【完結】前世の記憶があっても役に立たないんですが！

第33話

学園を休むようになって5日たった。

わたくしが休んでいる間のことは兄とジークが教えてくれている。

初日はまだアリサ様の周りに令息達も何人かいたそうだが、3日目には誰もいなくなったそうだ。

アリサ様の側にいた6人が一斉に退学になったことが原因だろう。

今回退学になった人の中には婚約者のいる令息もいた。

もちろん令息の有責で婚約は破棄になっている。

アリサ様は結局何がしたかったのだろうか？

兄にも声をかけ、マックス殿下にも近づこうとしていた。それからも高位貴族の令息にも声をかけ側に置いた。

そんなアリサ様を見ていた令嬢達が遠巻きにしているのは仕方がないことだろう。

結果1人になってしまった。

今どんな気持ちなんだろう？

妹がそんな立場になってしまった事をナタリー様はどう思っているのだろう？

1人の時間が多すぎて、余計なことばかり考えてしまう。

もう休み始めて10日がたった。

アリサ様は今もひとりぼっちらしい。

アリサ様に怪しい動きが見られない為、そろそろ学園に登校しても大丈夫だろうと、明日からまた通えることになった。

ジークはまだ心配しているようだけどね。

朝、教室に入るなりユリアとイザベラが急いで側にきた。

大丈夫かと心配そうに話しかけられる。

クラスメイト達にも声をかけられた。

騙していただけに心が苦しい。

ジークは指輪にキスをした後「何かあったら僕のところに来るんだよ」とギュと抱きしめて心配そうに自分の教室に向かった。

久しぶりに入る教室と、クラスの友人たちとの会話にほっこりとする。

何事もなくランチは兄とジークも交えて食べた。

あら？わたくし一日中ボーとしてたのかしら？

時間が経つの早過ぎない？

気がつくと授業も終わって兄とジークのお迎えが来た。

ユリアやイザベラ、クラスメイトともまた明日と挨拶して馬車乗り場まで歩いていると、アリサ様がわたくし達の前に泣きながら飛び出してきた。

兄とジークがすぐに警戒したのがわかる。

「アリシア様酷いです。私からお友達を奪ったのはアリシア様ですよね？」

うわ～兄とジークがイラッとしてる。

「なぜわたくしがそんな事をするの？」

「そんなの私が可愛くて男性たちにモテるのが気に食わないからでしょ？」

はぁ？自分で言うんだ。

「別に羨ましいなんて思ったことありませんが？それにわたくしには大好きで大切なジークがいますからね」

ジークと微笑み合う。

「ジークハルト様、騙されないで下さい！アリシア様は私に嫌がらせばかりしていたのですよ」

アリサ様はジークに縋りつこうと手を伸ばしたが、ジークは冷たい目で見下ろしている。

わたくしには向けられることのないジークの冷たい目にゾクゾクするわ～カッコイイ！

はっ！そんな場合じゃないわね。

「名前を呼ぶ許可は出していない。それにアリーが嫌がらせなどしていないことは分かっている。それだけ言うなら証拠はあるのか？」

「私が言っているのですよ？信じて下さい」

涙目で訴えてくるアリサ様は本当にかわいいと思う。これは絆される男もいるわ。

でも、女のわたくしから見ればあざといのよね～

「話にならないな、行こアリー」

わたくしの腰に手を回して歩き出す。

「君はこの状況が分かっているのか？」

後ろから兄の言葉を聞いて周りを見渡すと、こっちを見てヒソヒソと話す生徒たちがたくさんいた。

もう誰もアリサ様を庇おうとする人はいないようだ。

「私が・・私は悪くありません」

そう言いながら走って去って行った。

わたくしを睨むのを忘れずにね。

結局何がしたかったのだろう？