第5話 神々は選んだ3人でカケゴトをする

「ストーップ、ストーップ!!

おかしい、あまりに変じゃ、ありえないぞ!

まーた、調和の神、お前が何かやったのか?」


「えー?あたしは知らないわよ。

創造の神のほうこそ、なんで知らないの?

あなたもあたしも知らないなんて、この宇宙では、ありえないわ」


2人は、息を合わせて、空に向かって伸ばした右手と左手をつなぎながらこう言う。


「だって、宇宙の全てをつくった、全知全能の神々ですからッ!!」


創造の神と調和の神は、ちょっと昭和な感じのダサいポーズを決めた。

2人の声は、時間の止まった世界にむなしく響いた。


誰も聞いていないのに、ドヤ顔で息を合ことわせて、スベる必要がどこにあったのかは、この2人でさえも知らなかった。


「あたしたちって、いつも2人でボケていて、ツッコミ担当がいないわよね」


「そりゃ、そうじゃ!神にツッコミを入れるなんて、誰にもできんわい。ふぉっふぉっふぉっ」


「それもそうね。見てみて、せっかく地球に来たから、ミラノで新しい服を調達してきたの」


「おぉー。そんな全身緑のコーディネート、よく見つけてくるもんじゃ。

そもそも、なんで若い女の子の姿なんじゃ?わしより先に生まれたくせに」


「失礼ね。あなたみたいに、いつも黄色の服ばかり着てる老人に、私のハイセンスな服の文句を言われたくないわ。

かわいいね、とか似合ってるよとか、素直に言えばいいのよ!」


「そんなこと言ったら、照れちゃうわい!

ところで、あの空に浮かんでいる黒い立方体◾️は、なんじゃ。正体不明じゃぞ。

怪しさ満点じゃ!」


「本当にそうね。あの黒い立方体◾️が、この出来事の重要なカギになっているのは確かね。

あなたが止めた時間の中で静止してないなんて、異常だわ」


その黒い立方体◾️は、止まった時間のなかでも、ふわふわ動いていた。


「それに、あの巨大な隕石はなんじゃ、なんであそこにあるんじゃ?

3日前まで、130億光年も遠くの、人類が呼ぶところのやまねこ座超銀河団にあったはずじゃが?」


「たしかにそうね。

ここにあるのは、何かのマチガイかしら?

たまにマチガイはあるけれど、今回のは本当に変ねぇ。

しかも、一番変なのは、このあたしの力でも

なぜか、黒い立方体◾️も隕石も、消すことも動かすこともできないことよ。

そんなことは初めてだわ」


「あまりの事にびっくりして、飛んできたわい。

せっかく、さっきまで地球から150億光年はなれた別の地球の仕事場で人類を観察をしていたのに」


「どうせ不純な観察でしょ。あたしは、300億年離れた銀河で、超新星爆発をブラックホールに仕舞っていたところよ。あたしは、あなたが散らかしたもののお片付けで忙しいの」


「ここじゃここじゃ。ここが地球の仕事場じゃわい。

2人で一緒に地球に来るのは、だいたい30年前、東京のディスコぶりじゃな。ついさっきのことのようじゃ。

あの日の夜は、ハデに踊りまくったモンじゃわい」


「たしかにあの日以来ね、地球にくるのは。

人類に混ざって、ほとんど裸で踊りまくって最高に楽しかったわね。

この地球を作り直してよかったわ」


「ふぉっふぉっふぉっ」


「あら、まーた、こんなに散らかして。

おもちゃ箱も、ガラクタも散らかりすぎよ。あたしがあげたリムバちゃんは、どこにやったの?

自動的に不要な創造物、不都合な生き物をおもちゃ箱にしまってくれるはずなんだけど。

しょうがないから、あたしが片付けてあげるわね」


「おいおい、勝手にさわらんでくれ。

全部大事な物なんじゃ。

おもちゃ箱に入れる前に、わしがちょっと遊んでおるだけじゃ。

超改造してからおもちゃ箱にいれるのが楽しくてな。ふぉっふぉっふぉっ。

袋の形の転移ゲートなんか最高傑作の1つじゃわい。

木の人形兵は、できそないじゃが。

それに、リムバちゃん、ちゃんと働いておるぞ。

わしがせっかく創って、こっそりヒマラヤ山中で飼っていた雪男も、気がついたらおもちゃ箱に入れられておった!

それに、あれも!これも!

わしは、リムバちゃんを捨てたいわい!

そういえば、リムバちゃん、たまに人類に見つかって、UFOとか呼ばれておるぞ」


「ふふふん。

ちょい見せがロマンなのよ。

2000年前に、あなたが作りまくっていた変な生き物を一掃して、1000体ほど一気に片付けた時は、流石に大変だったわ。

おもちゃ箱の中まで、整理しに行かなきゃいけなかったし。

あの時作った博物図書館、ちゃんと機能しているかしら?

6600万年前みたいに、まーた、勝手にリムバちゃん捨てようとしたら、どうなるかわかってるわよね?

