第4話 一人じゃ何もできない
森の中をまたまたずんずん進む。戻ってる?気にしない、なぜなら放浪だから!ああ、けど人恋しい。まともな人に会いたい。
けど、ヤスケ、いいねえ。兄さんみたいに目に覚悟が宿ってた。ああいう男に会いたいな。スミレの国は大丈夫だ。白狐ちゃん、そう思うよね。ああ、スミレの大地に帰りたい。兄さん、姉さん、カグラに会いたい・・・・。
いやいやダメだ。転移はご法度、みんな何処にいるか知らんし。この放浪の旅で男前になったわたしで帰るんだ。転移はやむえない場合しか、使っちゃいけない。
私の探知に魔力が噴出している穴が引っかかる。魔力の噴出量からしてAステージのダンジョンなんで安定化しているはずなんだけど、地上に魔物が溢れているってことは放棄されてんのかな。
よし、そこに行こう!
取り合えず、見つけた魔物は狩っていきながら、ダンジョンに向かう。見えてきた。ダンジョンの周りには人工的な施設がある。ダンジョンを囲い、転移ゲート、魔動機器施設、冒険者用と思われる宿泊休憩施設が見える。設備は一式整っている。
なぜ魔物が溢れている?もう少し近づこう。お!人の気配、冒険者施設の中だ。とりあえず、周りの魔物を狩ろう。ダンジョンの中心に飛び、火弾と砂塵で周囲の魔物を狩っていく。
ついでに、ダンジョンに入り、第一階層の魔物を狩りつくす。しばらくは大丈夫だろう。外に出て施設の周りの残っていた魔物を一匹ずつ討伐していく。もう大丈夫だ。
施設の扉をけ破り、中にいた魔物を握り潰す、殴り潰す、蹴りつぶす。よし、終了。奥にいっぱいそこら辺のモノを積み上げたバリケードが見えた。ここだ。
「誰かいますかー!」
「冒険者のイブキといいまーす!」
「開けていただけますかー!」
よし仁義は尽くした。積み上げたものを外し、扉までの道を作る。
“コンコン”
「冒険者のイブキといいまーす!入っていいですか」
扉が勢いよく開かれた。
中から若い女性が現れた。私を見るなり、涙をボロボロ流し、抱き着いて来た。
『お願いします。助けてください。中で仲間が死にかけているんです。魔物が来ます。早く入ってください』
お姉さんに手を引かれ部屋に入る。
『みんな!救援よ、救援の冒険者が来てくれたよ!』
そこには幾人かの人がいたが、生きているのは横たわっている5人の男女冒険者達?だけだった。皆傷が腐敗し、死臭が漂う者もいた。
『お一人なんですか?私はA級冒険者のロメオと言います。もし回復薬お持ちなら分けていただけないでしょうか、どうかお願いします、なんでもしますので、どうかお願いします』
回復魔法を6人同時にかけていく。ついでに、私の砂塵“水兄さん”で周囲と冒険者達の腐敗や汚物を丁寧に洗う。武具も衣類も体も一緒に洗う。お姉さんも一緒に洗う。
『え!』
お姉さんは一瞬身構えたが、やっていることを理解したのか、警戒をとき、身を任せてくれた。
「ロメオさん安心してください。この施設内には魔物はいません。施設の外も今はいません。お仲間の回復も順調に進んでいます」
『良かった・・・・』
お姉さんは意識を失った。
砂塵で周りの散らかったものを片付け、綺麗にし、土魔法で6人分のベットを作る。着ているものを全部脱がす。弐号機のマントの一部をボックスから出し糸に分解し、糸先で皆の酷い傷を更に修復しながら、もう一方で糸を布状に編み込み6人を包み簡易ベットに横たえた。
意識を6分割し一人一人に集中する。切断部分や、損失で回復魔法では修復できなかった細かい部分は、弐号機の糸を細かく編み込み繋げ保護した。もう体は大丈夫だ。
けど、みんな熱がある。意識は戻ってない。常に水を循環させ空間を綺麗にし見守る。脱がせた服や防具や武器もよく洗って乾かし、ベッドの横に畳んだ。
だんだんみんなの顔が苦悩から開放され安堵の顔になっていく。よかった。もう大丈夫だろう。部屋の外に出て、施設の中を確認していく。
壮絶な戦いがあったのだろう、あちらこちらに人の残骸が残っていた。けど肉は喰われ、装備は奪われていた。確かにそぐわない装備のオーガやゴブリンがいたな。骨とかできるだけ集め外に纏める。
魔動装置は破壊されているな。通路なんかの動線を片付ける。念のため、この施設を中心に広範囲探知で、魔物を見つけ次第狩っていく。
ダンジョンに入り、第二階層も殺戮しつくし、外に出た。
おー、もう朝か。施設の部屋に戻る。
昨日話したロメオさんが起きていた。昨日よりは元気そうだ。他のみんなも順調に回復している。
「おはようございます。大丈夫ですか」
『ありがとうございます。この御恩は忘れません。どうお返しすればいいか』
「改めまして、私は冒険者のイブキといいます。そんな風に思っていただく必要はありません。同じ冒険者同志、助け合うのが基本です。けどなにがどうなっているんでしょうか。私は他国からここに来たばかりで、何も理解していないのです」
私はボックスからBステージでしこたまため込んだ食事と飲み物だし、勧めながら話を聞く。
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