19話 ルーティ サイド


「はあっはあっはあ」

私のすぐ後ろから人の形を失った構成員達が追いかけてきています。


穴に落とされた場所は何に使うか分からない機械や不気味なオブジェが置かれた部屋でした。

受け身はとれたためケガは負いませんでしたが一人になったことでどっと不安が押し寄せてきます。壁には平たくて手でつかめるような突起はなく上ることはできそうにありません。

何より私が落ちた穴は閉じられてしまっていて戻ることができそうにありませんでした。

すぐに上へと戻る場所を探そうと部屋のドアを開けて出て行ったのですが、ドアを開けた先の通路には怪物たちが歩き回っていました。

私も最初は応戦したのですが上層の方達よりも強く、増援も現れ始めたため、スタンロッドの雷光で視界を奪ってから逃走を選択しました。

しかし、それで諦めてくれる敵さん方ではなく、姿は見えなくとも今も後ろからドシドシと私を追いかけてくる地響きが聞こえます。

(どこか隠れる場所、隠れる場所はないでしょうかっ)

焦る心を抑えつつも通路の脇の部屋を覗いて隠れられそうな場所を探しますが、机や異様なオブジェがある部屋ばかりで私が隠れられる場所は見つけられませんでした。

進み続けるとT字路に突き当たりました。

(右に進んだ方がいいでしょうか?それとも左?)

悩みますが、ここで時間はかけられません。


「ぎょあ!?がああ」

右側から私の身長の倍はありそうな大きな赤い鬼のような方がやってきて私は発見されてしまいました。

(左に逃げないと!)

左へと進むことを決め足を動かそうとした時。

ギャインドガアアッドンッ

と右側の通路を先に進んだ先にある扉から大きな音が聞こえてきました。

(この音は何!?ひょっとしてマガツさんが私を助けに降りてきて戦っているんじゃ…)

いくつか推測は立てられますが確信は得られません。そうしている間にも

ドスンドスンッ。と背後から私を追ってくる足音が聞こえてきます。赤鬼も私へと足を進めてきました。

(っっっ!右!右へと進む!)

覚悟を決めて赤鬼の方へと走り出しました。赤鬼は意表を突かれたかまだ攻撃態勢に入れていません。

私は赤鬼の股下へ向けて走った勢いのままスライディング!股抜けに成功しました。

右側のドアへ向かって立ち上がり駆けます。

「があああああっ」

足元を抜けられた屈辱からか赤鬼は怒りの鳴き声を上げ追いかけてきます。

(でもっ、もうドアは開けられる)

たどり着いたドアを開け中へと滑り込みます。

するとそこにはーーーーーー


私が最初に落ちた部屋よりも広い空間の中で何十体もの妖化した構成員達に囲まれ、一人で応戦しているマガツさんがいました。そんな場合ではないのですが合流できた安心感からか私は思わず気が緩みそうになりましたが、

(そんなっ!!)

よく見るとマガツさんは体中が血まみれで片腕がなくなっていました。おもわず悲鳴をあげそうになりましたが、パニックになりそうな心を落ち着かせます。

「まっマガツさん!私です!」

「!」

戦闘に集中して私の気配に気づいていなかったためかこちらを振り向いて驚いている様子でした。地面を蹴りつけて傍へと来てくれます。

「っ助けに来たつもりだったけど、これじゃどっちが助けられたかわからないな…」

「っそそんことより腕がっ」

「ああ腕ね。僕に抱き着いて自爆した奴がいてね、腕自体には異形化してたから強度はあるんだけど肩の異形化と人間部分の境目が爆風で吹っ飛ばされたんだよ」

他人事のように解説されますが私は気が気ではありませんでした。

バタンっ  私が入ってきたドアからは私が連れてきてしまった赤鬼等の追手達が部屋へと入り込んできました。

「そんな普通に言うことじゃっ!いえ話は後です!マガツさんまた私が放電して一気に敵を感電させます!」

思考を切り替えてまずは敵を倒すことを優先させることにしました。

「わかった!!」

もう何度も連携を組んだおかげか私が全てを口にしなくともマガツさんは分かってくれたようでした。

カツンッ

勢いよくロッドを地面へと差し込み、

「喰らいなさいっ」

私の残った全ての力とロッドに蓄えられていた電気を全て放出する気で電撃を地面へと流し込みます。

バッチイイイイイイイッ

感電させることには成功しましたが上層の構成員達よりも肉体の異形度が多いため動きを止められるのは一瞬でした。

ですが、その一瞬でマガツさんは天井へ向かって全力で拳をぶつけ瓦礫の雨を降らせます。(瓦礫はドクンドクンと脈打っていて生き物のようでした。)

そのまま私の体を抱えて部屋の外へと退避させてくれました。

「ぎゃあああああ」

中からは瓦礫に体を潰された悲鳴が聞こえてきます。

瓦礫の雨が降り終わった後はすぐ部屋へと戻りマガツさんは敵の生死の確認を行っていました。

「はっ、はあ、っ…これで片付いたかな」

頭をかきながら呑気な声を出していましたが、私はもう我慢できず、

「っまマガツさんっ!大丈夫なんですか!!」

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