なんなら、あの時、あたしが恐竜を絶滅させたみたいに、この人類、消してあげてもいいのよ。

また、新しい生き物と植生のパターンから選び直して、この地球に送り込むのも楽しそうよ。」


「おいおい、やめてくれ。

それに、UFOがUMAを回収しとることを人類が知ったら、ロマンも何もないわい」


「あはは、確かにそうね。

あら、この人類の砂時計、すでに残り時間がほとんどないわね。

でも、おかしいわ。

ねぇ、時間を止めているのに、なんか砂が増えてない?

せっかくあたしが、この砂時計作ってあげたのに、壊したの?」


「この地球の人類に残された時間がほとんどないのは、もともとそうじゃ。

不思議なことでもなんでもないぞ。

この地球の人類は、何度やり直しても、戦争ばかりしておるからな。

しかし、なんで砂が増えているんじゃ?」


「不思議ね。

なんでかしら?

どちらにせよ、滅亡するはずなんだけど。

確かに戦争してばかりなんだもの。

この地球の人類は、やっと自分達の星のエネルギーを使いこなせるようになってきたくらいの赤ん坊なのに、このまま発展、進歩しないで、また歴史が終わるのよ。

まぁ、よくあることね。

自分達がいる銀河系のエネルギーを使いこなすまで発展した人類は、まだ全宇宙で2.3しかないもの。

複数の銀河系のエネルギーを使いこなすまで発展する人類は、この先、どうやって生まれるのかしら」


「早くそんな人類を見てみたいものじゃわい」


「それにしても、本当に不思議ね。この隕石の先の未来が見えないし、あたしでさえ、勝手に行くこともできないわ」


「そのようじゃな。できることは、時間を止めることくらいじゃ。さて、これからどうなるのか、実際に見てみるしかないようじゃ」


「どうなるか分からないことが、こんなに楽しいなんて。あたしは、今、最高にワクワクしてるわ!!!」


「で、やっぱり今回もあれをやるのかな?」


「やるでしょ。ただ、あたしたちにマチガイとして修正できる不都合は、飛行機の墜落のリセットくらいだけど。じゃあ、いつものように無作為に関係者を選んでちょうだい。

3人くらいでいいかしら」


「まぁ、そうじゃな。まずできることをやってみるしかないわい。

ほい、ほい、ほいっ!

よし、3人選べたわい」


「なんで、小学生の3人なのよ。弱すぎるでしょう。

あなた、もしかしてそういう趣味があるの?まぁ、いいわ。仕事場に連れてきて、3人の時間の静止を解除してあげてちょうだい」


「失礼なやつじゃのう。

たまたまじゃよ。

また、これもまた因果なんじゃろう。

よしよし、それ。

では、いかにも神さまっぽい感じで、この3人に説明するかのう」


「あたし、わざわざ神様っぽい感じだすの恥ずかしいから、説明はお任せするわね。チュッ♫」


調和の神は、ふざけながら創造の神のほっぺたにキスする。


「ふぉっふぉっふぉっ」


創造の神は、3人の子供を近づけるように呼び寄せて、堂々と話をする。


「うぉっほん!

