあの怪我でこの斜面を登るのは無理だろう。
「はぁ…はぁ…た、倒せた…!私…守れたんだ…!」
気が抜けたのか、その場にへたり込んでしまった。
「ヴィラ!大丈夫か!」
「大丈夫…です…!私…強いです…か……ら……」
その言葉を最後にヴィラは気絶してしまった。
怪我と疲労が溜まってたのだろう。
でもそんな悠長な事を考えてる暇は無い。遠くに別のモンスターが見えた。
相手はまだ気が付いてないらしいが、ここを襲われたらヴィラは確実に終わりだ。
「くそがあああ!死ぬのは俺だけで十分なんだよ!こんな所で死なせてたまるか!!」
めちゃくちゃ重いけどやるしかねえ!無駄死なんて俺が許さんぞ!
俺はヴィラをおんぶしてアユルに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます