第3話 人に会えたと思ったら・・・


 おーとーこだったーら、一つに賭ける♪。



 高い、高い山を越え、麓まで降りてきた。


 だんだん荒野から草原に変わった。山を越えてAステージ領域になったようだ。なったけど、Aステージの魔物がいる。


 ここは地上のはずなんだけど、ダンジョン安定化できていないのだろうか。周囲に水を漂わす私の砂塵“水兄さん”で多数の魔物を探知していた。


 こっちに向かう魔物だけ倒していく。深い森だ。森の奥をずんずん倒し、ずんずん進んでいく。5日目、やっと空間探知で彼方先に人の気配を捉えた。


 やったー!やっと人に会える。


 やや!


 何か戦闘しているのではないか、急がなくては。


 そこには高級魔動車1台を戦闘用の魔動車2台、魔動車VS魔物達という構図であった。後方の魔動車が既にオーガにより潰されている。


『一号戦車で前方突破、零号はそれにはぴったり付け、二号戦車魔法員はゼロ号機の屋根、近接員はしんがり!』


 既に包囲されているが前方一点突破作戦を遂行していた。


 よし係わろう。トロールのブレスを“水兄さん”で落とし、オーガ、スケルトン達に氷の矢を飛ばす。


 更に蛇ちゃん喰ってから常時魔剣状態のマイ薙刀“ユキ様”で薙ぐ。大体潰せた。残った魔物は火弾で処理する。よし討伐。


 きらきら光る立派な防具と武器を持つ人たちが呆然とこっちを見てる。騎士団?リーダーらしきおじさんに話しかける。


「す、すみません。街に行きたいのですが、どちらに進めばよろしいでしょうか」


『女か!』


 失礼なやっちゃなー。見てわかるやろがい!


 見て・・・・・、よく自分をみると前後黒マントで背に大薙刀、まあ、わからんか、しゃーない、しゃーない。


「はい。女でございます」


『お前がやったのか!』


 見てたんちゃうんかい!魔法バンバン、薙刀ふりふり、倒してたやんけ!速すぎた?


「は、はい、魔物が、魔物に襲われていたようにみえたので・・・・、余計なことでしたでしょうか」


『お前は冒険者か!』


「は、はい」


 こっちの問い1に対しあっちの質問3、私は全部お返事している。私の問いにおっさんは答えない。ギブあんどテイクは何処行った。


「あ、あの、街は・・」


『よし、お前を護衛として雇ってやる。光栄に思え!我々はルシタニア王国の近衛騎士団、あそこにおわすのはルシタニア王国、第二王子様でおわす。いつまでマントを被っておる、顔を上げい!』


 マントのフードをとると、最初は私にビビって真っ青だった奴らどもが、隊列を乱し好奇の目でニヤニヤさせながら見る。


 “べっぴんじゃねーか”

 “まだ生娘じゃねーのか”

 “俺がかわいがってやる”

 “おい順番だからな”

 “角があるぜ、奇人だ”

 “下人か、何しても問題ないな” ・・・・・


「あの、街は・・・」


『ふん、奇人の下人ごときが。我々にひと時でも連なれることを光栄に思え!お前は昼は小間使い、夜は長旅に疲れる我らの夜伽を命ずる!しかと勤めよ!』


 キラキラした騎士団?の装備に似合わぬ汚ねえ言葉を聞いた。リーダーもいい年したおっさんなのになんで? 


“俺が先だ”、“いや俺だ” ・・・・・声が上がっている。


『まてい、マハト』


 なんか豪華な魔動車から金髪、小太り、ブルーアイの変なのが出てきた。


『は!若様』


 全ての野郎が慌てて整列し跪く。


『そ奴はワシの夜伽が先じゃ、国についたらワシの奴隷に加えてやろう。奇人にたっぷりこの道中で勤めとは何か教えてあげよう』


「あの、街はどちらですか」


『はは、若様、奇人ごときにお情けをおかけされるご人情、感服つかまつりましてございます』


『うむ、ただそ奴も奇人とはいえ冒険者、冒険者には決闘というルールがあると聞く。勝ったものが望みを聞く、下賤のものと話すときはな、そやつらの目線に降りることが大事じゃ。よし、決闘じゃ、決闘、もしそちが勝てばなんでも望みを叶えよう、負ければワシのペットじゃ、レオ、レオ!』


 騎士団が隊形を作り私を取り囲む中、筋肉隆々のマッチョが高級魔動車から出てきた。


 若様の前に跪く。


『これレオ、わしの大事なワシのペットを傷つけるでないぞ!そちも無駄な抵抗やめて直ぐに“参った“と言うんだぞ』


 これはこれは、あんたらが襲われていた魔物を倒しての私だったこと忘れてんのかな。ったく、欲は人を狂わす。 


 あっ!あれか、こいつら深淵に取り込まれたんだな。


 そういうことか。ゲスイ世界で生きれば、いつの間にかゲスくなるのか、ゲスイ世界の常識が自分の常識と思ってしまうのか。


 深淵。おー怖いわ。気を付けよう。兄さんありがとう。広い世界を見る意味あったわ。こんなのにはなりたくない。


『これ、決闘を受けると、はよ言え』


「受けます」


『ひよー!人数きいてないもんね。まあレオが倒すか』


 全員が私を囲む。私はユキ姉さんとカグラから習った契約紋を空中に描く、さっきの言葉を手繰り寄せ、契約紋に刻む。


 そして、いくつもいくつも飛ばす。“何でもゆうこと聞く”と“ペット”っと。


 若様含め、今いる奴の股に、あらやだ!、股間に? あそこに?キンキンに? 飛ばす。みるみる野郎共の股間?股?に吸収されていく。


「オッケー、あたしが負ければペット、あたしが勝てばあたしのなんでも言うこと聞く、契約紋はしっかり発動したよ、かかってきな」


 左手一本出す。レオちゃんが殴りかかる。私は一歩も動かず奴の拳に左拳を合わせる。ベコッ、ゴキッ!私の拳がレオちゃんの右拳を潰した。


『ギャー!!』


 レオちゃん痛かった?よしよし、参ったって言いな。おー!蹴りが来た。いいね!気合入っとる。その蹴りも左拳を合わせる。“ベコッ”


