蓋を開けたら化粧品が全部死んでた
【あらすじ】
無理が祟ってかかりつけ医にうつ病の診断書を書かれてしまった紫陽は、一ヶ月の休職を言い渡される。マジ?アタシうつ病なん?なら流行のアレで何年も帰ってない実家に帰るが吉!よっしゃ里帰りすんぞ!と考えた紫陽は、とりあえず旅の支度を始めたのだが……あれま。
いや、化粧品は死なない。本当は死なないはずだ。死ぬ前に使い切るか捨てるかするのが普通だからだ。しかし紫陽は普通でない。
一万年ぶりに化粧ポーチ開けたら全部粉になっていた。マジでびっくりした。これを「死」と言わず何という。
「職場ではマスクつけっぱなしだし、人と接することほとんどないし、アイメイクだけでいいか!」と思っていた頃があった。かつてはそうであった。しかしそれすら面倒くさくなり、アイメイクすらやめた。……アイメイクをやめて二千年は経ったらしい。文明は滅び亡骸だけが残った。きらきらした粉をそこらじゅうにぶちまかして途方に暮れる。
「女としてこれはやべえな」と。
私はポーチの中のゴミを全て処分するところから始めた。全部ゴミ箱に入れた。さよなら、二十代の私よ。
流石にすっぴんノーメイクで実家までの旅を敢行する勇気はない。職場と家の往復ならすっぴん全開でも何も構わないのだが、流石に仙台をもさもさ喪女メイク(すっぴん)で歩く胆力はない。無理。
というわけでまず私は化粧品を買いに走った。化粧品は高い。本じゃないから高く感じる。
私もいい歳である。子供がいてもおかしくないくらいの歳である。だからこうしたことは、しっかりやっておかないと既婚者でも喪女メイクになってしまう。
そして、紫陽は飽きやすく面倒くさがりでもある。慎重に、かつ継続性を考えた品物選びをしなければならない。私はドラッグストアに足を踏み入れて喪女メイクのまま化粧品コーナーに向かった。
さて何を選ぼう。
最初に思い浮かぶのは、友人が「ものがいい」と言っていたデパコス。しかしデパコスなんて縁がないし、そもそもこの地には「デパ」がない。普通にコスパを重視。プチプラ化粧品の棚へいざ。
韓国由来のメイク品も色とりどりで攻めてるけど、普段使いできる気がしない。でも30分くらいぼうっと眺めているくらいには素敵なお品物だった。絵の具のパレットみたいだしお菓子にも見える。持ってるだけでテンション上がりそう。
でも買わなかった。三十を前にした既婚喪女メイク女にはハードルが高い。
とここで店内に「コフレドール」がないのに気づいた紫陽。うそやろ。コフレドールが私の味方だったのに……(粉にしたけど……)
そこで、ファンデーションはやめてカバー力を謳うBBクリームの上に良さげなフェイスパウダーを塗りたくることにする。このフェイスパウダーはお直しパウダーにもなりますと書いてあるのでもうこれでいいやと決めてしまう。なんか肌質か何かで化粧崩れが激しいのである。
アイメイクは昔からKATEと相場が決まっているがこれは世代だろうか。ギラギラした目元を嫌う夫は私が化粧をすると「隈取り」という。喪女メイクのがいいと申すかお主。
眉毛は整えるだけでよかばい。もうええわ。喪女メイク卒業できればええわ。
そんな感じでカゴの中のものをレジにお出しして、計算すること数秒。3点でだいたい4000円なり。
よし、上等。ええやん。思ったより安いな。
エッセイのタイトルに「そんなもの」と書いてるけどこれは「そんなもの」ではない、これは使う。使うでしょ。使うよね……?
しかし一万年と二千年くらい放置したアイシャドウが粉になった前科が付いているので、これもいつか「そんなもの」になっちゃうのかもしれない。
紫陽思うんですよ、既婚の女性ってどうやってお化粧してるのかなぁって。する必要が感じられないからやらなくなってしまったけど、普通にアレですよね。「マナー」とやらなんですよね本当は。
皆さんのお化粧事情を聞きたいな。
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