第9話 弱きを助け
根が深い。こうして悪の情念が溜りに溜まる。獣人にも、人間にも。なぜ同じように交流でき、語り合える者同士が、姿形で差別され、支配し支配されるのだろう。
なぜこうも簡単に尊厳を踏みにじるのだろう、稚拙な答えだろうが、力だ。
自由は、自律は、力でもって自分で守らなければならない。
私の目的らしきものが見えた気がした。
答えは決まった。なぜイブキ組ができたのだろう、かっこいいとは、男気とはなんだろう、自律を踏みにじる強きを倒し、自律を求める弱きを助ける。
イブキ組のみんな、助けておくれ、そして私にそれを見せておくれ。
翌日、フォルミの村に転移し、アヤノにこの話をした。
『姉さん、みなまで語らず、全てはこのアヤノにお任せください。姉さんに一つだけお願いしたいのは、明日、私を一度タマちゃんの村に連れて行ってくださることだけです』
その翌日、たんまりいろんな機器をボックスに詰め込んだジンローを引っ張ってきたアヤノを連れて村に転移した。ジンローはすぐさま村の獣人たちが器用な手先と感覚に秀でているのを見抜き、一緒に転移ゲートを組み上げ始めた。
アヤノは村に一番近い安定ダンジョンを一人で急襲し、ルシタニア冒険者ギルドの施設を制圧した。
アヤノは村の半分を率い、ダンジョンでのレベリングを開始した。採れた魔石は全て転移ゲートのエネルギー源とした。
転移ゲートが繋がると、アヤノ組の皆、フォルミの皆が行き来を始め、ダンジョン制圧の報を受けたルシタニア国側からの攻撃に対する防衛と、村人のダンジョンでの更なるレベリングを行った。
ジンローは魔動兵器の原理や機構、生産をここの村人にも指導した。
村の防衛線は強化され、更に隣の村を開放、合流していった。
半年後、破竹の勢いで力を取り戻した獣人族の村の皆はカンナミ国の半分を制圧した。そして、正式にアルベス・ルーベル国とカンナミ国は同盟を結んだ。
◇◇◇
昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんとおばあさんは幸せに暮らしていましたが、ある時、村の護り石を求め、村の外の人間が現れました。
人間たちは洞窟の化け物を退治し、村を守っていましたが、洞窟から出る村の護り石を渡そうとしませんでした。
しまいには村の若い娘を毎年生贄として捧げるように言いました。それに逆らった村人たちは何人も魔法で殺されました。
おじいさんもおばあさんも村の人たちも、泣く泣く村の子供たちが生贄として連れていかれるのを、指を咥えてみているだけでした。
おじいさんとおばあさんには、それはそれは可愛い娘と息子がいましたが、とうとう人間たちに連れていかれました。
そんなある日、たまたま旅の途中に立ち寄ったお侍さんがその話を聞いて言いました。
“おじいさん、おばあさん、悲しまないでください。
私にお任せください。
おじいさんとおばあさんに二つのお願いがあります。
おばあさんが握ったオムスビを三つ私にください。
もう一つは、
私が娘さんと息子さんを連れて帰ってきたら、
私がどんな姿であっても、
この村に迎え入れて欲しいのです”
おじいさんとおばあさんは、三つのオムスビを作り、玄関に置きました。しばらくすると、オムスビとお侍さんはいなくなっていました。
しばらくしたある日、おじいさんとおばあさんを呼ぶ娘と息子の声がしました。
おじいさんとおばあさんが慌てて外に出てみると、そこには娘と息子がいました。
おいおい泣きながら抱き合った後、よく見ると、そこにはオニがいました。
二本の角を生やした女のオニでした。かつて村を支配し、六神様に討伐されたはずのオニでした。
おじいさんとおばあさんは鍬でオニを退治しようとしましたが、
旅のお侍さんとの約束を想い出しました。
“どんな姿であっても村に迎え入れる”
このオニが娘と息子を助けてくれた、姿はオニでも、このオニこそ、六神様の再来であると、おじいさんとおばあさんはわかりました。
その後、村はオニを受け入れ、一緒に平和にくらしましたとさ
おしまい、おしまい、
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