『ぎゃー』


 足が折れた、いや潰れた。気を失ったみたいだ。


『な、なにをやっておる!全員でかかれ!』


『偉大なる聖なる火の神、ここに奴の肉を捧げ仕る、焼き尽くせ、フレイムカッター!』


『・・・・・アイスブレード!』


『・・・・・・ウインドパンチ!』


『ひっ、魔法が!魔法が発動しない!』


 何も起こらない。そりゃそうだ。私の間合いの中で、この程度の者が空間魔力支配で勝てる訳ないのにな。


『何をやっておる、かかれ!かかれ!』


『うわー!!』


 向ってくる奴の剣、槍を持っている腕を、拳を全て左拳で潰していく。一歩も動いていない。後ろのほうの奴が逃げようとしたので砂塵で砂嵐を作り囲む。


「私はここだよ。かかってきな」


 血の海の中から、じろりとぽっちゃり金髪を睨む。


『ひっ!』


 まだ立っているやつら、一人ずつ胸倉つかみ頭突きで気絶させていく。


『子豚ちゃん、どうした、かかってきな』


『お、お前は、僕が誰か知ってるのか、ルシタニアの第二王子だぞ! 僕に手を出したらルシタニア国がだまってないぞ! お前はおしまいだ!』


 右膝を潰す。


『ひー-!』


 左膝を潰す。


『ぎゃー!参った、参った、何でもゆうこと聞く、金か、金はあの車に、』


 右肘を潰す。


『いー!』


 気絶してしまった。総勢20名ってとこか。


 ったく。回復魔法を発動させ、全員を元に戻す。気が付いた奴が逃げようとしたが、ひっ捕まえ張り手をかましていく。


「お前ら!それでも騎士か、騎士たるもの、国を護る!より良き未来を創る民を護る、王や貴族はそれを身を挺して実現する、歴代でそれをやってきたからから信頼でき尊いんじゃ!お前らは今、何を護っている、よく見ろ、一般人、いや、魔物を浄化しより良き世界を創る冒険者を侮り、女であれば鼻をフンガ、フンガ開き、ましてや角が見えれば奇人など!』


『変化は実力以上の魔物を倒した勲章じゃ!そんなんも知らんのか!お前らは民に範を示す、民を護る騎士ではない!、お前らが魔物じゃ!、悪の情念の具現じゃ!てめえらは王族でも!騎士でもねえ!あたいが討伐すべき魔物じゃ!そっ首叩き落してくれるわ‼」


 弐号機小型フルアーマーを装備し、魔剣の大薙刀 “雪様” を大上段に構えた。


『ヒー!』


 皆上と下で泣きながら、腰を抜かし私から離れようとしている。


「てめえらに機会をやる。兄さんも失敗は成功のもとって言ってた。人は失敗し成長すると言っていた。今回はてえらが、王子、騎士としてのあるまじき行為を行った、人じゃなく、魔物に落ちた。お前達は失敗した。もう一度、今を反省し、目的を見つめ直し、更生する覚悟があるのであれば、その機会を与えてやる』


『てめえら覚えているか、決闘の条件を、てめえらの金玉に契約紋が、イブキ様の名がしっかり付いてんだよ。“なんでも言うことを聞く” そうだったな!人として、男として、このイブキ様の認めるカッコいい男になれ!これが“なんでも聞く”の“なんでも“だ」


「ついてくる奴は前に自分で出ろ、ついてこない奴は玉金を今から吹っ飛ばす!」


 全員泣きながら前に出た。王子も出た。


 スミレの亜空間に全員放り入れ、弥助のもとに転移した。

ああ、スミレの世界、癒されるー!


 そこでの国造りの一環として冒険者ギルドを任されたヤスケが大声で野郎共を丁度鍛えていた。スミレの野原を若手冒険者かな?、団体で走っていた。


「ヤスケ!」


 私の声で、ヤスケが止まる。私を見、びっくりし、ヤスケは顔をぐちゃぐちゃにした笑顔で私を見、駈け寄って来る。


『姉さん!お久しゅうございます!てめえら、このお方が何を隠そう、我らがアマテラスオオノカミ、イブキ姉さんだ、お前らを見に天から舞い降りてこられた、頭が高い!ひれ伏せ!』


『へへい!』


 亜空間から王子と騎士達をだす。辺りをキョロキョロしながらびびっていた。


「ヤスケ!この者どもは口に出せない不埒な悪に染まった魔物だ、人から魔物に落ちたやつばらだ!しかし、まだ人に治る可能性がある、そうあたいが信じ、更生の機会をやることにした。既にこいつらの金玉にあたいの名を刻んだ。意味わかるな!もしここに帰ってきて、あたいの名を穢す輩のままだったら、ヤスケ、てめえ共々、そっ首叩き落す!ヤスケ!導け!」


『へ、へい‼』


「ヤスケ!」


『へい!』


「お前たちの、このスミレの大地にふさわしい男気、噂は聞いている。ありがとよ。励め!」


『へい!』


 私は元の位置に転移した。そこには破壊された魔動車や機材が残っていた。手も付けず進む。あ!けど、どっちに進めばいいか聞かなかったな。よし、落ちてる枝をくるくる回し放り上げる。枝の指した方に進もうって、また森の中指してんじゃん。放浪再開だ!

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