第8話 昔むかし・・・


タマちゃんたち家族が出てきた。


『お世話になったあなた様を置いて、とんだ失礼を致しました。タマとクリの父と母でございます。どうか、汚い家ではありますが、お入りになってください。あなたは子供たちの命の恩人です』


 遠慮なく入らしてもらい、お父さんに事情を聞いた。その村の村長さんや、子供たちを奴隷として出稼ぎに出さざるえなかった村人も集まって、この国の成り立ちの話をしてくれた。


◇◇◇


 昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。


 おじいさんとおばあさんは幸せに暮らしていましたが、ある時、村の外れに大きな大きな穴が開き、そこから鬼が出てきました。


 鬼たちは、畑を荒らしたり、村の娘をさらったり、悪いことを重ねました。


村の皆は困り、お代官様に助けを求めましたが、お代官様とその家来たちは鬼を見ると、一目散に逃げて行きました。


 怒った鬼たちは、村の皆を集め、毎年若い娘を生贄に捧げること、鬼たちのことを人には言わないことを命じました。


 こうして、鬼に支配された村は、毎年、若い娘を生贄に捧げていました。


 おじいさんと、おばあさんには、それはそれは綺麗な娘がおり、とうとう今年の生贄に選ばれてしましました。その娘にはたいそう可愛がっている犬がおり、毎日、毎日、犬を抱きしめ泣いて暮らしていました。


 そんなある夜、おじいさんとおばあさんの部屋を訪ねる者がおりました。


“コンコン”

“コンコン”


『誰じゃ、こんな夜中に』


ふすま越しに、その者が語りました。


“おじいさん、おばあさん、夜中にごめんなさい。私はお嬢さんに可愛がってもらっている犬の太郎です”


“どうかふすまを開けずに聞いてください”


“あんなに私を可愛がってくれたお嬢さんが、オニ共の生贄になるなんて、これは許せません。そこで私は、仲間を募ってオニを退治したいと思います。どうかおじいさん、おばあさん、私の二つの願いを聞いていただけないでしょうか。一つは私にお嬢さんの握ったオムスビを6ついただけないでしょうか。そして玄関に置いてほしいのです。二つ目は、もしオニを退治したなら、お嬢さんを僕の妻としてください”


 最初は戸惑っていたおじいさんとおばあさんですが、太郎の言う通り、お嬢さんを起こし、オムスビを6つ作らせました。


 そして、犬の太郎が言っていたことを話しました。


 娘はたいそう喜び、オムスビを玄関に置いた後、おじいさんとおじいさんの部屋に入り、ふすま越しに太郎に語り掛けました。


『太郎、太郎なの、もしオニを退治してくれるのなら、私は喜んであなたの妻になります。しかし、太郎、命を大事にしてください。あなたまで失い、鬼の生贄になることを私は恐れています。太郎、太郎、鬼は退治できなくても、あなたが私を心配してくれたこと、愛してくれたことで私は十分です』


 お嬢さんはふすまに語りかけると、太郎の影は消えました。


 玄関を見ると、オムスビは無くなっていました。


ーーー


 太郎はオムスビを背負い、歌いながら森に向かいました。


“俺たち村のおさむらい♪ 


オニだか龍だかかかって来い♪


お嬢さんのオムスビを♪


食べれば力は百万倍♪


オニを倒して村まもる♪


そして俺達妻めとる♪



『おいおい、太郎どん、その歌なんだい?そのオムスビを食べると百万倍なのかい?その背中のオムスビは村一番の別嬪のお嬢さんのオムスビかい?』


 ウサギの甚平どんが尋ねた。


『そうだよ!お嬢さんのオムスビは百万倍だよ。俺はこのオムスビ食べて、百万倍になって、オニを倒し、お嬢さんをお嫁さんにするんだ』


『いいな、いいな、太郎どん、そのオムスビおくれでないかい。俺もあのオニどもには頭にきている、一緒に連れてっておくれ』


 同じように、犬の太郎、ウサギの甚平、と共に猫、狐、熊、狸の6匹がお嬢さんのオムスビを食べて、百万倍になりました。


 変化の術でオニに化けた狐と狸がオニたちを谷に誘い、橋を渡る逃げ足の速い猫と犬を追いかけさせ、犬猫が渡り終わった橋を力の強い熊が落とししました。


 こうしてオニたちは谷底に落ち、成敗されました。村に帰った犬たちは、村の英雄として迎えられ、村のお嬢さんたちと結婚し、村は平和になりましたとさ。


 おしまい、おしまい。


◇◇◇


 獣人となった国民たちはダンジョンのオニを退治し、ますます強くなってきたが、魔石の秘めたエネルギーを利用せず、綺麗な宝石として家や服の装飾に使っていた。


 それを知った人間が、魔石を求め巧みに擦り寄り、ダンジョンの管理を任され、その魔石と魔石を利用した魔動兵器により、一気にカンナミ国を支配した。


 そしてダンジョンによるレベリングの機会を失った獣人は、力を得る機会を失い、愛玩奴隷としてルシタニア国に植民地として支配されたそうな。


 最近ルシタニアではない国からこの村にやってきた冒険者アレンがこの話を聞き、憤り、タマとクリの救出依頼を申し出て旅だった、救出には成功したが帰りの道中で襲って来た魔物に倒されてしまった、そのルシタニアの正門でタマちゃんとクリちゃんは私と出会う。


『イブキ様、私たちはどうしょうもないのです。たまたまタマとクリはアレン様、イブキ様に助けられましたが、多くの子供はルシタニアの奴隷、生贄になっています。昔のオニが今の人間なのです。もうオニを倒し国を築いた六神様はいらっしゃらないのです』


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