20話 吐露
「っまマガツさんっ!大丈夫なんですか!!」
目の前には泣きそうな表情で僕の体を見ている少女がいた。
「大丈夫だよ、僕も大概人間辞めてるからね。この程度で死んだりはしないよ」
安心させるように返事をしたつもりだったが、まだ彼女の表情は浮かない。
「ルーティ、そんなに心配しなくていいよ。かなりの数を倒してきたんだ、終わりまでもう少しだって」
更に声をかけるがまだ顔を目線を下げて俯いている。
「………………………………ごめんなさいマガツさん、私の…依頼のせいで…こんな大けがを…」
彼女は僕のケガに対して責任を感じているみたいだった。
「いやそれこそ君が気にするようなことじゃないって。依頼を引き受けたのは僕の責任な上にこの仕事してればリスクは覚悟の上だから」
「もうっ無茶しないでくださいっ………私ペンダントは諦めます…………もうここから逃げることだけ考えましょう……もう私達が手を引くといえば見逃してもらえないでしょうか?」
ついに涙が零れ落ちた。ルーティの精神は限界のようだ。
(逃がしてあげたいのは山々だけど暴威が見逃すはずがない……酷だが彼女には立ち直ってもらわなければ)
僕のケガで依頼人を、助手を不安にさせてしまうのは僕の未熟さの問題だ。
安心させるために必死に頭を振り絞って言葉を出す。
「ルーティ…ルーティ、そのあれだ、うん、もっと…もっと僕を信じて
「………」
僕は不幸な人間だと自分のことを思うし後ろ向きによく考える根暗な人間だ。だけど、だけどさ、やっぱりハッピーエンドが好きなんだ。悪党はコテンパンにされて、いい奴がちゃんと最後に笑って終わるハッピーエンドが好きだ。
この嫌な現実ではハッピーエンドなんて全然ないよ、いい奴が苦しむのはいっぱい見てきた。努力が報われなくて善意は仇で返される。悪い奴をぶっとばした正義が何もしなかった傍観者から悪党の烙印を押される
「………」
だから僕は何もしてこなかった、いい奴であろうとしなかったし、努力なんてめんどくさい、悪い奴は正義のためでなく金と自分の安全のために殺してきた、そんな空っぽ人間だ
「………」
だからきっと僕は善悪線分けするなら悪の側だ。不幸なのは因果応報でそこに理不尽はない。この後、クソ野郎マガツは同類の半グレにボコられ山に埋められました。めでたしめでたし、と書かれたって文句はつけられない
「………」
でも君は違う、家族のため、友達のため、正義のために動ける人間だ。僕は嫌な奴だけど君はいい奴なんだよ、僕はいい奴が不幸になるのは認めない。くだらない現実のせいで不幸で終わらせない、
だから僕は負けない、君は死なない、ペンダントは必ず取り戻せる、そんなハッピーエンドを僕が実現させてみせるさ。」
ああ、こんなの僕らしくない…自分の内心を語って聞かせるのにはエネルギーを消費する。
ただ、安堵してもらいたかったんだけど上手く言えた気がしない。
常に元気のない人間が、元気を出せというのもおかしい気がする。ルーティの顔が見れない。
「……マガツさん、私、私」
急に体に衝撃が走る。いつの間にかルーティに抱き着かれていた。
さすがに何を求めらているか分かったため安心させるように抱きしめる。そのまま無言でルーティが落ち着くのを待った。
「…マガツさんのおかげで不安がなくなりました。もうっ何が来ても負けませんって感じです」
ぐっと力こぶをつくるポーズをとる。
「でも…マガツさんが自分を嫌な奴って言ったことは許せません。嫌な人はいくら仕事だからって人のために命はかけませんよ、体を張ったりもできません、空っぽの人は他人のために熱く語ることができません」
「違うさ、君は同行しないべきだった、それでも同行する許可をしたり君に親切にしたのは暗羅様からの指示で……君の…「血液」を提供させるよう交渉しやすくするのと武具メーカーとつながりを作るのが目的の利己的な理由なんだよ…僕をいい奴だなんて言うつもりかい?」
「なんだ、そんなことですか少し驚きましたけど言ってくれれば、すぐにお渡ししましたよ、それにそれだってマガツさんは仲間のために動いていたんでしょう」
「だけど…」
「それでも納得できないというならマガツさんがこれまで罪悪感で苦しんだっということで私がチャラにしてあげます。」
「…僕の負けだ」
「ふふ」
何だか勇気づけるつもりだったのに僕の方が救われた気になってしまった。これで更に負けられなくなったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます