第6話 さあ、再建だ!


 それから、街に戻り、何から始めなければならないか、必要な材料はなにかについて話し合った。街の再建は生き残った者達では人手が足りなかった。


 ダンジョンの魔動装置による安定化には素材の問題と、知識ある魔動技師がいない問題があった。


 また、修復したあとも、魔物を間引く冒険者が必要であった。人材、冒険者、心傷ついた街のみんな、希望、再建、志、仁義・・・・・・・・。


“ピコん 閃いた!”


 皆に断りを入れスミレの国のヤスケの元に転移した。ヤスケはまたすぐ現れた私に驚いていたが、事情を話すとわかってくれた。


『ご事情はわかりやした。姉さんの問題はあっしらの問題でございやす。しかし、姉さん、いろんなところで“スミレ吹雪”を咲かせていらっしゃる、姉さんのお背中はまだまだ遠いです。わかりやした。酸いも甘いもわきまえた、活きのいい、姉さんの名に恥じぬ20名、揃えてまいりやす』


 暫くすると、アヤノという気合の入ってそうな姉さん率いる20名が集まった。


アヤノ組をマントの中のスミレの世界に入れ、街に転移した。


 ソウジの許しを得て、組の皆を出した。街のみんなはびっくりしていたが、私の信頼する仲間としてアヤノ達を紹介し、街の再建を手伝わせてほしいと申し入れた。


 あとはソウジとアヤノで詰めるとして、街の再建はアヤノに任せ、私は魔動装置の修復班に入った。修理班に必要な動力は、こっちで倒した魔物達の魔石をあてて、必要なミスリルや金属を収集し提供した。


 けど、どうしても再稼働に必要な専門的な設計でのわからないことがあった。目的のためには手段は選ばぬ、またまた転移で、アルベル・ルーベル国の私たちのマリオネット技師、ジンの元に行き事情を話した。


 ジンは一人の魔動技師、ジンローを紹介してくれた。ジンローはダンジョン制御装置のスペシャリストで、メカオタク、研究バカであると紹介してくれた。早速ジンローを連れて戻る。


 ジンローは破壊された施設を入念に、撫ぜるように観察し、私の方を見もせず、手が付けられる部分を修復しながら、必要な資材リストを諳んじ、確保を私に命じた。イエッサー!


 7日後、街の方は再建がだいぶ進んでいた。ウォールからの清浄な水も街に流れ、街には凄い結界防御機構(ジンローが3日ダンジョンをほったらかし、私を顎で使い、私を見ず、必要な資源の確保を命じ、完成させた)もできた。


 森もアヤノ率いる討伐班がほぼ全ての魔物を討ち果たし、野生の動物が帰ってきた。ウォールの恵みが森に帰ってきた。この動物や魚や野草、それを加工調理するお店が再開し、街の皆の寝泊りの家もできた。


 街に笑顔が戻った。アヤノ組の皆は昼の休憩時間は子供たちに纏わりつかれ、夜の休憩時間にお姉さま方に纏わりつかれる。街に活気が戻った。


 2週間が過ぎ、すっかり平和だ。アヤノの討伐班がダンジョンに入り、ダンジョンの魔物の間引きと街の動力となる魔石の確保、その利用のサイクルもできている。


 ジンローはダンジョン制御に関し、街のみんなの中からメカ好きを選び、仕組みを教え、制御を任した。ジンローは、今度は街の周囲の魔動砲、魔動戦闘車輛と魔動飛行型戦闘機を作り始めた。


 熱く設計図に見入るジンローは、こっちも見ず必要な工具や制御回路に関するジンへの手紙を私に持たせ、届けることを命じた。イエッサー!


 運びこんだ多くの魔動機の部品やなんやらをほれぼれ眺め、頬をよせ、こっちも見ずに各部品の必要な模造部品の生産を私に命じた。イエッサー!


 魔動砲ができた。魔動砲はなぜかダンジョンとは反対側、ルシタニア国に繋がる街道側に重点装備された。アヤノは街の冒険者学校を再開させ、子供たちに文字や歴史と戦闘方法、魔法を教えた。アヤノは特に“男気”を男女問わず吹き込んでいる。


『姉さん、あっしも女ですが、“男気”とはカッコいいの概念です、性別なんか関係ございやせん。人であることも関係ございやせん。私も森で、子を守る狼が敵うわけもない手前に牙を向けてくるのを何度もみました。“男気“でございます』


『失礼ですが、前に姉さんが連れてきたキラキラ防具の奴らは、あの狼とも比較にならないゲスで、男でも、人ですらありやせんでした。ヤスケ兄貴が鍛えに鍛えておりやすので、今頃は少なくとも人にはなっているとは思いますが』


 真っすぐ私を見て言った。カッコいい、惚れてしまいそうだ。


「ご苦労!」


 1か月が過ぎた。私はアヤノ組とジンローを集めた。


「街の再建が軌道に乗った!私からの依頼をお前たちは見事に達成した。これからのことは自分で決めろ、私に何か頼みたいことがあるものはなんでも言ってくれ!」


 そう言った。街の人たちがざわざわした。


 “帰るの?”


 “いや”、“行かないで!”


 村のみんなは、固唾をのんでアヤノ組を見守っていた。

アヤノが素敵な良く通る声で言った。


『姉さん。兄貴が前に言ってました。姉さんはそのスミレ吹雪を世のため人のために使っておられる、言うだけではない、やっておられる。今回よくわかりやした』


『男を磨くのは手段で、その磨いた男を世のため、人のために尽くす、これが姉さんの背中だと。組の皆の考えは事前に聞きました。皆残る、それがあっしらの答えです』


 街の皆から歓声が上がった。抱き着いている人もいた。素敵な光景だ。


 ジンローがぼそぼそ私にだけ聞こえる声で言った。


『イブキ、僕も残るよ。お前に意識の一部をつないだからな。こっちで必要なものがあったら連絡するのですぐ調達するように』 イエッサー。


 私も残って欲しいと懇願されたが、この街はアヤノ組とジンローに任せ、放浪に戻った。


 そこから半年、カッコよく去ったはずの放浪中の私は、たびたびジンローのパシリ指令を受け取り、えっちらほっちら機器を運んだ。


 そのかいあって、このフォルミの街とスミレの国、アルベス・ルーベル国の転移ゲートを創りやがった。大した奴だ。


 それからもうパシリ指令はない。フォルミは水の景観が綺麗な上位水魔法が取得できるダンジョン、第五階の魔物からの上質なミスリル、そして街は美味しい水とその水で育まれた美味しい食材があることから、アルベス・ルーベル国側から多数のAステージ冒険者が移住し、街は栄えた。


 冒険者ギルドも学校もアルベス国との交流が始まっている。そして、街やダンジョンにスミレの花が咲き誇るようになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る