9話 戦闘開始 (過負荷解放5%)
実は話しかけられる前には複数人に取り囲まれていることには気づいていた。
だが逃げようにもルーティを連れて守りながらといったことは危険があり怖い。
(ただの人間しかいないな、僕一人なら過負荷解放(オーバーロード)しなくても対処できるレベルの事態だが、ルーティが襲われる前に、速攻で終わらせる必要がある。できれば解放は使いたくなかったが仕方ない…か)
意識を集中する…
(
男が話し終わったらしい。
「てめえら、やっちま」
バンッ
眉間を撃ち抜かれた男が倒れこんでいく。
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
「!?!??」
男たちとルーティが突然の事態に固まる。
僕は動作も意識も加速し、身体能力も向上していた。
周囲がスローモーションに見える。
ある程度の距離まで近づき、ルーティの近くに立っていた連中の方から
リヴォルバーで落ち着いて狙いをさだめ、冷静に頭を撃ちぬいていく。
頭のある奴は武器を素早く(僕にはノロノロにしか見えないが)取り出そうとしていたので、そいつらから優先的に頭を撃ちぬく。
敵の射線上にルーティが入らないように誘導しつつ、敵の死体でつくった死角へ入りながら駆け回る。
ガチンっ
(弾切れか…再装填…いやそれより)
使えなくなったリヴォルバーを懐へしまう。
そして脚部に力を溜め、一気にチンピラの懐へ飛び込む。
急いでこちらへ照準を合わせてくるが、遅いっ!
銃を持った腕を外から抱えて絞り肘を固定し獲物を奪う。
ドンッ
そのまま射撃。相手が倒れるより前に他の敵に狙いを定め、
ドンっドンっドンっ
何度も繰り返すうちに周囲は静寂に包まれていた。
(ハアハア…これで…終わったか、もう過負荷を解っ)
ヒュっ
「っ!!」
後ろから音がした時点で前方に頭を下げる。距離をとって確認すると最初に眉間を撃ち抜いたはずの男が立ち上がりどこかから取り出したバットで殴りかかってきていた。
「NAっめTENじゃねEEzぞああA!!」
その姿は頭から角が生え顔は血の様に赤く、鋭い牙が生え完全に人の姿を失っていた。
(妖だったか?あるいは魔薬による効果?)
「GURRRがあ!」
理性が飛んでいるようで口から泡を飛ばしながら襲い掛かってくる。
上段からの振り下ろし、横なぎ
と単純な大振りが多く、避けることは難しくはない。速度ではまだまだこちらが上回っている。
(だが、当たったら今の状態では無事では済まないな、逆に今の奴の体に銃弾が有効かは怪しい…)
「GOOがあああ!おおおお!」
奴の猛攻は止まりそうにない。
意を決し右の拳を握りしめる。
そして奴がバットを振り下ろしてきたタイミングに合わし殴りつけ
バキ ィ ィ ィ ィ ィ ィッ
「GAああっ?ああ?」
バットを殴り折る。敵の混乱し、状況の理解が追い付いていない。
ゴスッドンッ
対しこちらは想定した通りに左拳を奴の顔面を殴り、その勢いのまま地面に叩き込ませる。
「がっ!………っうくっ……」
動きが止まったことを確認し胸を撫で下ろした。
(…何とか解放状態は1分以内で終わらせられたか。)
世界に速度がもどってくる。
「あっえっへっ」
ルーティが呆然としていた。
(あ~焦っていたとはいえさすがにこれはドン引きされるなあ、あの状態の僕は攻撃的すぎるんだよな)
「ん~ ルーティ、その」
「あっすすごいです。マガツさん」
んっ…?
「急にシュっとなったと思ったらささささっとバンバン、ドカカって」
何やら興奮気味で語彙力がない。
「あ~あれはリスクがあるからそう気軽には使えないんだけどね」
「えっ大丈夫ですか!」
「うん、今のは5%程度だったし、1分程度で済んだから問題ないよ…長引けばやばかったかもだけど」
「そんなリスクがある力を私を守るために使ってくださったんですね!」
子供のように目をキラキラさせている。
「マガツさん、まるで正義のヒーローみたいでした。」
引かれるのでなく好意的に思われるのは嬉しいがマガツがどういう人間か知る僕は騙しているようでそれはそれで心苦しくなる。
「とにかく君が無事で良かった。今日の所は急いでこいつ等のナワバリから離れるとしよう。」
まだルーティは話を続けたそうであったが長居は無用だ。
現場の処理は知り合いの業者へと電話で連絡で依頼し僕たちは急いでその場を離れた。
~~~~
四凶相談所へ着いた後
「できる限り、僕たちのことはわからないように手は打った。けれど奴らに気づかれたら自宅まで襲って来る危険がある。申し訳ないけれど数日間は僕たちの事務所で生活してくれないか」
ルーティの身の安全を守るための提案をする。
「はい。一緒にいて頂けるのは心強いです。…もう元の生活にはもどれないかもしれないですね」
さすがに不安で余裕がなくなっているようだ。
「そんなことはないさ、あいつ等の組織をつぶせば全部元通りになる。」
僕の少ないボキャブラリーの中から精一杯の慰めを言って、事務所の使っていなかった布団を引っ張り出し、ルーティに寝るように伝えた。
一人になると
「ふーーー」
息をつく、ルーティの手前、表に出さなかったが解放したことで僕の体は大分疲労していた。
過負荷解放とは要するに僕が暗羅様の眷属となり人間をやめた時に手に入れた妖の力を使う状態のことである。身体は通常状態でも常人よりも丈夫になっており並みの妖にひけをとらない。
しかし、並みでない暗羅様の眷属の力は並みの人間レベルの才能しかなかった僕に耐えきれる代物でなく、普段は体の奥底に引っ込ませているのだ。
過負荷解放することにより全能力はあがるし%が上がれば体も人間から離れる、しかしその状態の長時間の維持が僕にはできない。よって解放から戻ってくると本来の肉体部分がダメージを負うのだ。死ぬリスクすらある。
他の事例としては依然、肉体の大部分が異形となるレベルまで上げた時は逆に自分の意志では戻れなくなり正気を失ってしまうこともあった。
よってこの力は非常時以外に使わないに越したことはないというのが結論だ。
元々、僕は野心もなく偶然、眷属に選ばれたようなものなのでこの力が使えなくとも問題はない。僕にとって重要なのはこの力は暗羅様との絆の証であるということだけだ。
まあ、皆殺しにしちゃったから半グレと全面戦争になりそうだし、また使うことになりそうなのだが。
死体も手に入って頼んだ業者からヒューミリエの元に向かったはずだから情報も新たに手にはいるだろう。
相手の準備が整う前に攻めたい、近日中にはケリをつけるとしようか。
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