Episode11
日はすっかりと落ち、街はもう夜の雰囲気に包まれている。
今日は日曜日で本来ならば街のメイン通りも人の波で賑わっているはずなのだが……辺りを見渡してみれば人影はいつも以上に少ない。
いつもは開いている店も閉じていて、全体的に街の明かりも少ないようだ。
何故か? と、理由を問い詰める必要もなく答えは出ていた。
――今日が〈大災厄の日〉だからだ。
多くの人々は家で密やかに過ごし、商店は自らの意思で営業を自粛している。
九年前の傷は、決してまだ癒されずに残り続けていた。
しかしそんな中、変わらずに営業を続けている店がある。
その店は何処にでもあって、大抵の欲しい物を手に入れることができるという奇跡のような場所だ。
決して消えることのない明かりを灯し続け、例え祝日であろうと深夜であろうと稼働し続ける。
それは人類の生み出した究極のハライソ――
まあ要するに、コンビニへと俺は来ていた。
「しゃあせ〜」
入店と同時に気の抜けた店員の声が響き渡る。
店内をちらりと一瞥してから、今回の目的である夕食の弁当とお茶の置いてあるコーナーへと向かっていく。
どうやらお客さんは俺一人のようだった。
閑散とした通路を歩いて行くと、その途中にある雑誌のコーナーでふと視線がとまる。
そこにあったのは〈週間 冒険者ライフ〉という雑誌だった。
主に冒険者の周辺に関する情報を採り上げている週刊誌だ。
見出しには、大きく赤文字でこう書かれていた。
『宮征優利率いるチーム「ペルセウス」新宿ダンジョン三十階層に到達』
「凄い、ついに行ったんだ……」
と、見た瞬間に感慨の声が漏れる。
買おうか買うまいか、どうしようかと逡巡したものの、結局俺は手に取ることにした。
そのまま弁当とお茶も手に取り、レジに行って冒険者ライセンスで会計を済ませてから店を出る。
店を出る時もやっぱり、「あざした〜」と気の抜けた店員の声が聞こえた。
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