ブラジャーとマフラーとサコッシュ、300円の反抗

 タイトルの通りである。どういう取り合わせだ。

 順を追って説明しよう。


 前の記事の通り、紫陽は只今ぜっさん帰省中である。宮城県民なのでまあ、ちょっと買い物に行こうかなと思ったら、電車に乗ってSendaiに向かうのが習性。

 今日はついでにお昼もSendaiで済ませよかな〜なんて軽い気分で電車に乗ったが運の尽き。


 くっそ混んどる。


Q:なんでや。

A:年末のSendaiだからみんな考えることは同じなんやで。


 あー。当然のことながら、Sendaiは非常に人で混みあっている。昼時を過ぎた1時、まずご飯を済ませようと馴染みの店舗に出向くも、人、人、ひと。HITO。human。

 嫁ぎ先Akitaに慣らされた紫陽はホームタウンSendaiに驚愕せざるを得なかった。こんなん密や。密密の密で三密や。ここでどうやって生きていたのか思い出せない。何せコロナの時代をAkitaで過ごした身。ナチュラルソーシャルディスタンスに守護られてきた私は、あまりの人間の多さに震え上がった。こわい。たすけて。お腹減った。


 片っ端から記憶にある飲食店を当たるもどこにも座れず、仕方ないので先に用を済ましてしまおうと思う。ぐうぐうなるお腹を抱えて向かった先は我らのユニクロ。今日の目的はこれ。ブラジャー。

「ブラジャーが一つ足りなかった」のだ。

 帰省先に持っていく洋服類について、紫陽はこんな算段を立てていた。“洗濯は毎日するとして、3日分あればおそらく回せるはず”だ。

 なのできっちり3日分の服を用意したつもりだった。つもりだったのだけど……抜けていたのだ。ブラジャーが。2つしか、なかったのだ!(迫真)

 ブラジャーが湿っぽいのは嫌だ。そして同じブラジャーをもう1日着るのも嫌だ。というわけで三つ目のブラジャーを買いに来た。

 ついでにマフラーも買う。Sendaiは山間部を除いてほとんど雪の降らない天国のような(※1)ところだが、ビル風隙間風がかなり冷たい。都会には都会の寒さがあるんだろう。首周りに吹き抜ける風の冷たさと言ったらない。冷風対策をしてなかった。

 なのでユニクロでマフラーとブラジャーを買った。

 紙袋の中にマフラーとブラジャーが一つずつ入っているという、なんとも滑稽な状況の中、私はやはりお腹を空かせてウロウロし、無印良品にたどり着く。


 お察しの通り流行やオシャレに無縁で、世間様の流行への関心をママのお腹の中に落としてきてしまった紫陽は、今日も中途半端に大きめのバッグを背負ってうろちょろしていたわけだが、Sendaiをうろついていればいやでも「小さいバッグが流行する土壌ができている」ことに気づくわけだ。遅いわ。

 キャッシュレス決済が流行り始めたから、スマホだけでも事足りるんだなぁ。へぇー。あのバッグちっさ。何入れてんの?それで足りるの?

 そんな感想があったものだから、ちょっとしたお出かけのためのバッグがあってもイイなぁと思ったのだ。もちろん文庫本は入ります。確かめました。

 というわけで無印良品で推し色(モカブラウン)サコッシュを購入。

 袋要りますか?と聞かれて「いらないです!」と元気に答えた。ユニクロの袋にインする。これでブラジャーとマフラーとサコッシュというタイトルにようやく辿り着いた。

 全部で6000円くらいかなぁ。


 ところで。

 Sendai……仙台に来て、もうちょっと懐かしめるかなと思ったのにそうでもなかったことがちょっとショックである。

 知ってる街並みは消えてるし、知らないテナント入ってて、その前がなんだったのかを思い出せなかったり、テナント募集のまっしろなビルが駅前にできてるのも驚いた。

 若者の街だ。仙台。

 ずっとここにいたのならきっと私もっと気持ち的にも若かっただろうな、あれだけ好きだった“ヴィレッジヴァンガード”のラインナップがもはや「わたし」を見てないことにも「あーねw」と笑えたのかもしれないし。

 マルゼンの本棚の配置変更にこんなに心揺さぶられることもなかったろうし。そんで、フォロワー・フォロイーの書籍がそこに並んでるのを見て、ため息ついて、勉強頑張んなきゃって思う。

 なんだか何においても取り残されてる感がすごかった。トンネルは抜けてないけど仙台は知らない街であった。


 真っ白い靴下とローファーで駆け回った駅前はもうどこにもなくて、10年老いてどうしようもなくなった私だけがいた。ははー。どうしようもないな。

 結果、ブラジャーとマフラーとサコッシュを買った。


 はなまるうどんでうどん食べて、クレープ屋でうどんより高いクレープ食べて、年齢というか老いというか疲れに対する反抗心で回したAdoちゃんのガチャで「夜のピエロ」の缶バッジを手に入れた。サコッシュにつけたろ。


 もう若くないけど、これくらいイイでしょ。




 

(※1)毎朝雪を寄せなければならないという苦行がないだけ天国と呼べるであろう。

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