第29話

10分もしないうちに彼らは戻ってきた。


人数も6人に増えていた。

ニヤニヤしながら「傷物にしてやるよ」「アリサを傷つけた罰だ」「後悔させてやる」「お綺麗なお顔を傷つけてもいいんだぞ」「ここまでやったんだ、それなりの罰があるだろうが、人に言えない恥ずかしい思いをさせればいいんだ」


それぞれが好き勝手なことを言ってニヤニヤしながらベルトに手をかけて近づいて来る。


「貴方たち後悔するわよ。やめるなら今のうちよ」


わたくしが猿ぐつわを外していることにも気づかないなんてバカなの?


「知るか!」「偉そうにするな!」「人に話せない程の屈辱を与えてやるよ」


聞こうとしないわね。

じゃあ遠慮はいらないわよね!


立ち上がりながら先頭の男の喉に箒の先でつく、痛みに屈んだところへ顎に蹴りを入れるそれだけで白目を剥いて倒れた。


何が起こったのか彼らが呆然としている間に2人目は鳩尾をついた後はこめかみを拳で殴る、3人目は思いっきり顔面を頭突きした。3人をあっさりと昏倒させたところで、残りの3人が一斉に飛びかかってきた。


慌てることもない。

3人いても兄と比べるのも烏滸がましいほど、スピードもパワーもなくあっさりと片付いた。


ユリアとイザベラは目を見開いて驚愕してる。


「さあ、猿ぐつわを外していいわよ、縛られていたロープで彼らを拘束しましょう」


2人ともまだ驚愕したまま動けないようなので、自分でさっさと縛り上げていく。


「ふふっ、わたくし強いでしょ?」


やっと我に返ったのか「凄い!シア強かったのね」「その辺の男性よりカッコよかった」など絶賛してくれる。


「怖かったでしょ?怪我はしていない?」

思い出したのか2人は泣き出してしまった。


当たり前だ、貴族の令嬢が連れ攫われ縛られるなんて有り得ないことよ。

しかも、安全なはずの学園内でよ?

安心させようと2人を抱きしめていると、もの凄い音を立ててドアが弾け飛んだ!


そこには鬼の形相をした兄がいた。

兄よその顔はダメだわ!

迫力があり過ぎて怖いわ!


すぐさま状況を把握した兄は「シア無事だな?よくやった」

「ユリア嬢、イザベラ嬢2人とも大丈夫かい?遅くなってすまない」と2人の頭をポンポンした。

ユリアとイザベラは顔を真っ赤にしてるわ。


遅れて飛び込んできたジークはわたくしを見るなり抱きしめて「アリーアリー」と泣き出しそうな顔で何度も名前を呼んだ。


「大丈夫よ何もされていないわ」安心して欲しくて背中をポンポンと優しく叩く。


ジークが落ち着いたと思ったら、わたくしの手に巻いたハンカチに血が付いているのを気づき慌てだした。

血は彼等のものだけでなく、わたくしの拳からも出ていた。痛くはないが何カ所か裂けていた。



とりあえず、6人は学園の警護に引渡しマックス殿下にも兄が伝えてくれた。


わたくしはジークにお姫様抱っこされて医務室に!

手の傷は残らないと診断されてジークはやっと安心できたようだった。

この世界の薬は本当によく効く。


明日は学園も休みだということで、ユリアとイザベラもそのまま我が家に泊まることにしたの。

もちろん、それぞれの家には了承をもらったからね。


夕食のあと、サロンに両親も交えて事の詳細を話した。


ユリアとイザベラは興奮して身振り手振りでわたくしの大立ち回りを皆に話していた。


兄だけがいい笑顔で頷いている!


恥ずかしい!ジークもいるのに!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る