わしは、創造の神じゃ。となりにいるのは調和の神。

わしらは、この宇宙を作った神様じゃ」


調和の神は、3人が自分達を見えないことがわかっているのに、手を振ってあいさつしている。


「やましたしょうこ、みよしゆきる、いまいずみみちな、わしらがお前たちを選んだ。


お前たちの乗っていた飛行機は、わしらの計画では事故にあうはずではなかった。


なにかのマチガイで事故にあったとも言える。このままだと確実に全員死んでしまう。


そこで、お前たちに宿題を与える。

わしらは、全知全能の神じゃから、あの飛行機を助けることは簡単じゃ。


しかし、修正にはたくさんのエネルギーがかかるし、めんどくさいこともたくさんある。


たった1つのことを修正するだけで、全宇宙のバランスが変わってしまうのじゃ。

そこでじゃ、どうしてもマチガイを修正するときはルールを決めておる。


その出来事の当事者から3人を選んで、宿題をクリアさせるという条件じゃ。


無節操に世界を修正するのを避けるため。本当に修正するべきかを見定めるために、こうした手続きをしておる」


「さて、この3人に、この宿題をクリアすることができるかしら。あたしには、到底できそうに思えないわ」


「うぉっほん。調和の神よ、今は静かにわしの話を進めさせてくれい。

話は戻るが、3人には、このおもちゃ箱の中で宿題に取り組んでもらう。

ここにある大小の箱、おもちゃ箱には、わしがかつて作り出したさまざまな創造物が入っておる。

そして、この一番大きなおもちゃ箱の中には、コントン島という小さな島が入っておる。


そこでじゃ。

3人には、このコントン島に行って、暗がりの国と光の国との対立を解決し戒めを解く、という宿題をやってもらう。

7日以内にクリアするのが、条件じゃ。


コントン島には、試しに作った化け物達がたくさん住んでおる。

一つ目の巨人、巨人な魚や鳥、火を吹く三つの首の犬、巨大な怪鳥、大きくなる猫、恐竜や巨大な昆虫、ライオンの頭の鷲、他にも色々な不思議な生き物がおるぞ。


じゃが、基本的にコントン島は、地球とほぼ同じ植生じゃ。


解決できるかどうかは五分とは言わんが、可能性は、ちゃんとある。

心して取り組むがよい。わしらは、邪魔も助けもしない。宿題がちゃんと始まる段取りだけしてやるぞ。3人で宿題をクリアするのじゃ」


「でも、あたしが思うに、今回の宿題は、あまりにうまく行く可能性が低すぎるわ。そうね、かわいそうだから、少しだけおまけしてあげるわ」


と言って、調和の神は、3人の頭の少し上をポンポンポンと叩く。


3人は、身体がじんわりと汗ばむのを感じたようだ。


それをみた創造の神は、つぶやく。


「まぁ、それくらいはいいじゃろう。これくらいは小さな事じゃな」


「そうよそうよ。あまりに難しすぎると、見ていて面白くないわ」


「そうかもしれんな。そうじゃ、これじゃ、いいものがあるぞ」


「私には、ガラクタにしか見えないけど?」


「この大きな鏡で3人の様子を観察できるぞ。宿題の行方をこれで見ながら楽しむことにしよう」


「あら、いいわね。これは便利。もともとは、なんのために作ったのかしら?」


「ふぉっふぉっふぉっ」


「まぁ、本当に3人が映ったわ。こんなに難しい宿題をクリアできたら大したものね」


創造の神と調和の神は、200インチくらいの巨大なTVモニターのような不思議な大きな鏡に3人の姿を映し出し、雲の上の仕事場から鑑賞することにする。


創造の神は、3人を大きな箱の方に移動させていく。


モニターのような鏡を見ながら、いつものように調和の神が創造の神に、宿題の予想を聞く。

せっかくだからカケゴトをして、伸るか反るかを楽しもうと言うのだ。


調和の神は、もうニヤニヤしている。


「ねぇ、創造の神。

今回は、宿題がうまくいく方と失敗する方、どっちにかけるの?

あたしは、失敗する方かなー」


「こんな訳の分からない隕石もあるし、わしらでさえどうなるか分からないのに、またカケゴトじゃて?お主も好きよのぅ。しかし、すぐに結果も分からんし、ドキドキしてしまうわい」


「だから、カケゴトするんじゃない!人類のように、結果を見守る間、ドキドキしっぱなしなんて、最高だわ」


「たしかに、わしらのカケゴトは、一瞬で未来を予見できるから、いつもあっという間に終わってしまうからな」


「そうよ!で、のるか、反るかどっちにかけるの?」


「そりゃ、うまくいく方に決まっておる!」


創造の神は、当然のように答える。


「本当にいいの?あたしがカケゴトに勝ったら、全宇宙を無より前の状態に戻すわよ」


創造の神は、ニシシと笑って答える。


「わしが連勝しとるから、この宇宙は存在しておるのじゃ。わしが勝ったら、あと300億年、宇宙の寿命を伸ばしてくれるかな?」


「300億年!まぁ、大きくでたわね。

でもたしかに、今回の宿題はあまりに難しすぎるわ。

たくさんの奇跡を起こす必要があるものね。

わかったわ。

あたしとあなたの約束は絶対よ。これで決まりね」


「そうと決まれば、3人には、サッサとコントン島に行ってもらおう。

ちょうど風向きもいいようじゃ。

あとは、わしらにも分からない。

あの隕石が作り出す、この不思議な状況が、何につながっているかじゃな。

それもまた、もう楽しむしかあるまい!」


「それにしても、隕石もそうだし、あの黒い立方体◾️も不気味だわ。

ただふわふわ浮きながら、様子を見ているみたい」


「本当に奇妙じゃな。

でも、わしらのカケゴトを邪魔するつもりはないようじゃ。何者かわからんが、どうじゃ、お主も一緒に3人を観察しようではないか?」


創造の神が黒い立方体◾️に話しかけると、ふわふわと近づいてきた。


「なにこれ、なにこれ!近づいてきたわ。

分からないことが多すぎるわね。

でも、そうね。あたしたちにも分からない状況なんて、生まれて初めてだわ。

あたしは、ドッキドキで、とっッても楽しみよ!」 


創造の神が3人を向かわせたおもちゃ箱は、3階建てのビルくらいの大きさだった。


創造の神は、おもちゃ箱の上ブタを開けると、3人を浮かせてポンポンポンと、投げ入れる。


すぐに、3人とも雲の上から、コントン島をめがけて落下した。


「ぎぁーーーー!!」

「きゃーーーー!!」


創造の神と調和の神はそれをみて、お腹抱えてゲラッゲラッと笑いころげる。


黒い立方体◾️は、鏡の中の3人をじっと見つめているようだった。

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